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乳がんアラ還  夫よ そうじゃない

初回ドセタキセル投与から12日。投与2日目からの3日間の筋肉痛に始まり、便秘、次は下痢。1週間で味覚障害が出て、ご飯が湿ったダンボールかと思ったほどだった。それも2日で回復。倦怠感はこのころが最強。今度は、口唇が荒れて腫れてしまい、魅力的なアンジェリーナジョリー状態。ワセリンチューブが離せない。やっと腫れも引き、食べられると思ったら、今度は腹部膨満感が増強し、今日なんて朝から納豆1パック、昼は茶碗蒸ししか食べていないのに、以降腹部膨満感があって何も入らず。何も食べなければ膨満感も軽減し、今じゃ、元気そのもの。納豆と茶碗蒸し・・・。私、低燃費やわ。

夫は、色々と頓珍漢ではあるが、基本、優しい人で、言えば、動いてくれる。言えば。そんな夫が、声をかけてくれるようになったのは、夫の職場の女子事務員さんのお陰だと思っている。
その事務員、ヤマダさんは、乳がんの手術後の抗がん剤の治療中で、突然嫁が乳がんになりましたとパニックになっている夫のよき相談相手だったようだ。そのヤマダさんにご指導いただいたのか、
『何か僕にできることはない?』『そんなこと気にしなくていいよ』 
『病院に付き添おうか』と、夫が思っていても、言わなかったのだろう、今までにない優しい言葉が出てくるようになった。

治療が始まって、そんな言葉も日々の家事に埋もれてしまった。できることは昼間に私が休み休みするし、夫が仕事から帰ってきたときには、一通りの家事は終わらすことが出来ていた。でも、風呂にも入らず、パジャマを着替える気力が無い日があり、明日の食事の下準備を頼もうか、いや、今まで言わなかったけど、夫は料理好きだけど、自分が好きなものしか作らないもんなぁ。仕事から帰ってきてすぐに何か作れは辛いよな・・・と、帰宅した夫をソファでぼうっと眺めていた。
嫁が着替えもせず、ぐったり寝ているんだけど。気が付いてないよな。
何も食べてないんだけど。食べたいけれど、作る気力が無いんだよ。
放っておいてもなんでも自分でする嫁だもんな。夫に頼るってこと、車のタイヤ交換くらいだもんな。

どうしたものかと うとうとしていたら、台所で夫が何やら、調理を始めた。何々。ヤマダさんに何かご指導いただいたのか?
いい匂いがしてきた。いや、違う。いい匂いなんだけど、違う。甘い匂い。

夫よ、そうじゃない。

初めてにしては上手

『作ってみたかったんだ』と得意げにいう。
うん。美味しそうだね。でもなぜ、今。
私は血となり肉となる何かが食べたいよぉ。
よし、何か欲しい時はファミマのお惣菜に頼ろう。スーパーマツモトで、帰りに何か買ってきてって頼ろう。察してちゃんはやめないと。

12日目。パラパラと気力のない毛が洗面台に落ち始めた。
忙しいなぁ。もう。

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