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乳がんアラ還の妄想

初回ドセタキセル投与から10日を過ぎ、週末には骨髄抑制具合を評価するため採血がある、という日の夕方に、前歯裏の歯茎が腫れているのに気づいた。20年前に、先天性嚢胞と言われ治療した門歯周辺。

ちょっと待て。このタイミングで。
ただでさえ、骨髄抑制状況で、易感染状態 敗血症・・・。その次は、ショック状態ではないか。自分が?救急カートもってこい状態になるのか?
一気に不安が押し寄せる。

そういえば、喉の痛みも時々あるし、咳も出るようになった。家族は、感染源を持ち込まないようにと気を遣ってくれているというのに。そんなに私の白血球はばててるのか?残りの白血球、頑張ってくれよ!

翌朝、一番でかかりつけの病院に相談の電話連絡をしたら、時間が早すぎたのか、主治医は出勤しておらず、外来の看護師さんが返事をくれた。近くの歯科に診てもらうようにとのこと。
採血を待たずに、治療していいの?大丈夫ほんま?ええの?

看護師さんのAIのような返しに、いや、でも、と食い気味に尋ねると、『熱も血も、出てないでしょう?』と言われて、はいと答える。
でも、数日前から、鼻血も出てるよ。血小板下がっているんでない?
赤いシリーズの百恵ちゃんも、出血傾向にあったよ。

もう気持ちは敗血症を発症しており、ぐったりしながらとりあえず、近所の歯科に行く。つらつらと、抗がん剤治療中であることを問診票に書くが、先生はさほど気にしていない様子。
私の脳裏には、治療した歯茎からの出血が止まらず、歯科の上等リクライニングチェアに座って、ライトに照らされならが白目をむいている自分と、治療によって創部の感染が広がり、敗血症で入院してる自分の姿も見えてくる。

結局、治療した嚢胞部分はさほどダメージはなく、数回の洗浄で問題ないし、抗生物質も要らないでしょうと言われて、その時初めて、ディスポの患者用エプロンがリサとカスパールの柄と気づく。丁寧に説明してくれる歯科の先生もちょっと渋くてかっこいい。治療による出血もなし。

ぐるぐると悪い事ばかり、考えて2日後、骨髄抑制の評価をする採血日。脱毛が始まったばかりで、毛がハラハラと落ちるので、毛予防に頭を帽子で頭を包んで病院へ行く。
歯科の方は何とか、危険が回避されたけれど、これ以上、易感染状態の私の不注意で何かがあってはならないと心して挑んだが、結果、白血球も低下なし。血小板なんて、まったくもって下限をかすりもしないくらい、正常値だった。ただの鼻血。

『これなら来週の治療はできそうですよ。』と先生がニコニコしているので、『副作用の筋肉痛が辛かったから、次はちょっと薬を薄~くしてもらえませんか』とジタバタしてみる。
『薄くぅぅぅ~!?』と大笑いしている。先生が笑うと私もうれしい。
新たな副作用も出るかもしれないけど、『では来週よろしくお願いします』と診察室を後にする。

病院に行く人混みで何か感染症をもらっては治療が遅れると、行きはタクシーに乗ったけれど、帰りは満員のバスに乗る。

病は気から。ほんま。







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