映画を観るアセクシャルの20代

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最近の記事

SO(重要な他者)としての友人関係

 significant other(シグニフィカント・アザー)とは、広く「大切な人」を意味する英語だ。ややかしこまった表現なので、これを省略して、インターネットなどではSOと表記することもある。特別ひねった省略の仕方ではなくて、辞典にも載っているし、Wikipediaの記事にも書かれている。  この省略形を代名詞的に熱心に使って広めていきたいというよりは、SO と友人という親密な他者の捉え方が自分にとっては楽なんだね、と言う気づきについて、名前や表現に焦点を当てながら書いて

    • 新社会人のためのウォッチリスト

       熱意を抱いて社会に出たわけじゃない。学校の卒業に向けて、やりたい仕事が見つかる前に就職先が決まった。目標は仕事一筋の人間にならないこと。  数年前、私はそういう新社会人だった。  週に5日、1日に8時間は拘束される生活は最初が1番きつい。この時期を乗り切るために忘れてはいけないことは、努力や根気よりも理由だ。働く理由は御守りになる。  このウォッチリストは有り体に言って働きたくない新社会人に向いていると思う。決してがんばれとは言わないから、自分の生活と人生を過ごすことを諦

      • 黒いランドセルと“僕”のこと

         黒いランドセルで小学校に通った。入学前に買ってもらった新品だった。青みのある色合いも、艶消しの質感も、他のランドセルとは一味違っていて大人びた雰囲気があった。自分のランドセルが大好きだった。 1. 僕のランドセルです  6年生に進級した初日。クラスメイトがみんな席に着いたあと、教壇に立った先生が教室の後方にあるロッカーを見て言った。 「間違えて女子のロッカーにランドセルを仕舞った男子は誰ですか?」  皮肉めいた言い回しが好きな先生だった。このとき、私はたぶん先生と同

        • 新作映画しか観る余裕がなかった

           やたらめったら映画を見ていた時期を振り返ると、新作映画しか観なくなった今がさみしい。  当時はお金がなくて時間だけは有り余っていたからレンタルビデオ屋で借りる旧作映画ばかり観ていた。映画館に足を運ぶのは月に1度の楽しみで、その時にかかっている作品の中から1本を選別するのが贅沢な悩みだった。  それが、働き始めた今はお金は稼いでいるもののとにかく時間がない。映画館に行く予定を立てなければ映画を観ることもない。しかも刺激に対する耐性がなくなってきているのか、家で以前に観たことの

        SO(重要な他者)としての友人関係

          クワロマンティックという感覚

           ダイヤモンド社の『13歳から知っておきたいLGBT+』では「クワセクシュアルまたはクワロマンティック」がこう説明されている。  これはどうやら私のことを指しているな、と腑に落ちたのが数年前。それから自分の持つ基本的(だと思っている)な価値観や経験がこのセクシュアリティとつながっていると気づいたことも多い。私の個人的な体験の一部を例として挙げる。 1. 好みのタイプは自分自身  外見の好みの話をすると、ストレートヘアのショートカットに惹かれる。フラットな体格の人に憧れて

          クワロマンティックという感覚

          冬を乗り越えるためのウォッチリスト

           毎月のノルマを決めて年間250本。継続して5年間。むさぼるように映画を消費していたことがある。あれから3年経って、今は好きな映画しか観なくていい。  人々の共通感覚かどうかわからないが、年末年始は映画を観るのに最適な期間だと思う。曜日感覚が麻痺してなんだか時間がゆっくり過ぎていくような気がする。日付が変わる瞬間の何秒間かに時計を大義そうに見つめる人がたくさん発生することは、時間が間延びしているあきらかな証拠に違いない。  ともかく、この時期になると「今度の年末年始にはなん

          冬を乗り越えるためのウォッチリスト