スーパースター不在のフットサル界に告ぐ。
起業家、投資家として有名なピーター・ティールは、著書『ZERO to ONE』の中で、読者に向けてこんな質問を投げかけている。
「賛成する人のほとんどいない、大切な真実とは?」
正直に言えば、この答えは簡単に出るものではない。
賛成する人がいないということは、多くの人にとって直感に反する考え方であるからだ。
しかし、ティールの真意を違う角度から考えてみれば、こう捉えることもできるのではないだろうか。
「世界を変えるためには、“反感”を生み出すことが必要だ。」と。
前回のnoteにも書いたが、革命を起こすには、常識に抗う「?」(=疑問)を大事にし、どれだけ周囲から反対されても貫き通していく気概が欠かせない。
誰もが正しいと思う意見、考えは、共感を集めこそすれ、革命を起こすことは不可能なのである。
そんな前提を踏まえた上で、今回は『フットサル界には圧倒的にカネを稼ぐ「スーパースター」が必要だ』という論を進めていきたい。
【「フットサル選手は儲からないプロ」問題】
先日、上記のようなツイートをしたところ、様々な競技関係者を含む、のべ100人程の方にフォローして頂けた。
「儲からないプロ」問題はフットサルに限らず、規模の小さな競技であれば、どこも抱えている悩みなのだろう。
では、なぜフットサル選手の一般的なイメージは、「儲からないプロ」に固定されてしまっているのだろうか。
結論から言えば、ぼくは「カネ」の話をできる選手(=「スーパースター」)が1人もいないからだと考えている。
【「カネ」の話は汚いか?】
ふと立ち止まって考えた時、今までのフットサル界には、不思議なほどに「カネ」の話をできる人間が存在しなかった。
なぜかと言えば、誰一人として稼いでいなかったからだ。
フットサル界には、プロとして契約している選手がほとんどいない。
日本代表クラスの選手ですらアマチュアであることも、決して珍しくはない。
言ってしまえば、多くの選手は「副業」(複業)としてフットサルを続けているのだ。
もちろん、この生き方を否定するつもりは一切ない。
平日は会社員として仕事をこなし、仕事終わりや週末に選手としてトレーニングに励む。試合に臨む。
昨今取り上げられる「働き方改革」をリードしていると言っても過言ではない。
しかし、この「平日会社員」の姿を見た時、果たして子どもたちはフットサル界に「本当の夢」を見られるだろうか。
「未来のスーパースター」を目指したいと思えるだろうか。
残念ながら、答えはNOである。
子ども、若者は、良くも悪くも“純粋な生き物”だ。
彼らの憧れは、いつも決まって「スーパースター」に集まる。
常にファンを魅了し、スポットライトを全身に浴び、圧倒的にカネを稼ぎ出す「スーパースター」だ。
想像してほしい。
本田圭佑が、皿洗いのバイトをしている姿を。
想像してほしい。
イチローが、コンビニのレジに立っている姿を。
そこに「スーパースター」の影を見ることはできないだろう。
「スーパースター」とは、常にかっこよくなければいけない。
憧れの存在でいなければならない。
間違っても、「お金に困ったスーパースター」など、存在してはいけないのだ。
【「スーパースター」不在のフットサル界】
「フットサルでもこれだけ稼げる!」
「カネを理由に夢を諦めなくていい!」
と、自信を持って言える「スーパースター」が、今のフットサル界には存在しない。
これは、全フットサル関係者が真っ先に考えるべき問題である。
なぜなら、フットサル以外のスポーツにおいては、その競技とイコールで結びつくほど圧倒的な知名度とカネを持つ「スーパースター」が、必ず1人はいるからだ。
サッカーなら、本田圭佑。
テニスなら、錦織圭。
野球なら、大谷翔平。
彼らはその「ブランド力」を駆使し、己の競技だけに留まらない「アイコン」としての一面も見せてくれる。
もちろん、「スーパースター」である以上、他の選手よりも段違いに稼いでいる選手ばかりだ。
そんな「スーパースター」が、フットサル界には存在しない。
一度もフットサルを観たり、やったりしたことのない方々にまで、その名前が浸透している選手が、存在しない。
前述した通り、純粋な生き物である子ども、若者は、分かりやすい「スーパースター」に憧れる。
「なんだか分からないけど、とにかくカッコいい!」
「たくさんゴールを決めて、たくさんインタビューを受けるような選手に、ぼくもなりたい!」
こういった、ある種ミーハーな気持ちから、そのスポーツにのめり込む子どもたちは、決して珍しくない。
しかし、今のフットサル界は、そのミーハー心をくすぐることができていないのだ。
誰もが、“本業”で稼がなければ選手を続けていけない状況では、子どもたちを惹きつけることなど不可能なのである。
ただ正直、今までフットサル界に「スーパースター」が生まれなかったのはなぜか?という問いに、一言で答えるのは難しい。
サッカー協会のリソース不足?
メディアへの露出不足?
「やるスポーツ」からの脱却が出来ていない?
選手が発信する文化が出来ていない?
ファンとのリレーション構築が未熟?
など、いくつもの要因が複雑に絡み合っているからだ。
また、「俺がスーパースターになる!」と名乗りを上げる選手がいなかったことも不思議である。
フットサル界は狭い村だから、周りの目を意識して、誰も口に出せなかったのだろうか。
だとすれば、そんな残念なことはない。
もしそうだとするならば、今からでも自分が名乗りを上げていきたい。
誰もならないなら、ぼくがスーパースターになろう。
今、本気でそう心に決めている。
【夢は、口に出すと強い。】
大の大人が「スーパースターになる!」だなんて叫んでいたら、変な奴だと思われるだろうか。
恥ずかしい奴だ、と笑われるだろうか。
そうだとしても、ぼくはスーパースターになると決めた。
たとえ笑われようとも、後ろ指をさされようとも。
なぜなら、ぼくにはどうしても助けなければいけない人が「2人」いるからだ。
1人は、今まさに「カネ」を理由に夢を諦めようとしている選手たち。
「フットサル界で生きていきたい!」と思っていたのに、社会の現実や周りの声に押しつぶされそうになっている選手は、毎年たくさんいる。
これはもちろん、フットサル界だけに限った話ではない。
ただ、ぼくがスーパースターになれば、そんな彼らの可能性を消さずに済むことができるのだ。
そしてもう1人、絶対に助けたい人がいる。
それは、彼らと同じく「カネ」を理由にフットサル選手としての道を諦めた、5年前の自分だ。
今から5年前。
当時、大学4年生だったぼくは、フットサル選手として生きていくか、普通の会社員として生きていくかの二択に迫られていた。
部内の同期たちが続々と就職活動を終え、最後の大学生活を満喫している中、ぼくはただ一人、人生の選択に迷っていた。
というのもぼくは、就職活動をする傍らトライアウトに参加し、イタリアのプロクラブで挑戦する権利を得ていたからだ。
大学時代、最も力を入れて取り組んだことはなにかと聞かれれば、迷わず「フットサルだ」と答えられる。
うだるほど暑い夏の日も、凍えるほど寒い冬の日も、天井も壁も無い屋外のコートで練習を重ねた。
授業の合間には、主将の仕事として試合をイチから見直し、選手一人一人に改善点、意識すべきポイントなどをまとめたメールを送っていた。
とにかく勝ちたくて、上手くなりたくて、出来ることは全てやってやろうと思っていた。
チームは東京都大学選手権で2連覇。
個人としても、大学選抜に名を連ねることができた。
そんなぼくにとってイタリアへの挑戦は、どんな企業に入社するよりも、心躍る未来だったのだ。
しかし、結果的に言えば、当時のぼくはまだ弱かった。
迷いに迷った挙句、イタリアへの挑戦を諦め、普通の会社員として生きていく道を選んだ。
周囲の大人に相談すれば、
「そんな不安定な未来はやめておけ」
「引退したらどうするつもりだ」
「まずは普通の会社でスキルを身に着けろ」
という言葉ばかりで、一人も後押しをしてくれる人がいなかったことも大きい。
たしかに、当時の(今でも)フットサル界で「カネ」を稼げる可能性は、限りなく低かったから、今なら大人たちが心配していた気持ちも理解できる。
そうして、明るかったはずの「未来」は暗くなり、いつの間にか煙のように消えて無くなってしまったのである。
そんな当時の自分を、助けてあげたい。
「カネ」を理由に夢を諦めた、あの時の自分に向かって「夢を諦めるな!」と、自信を持って言ってあげたい。
だから、自分が「スーパースター」になる。
たとえ”賛成する人がほとんどいない”としても、ぼくが圧倒的にカネを稼ぐ選手になる。
そう、心に決めたのだ。
ぼくは今現在、どこかプロチームに所属しているわけではない。
世間一般的に見れば、単なるアマチュア選手のひとりだ。
そんな人間が「スーパースターになる!」なんて言っていたら、より滑稽さが増すだろう。
しかし、「世の中を変えるのはいつも、若者、バカ者、よそ者」という言葉がある通り、プロでもない、バカな自分だからこそできることが必ずあるはずだ。
その第1弾として、まずは個人スポンサーを本格的に募っていきたい。
チームからの収入を期待できない以上、自らが動き、「カネ」を稼いでいく必要があるからだ。
決して前例が無いわけではないが、まだまだ一般的ではない個人スポンサーという形で「カネ」を稼ぐことができれば、フットサル界に一つの希望を生み出せるだろう。
これが正解かどうかは分からない。
もしかしたら、とんでもない失敗を犯すかもしれない。
けれども、その姿を見た他の選手たちが別の方法を見つけ、「カネ」を語れる人間になったのなら、大いに本望である。
バカな大人が、バカなりに考えて出した決断の顛末を、皆さんが最後まで見届けてくれることを、心から願っている。
終
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小島悠仁 (Twitter:@kjm_you)
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