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いち無性愛者、アセクシャルの感覚について書いてみます

私は無性愛者、アセクシャルです。
性別問わず、他者を「性的に好きになる」という感覚が理解できません。
異性愛同性愛といった、「性愛」の感覚がわかりません。

⚠️以下、ストレートに性経験や性愛について書きますので、苦手な方はご注意ください。

私は機能不全家庭育ちのアダルトチルドレンです。現在は原家族とは絶縁しておりますが、家庭環境がアセクシャルの原因だと長らく思っていました。特に父親との折り合いが悪かったからです。
「異性(男性)を性的に好きになれない」とカウンセリングに相談したこともあるのですが、やはり「機能不全家庭環境育ちの女性」相手には、「ゆっくり無理せず、男性に素直に甘える練習をしてみましょうね」と諭すように言われ続けるだけでした。思い出すだけでも不愉快です。私の切実な悩み、「性愛の感覚が分からないから、世界にずっと違和感と疎外感があって、それがとてもつらい」という訴えは完全に無視されました。

この感覚はアダルトチルドレンゆえなんだと思っていましたが、何年経っても変化はなく、また過去を振り返っても思いあたるふしばかりでした。そして、生まれつき自分は性愛の感覚が無いんじゃないか?という悩みになりました。

●「友達から恋人」を目指してみた学生時代

学生時代から恋愛に対する関心の過剰な欠落は自覚しておりました。そこで、仲の良かった男友達に自分から言い出してお付き合いをしてみたことがあります。友達から恋人に、というのは散々漫画やドラマで見ていましたし、その友達とは仲良しだったので、恋愛も延長でできるだろうと思ったのです。しかし、実際そのような関係になってみると恋人らしきことを無理矢理する違和感が凄まじく、また友達からうっすら出る性欲もとても無理で、これは違う!と即座に悟りました。早々に謝罪し、解散しました。
それ以降、異性の友達からそれらしき雰囲気を感じると距離を取るようにしました。そうすると勿論、こちらを「性愛候補」としていた異性の友人はいい気持ちはせず、「仲良くしてたのになんなんだ?お高く止まってんのか?」的なマイナス感情を持たれることになりました。女友達からも「●●くん可哀想じゃない?あなたの態度は好きなんだとしか思えなかったよ」と謎に叱られたり、当時は本当に全てが訳分からなくて、傷ついてしんどかったです。今はあれが大多数の男女の性愛の感覚であり、自分の振る舞いが考え足らずであったと理解できますが。
性愛のゴタゴタの蚊帳の外にいられるフラットな存在を目指し、集団の中では「社交的で変わった奴」という位置付けになるようにしていました。
幼少期は人見知りで内気だったのですが、性愛トークや恋愛政治に巻き込まれるのがあまりにも嫌だったので、誰にでも臆せず話しかける、はっきりした態度を取る、といったはきはきした人間の演技を続けるうち、社交スキルを獲得できたので、それは結果オーライだったと思っています。(今でも本質はド内向人間です)

●強迫的に異性と恋愛ロールプレイ

しかし世界は容赦なく恋愛ジャスティスを押し付けてきます。一歩外に出れば、少しネットを見れば恋愛最高!恋愛正義!と強迫される感じで、自分の宇宙人感覚は増すばかりでした。
いつか男性とどうにか恋愛関係を構築しないとと、マッチングアプリもやってみました。何度か会えたのですが、毎度気まずい感じになりました。相手から連絡を絶たれることが多かったです。男女の性愛カードを出し合うのが前提のバトルゲームで、こっちはゲームに必要なカードを一枚も持って来てない迷惑プレイヤーですから、当たり前です。
性的ムード作りをしない(できない)ため相手をイラつかせたり不安にさせ、「もしかして全然楽しくない?」とか「もしかしてやりたいだけ?」的なことを言われました。向こうもなんだこの迷惑プレイヤー?!と混乱したんだと思います。申し訳ない。
ただ、「ふたりでいる時間を少しでも良いものにしようと、双方協力する状況」は、良いものだと感じました。ここに性愛がくっつくと、恋愛なんだろうなと思います。
しかし何をどうしても、「この人男性として好き!」という感情は湧きませんでした。相手が悪いわけではないです。
セックスもしてみました。「セックスっていい!!」という肉体の覚醒(よくフィクションで見るやつ)などは皆無でした。現実…。
セックスはコミュニケーションの一種であること(協力し合うポーズをいかに見せ合うかで盛り上がりが全く違うんだと思いました)、男女の性欲はメカニズムが全く違うということ(これは本当に興味深いです)、そして自分にはやはり異性に対する性的欲求が「無い」ということがよく分かりました。(全部理屈で解釈してる時点でお察し)

●女性同士なら…と考える

女性のパートナーならば性愛ロマンススイッチが入るかもしれないと考えました。過去に一度だけ女性に対して、この人と一緒に暮らせたら幸せかも、と感じたことがあったからです。そしてその人はレズビアンだったので、私も彼女と同じなのかも、と思ったのです。
ビアン界隈で同じように恋愛関係を目指そうとオフ会に参加したりバーに通ったりしてみるものの、私はやはり女性相手でもセックスしたい!と思えませんでした。私の場合は、相手の人間性を知り、好きになればなるほど、相手への性的な印象が消えていくようです。相手が「男性である・女性である」というのはその人の単なる属性のひとつになって、「●●さんという人間」の中に落とし込まれていく、という感じです。

疲れ果てて心が折れ、もう私は他人と性愛関係を持つという機能がはじめからインストールされていない人間なんだと諦めました。しかし、諦めたことで恋愛強迫が和らぎ、多少楽になりました。これは良かったです。

●性に対する感覚

アセクシャルでも、性に対する感覚は様々だと思いますが、私の場合は特に不快感や嫌悪感はありません。むしろ観念としての性愛ならば異性愛、同性愛問わずとても関心を持っています。当事者として没入できませんが、性愛メインの創作物も楽しめます。
性愛と戦争が人類世界の歴史探求の二本柱だと思っていますので、あらゆる目線であれこれ想像を巡らせて考えるのは私にとっては面白いことです。

●アセクシャルでよかったこと

アセクシャル、無性愛者のおかげでよかったこともあります。性に関する社会的通念やこだわりがほぼ無いがために、いろんな人とそれなりにオープンにコミュニケーションが取れます。アセクシャルの人は、大多数とはベクトルの違うコミュニケーション能力、人間観察能力があると思います。
それから、少しでも性愛の感覚を解ろうと思って、小説・映画・漫画などの創作物をがむしゃらに摂取したので、想像力が鍛えられたことです。人間ドラマは感情のすれ違いこそが醍醐味だと思いますが、やはり性愛関係は盛大にすれ違うので面白いです。

●世間とのズレに苦しんだとき

冒頭に書いたように、私は血縁上は身寄りのない人間です。世界は基本的に不条理と不平等がベースのえげつない場所だと思っています。でも私は世界を憎悪すまい、なんとか肯定しよう、と思っています。私に寄り添い、私のために泣いてくれる優しい友達がいたからです。そんな友達が存在している世界は極悪ではない、と言えるからです。私は彼らに心の底から感謝しています。彼らがいなければどこかで負けていたと思います。家族だと言ってくれた友達のことが、心の底から大好きです。私には大切な友愛と家族愛があります。

しかし、性愛が分からないのだと正直に言ったとき、本当の愛を知らなくて可哀想と言われたことがあります。この言葉には心底傷つきました。
そう思う人と私との断絶が、想像しているより深いものだと思い知らされました。私の大切な人たちへの愛情は、その人にとっては「偽物」なんだ。性愛じゃないから。そしてそう思う人の方が圧倒的に多いんだ。
ショックでその日は泣き過ぎて目が爆発して開かなくなったので、翌日の仕事は休みました。笑 このことがそれなりにトラウマになっており、自身のセクシャルについて正直に言うのが怖いと思っておりました。
やっぱりマイノリティはそれだけで悲しくて寂しいものです。そこは虚勢で嘘をつかなくてもいい。でももう、閉じこもる姿勢は変えねばと思います。
自分はどういう幸福を目指そうか、どのように人の役に立とうか、とこれからは自分が生きるために考えていきたいです。

私のありとあらゆる悩みの根底はセクシュアルに結び付きます。
不安定な際にじんわり湧いてくる不安や恐怖の根っこは、アセクシャルであるがための世界への疎外感、自己否定、孤独に対するものであることが多いです。
マイノリティを含むジェンダー論も、すべて性愛の存在をベースにしていろいろ議論されているので、読んでも腑に落ちないことが多いです。でも、性愛に対する理解の助けになります。
私を最も励まし、楽にしてくれるのは、アセクシャル当事者の方達の、一人一人違う個人的な体験談や、感性の言語化です。それがどんなに断片的なものでも、当事者の方の言葉には元気付けられ、ありがたいです。いろいろ読むうち、私も書こうと思いました。

●アセクシャルのひとへ…

ド異端のアセクシャルは、基本的に結構疲れていると思います。自己否定も他者否定もしないように考え、ひたすら一人で内省し、自分には理解不能な価値観に満ちた世界をなんとか読み解こうという努力を延々続けているわけですから。お疲れ様です🤝

過去の私のように、疎外感へのこわさから、自分でない人間を演じざるを得なくて、辛い人もいるかと思います。環境によっては恋愛最高!恋愛正義!の強迫で頭がおかしくなりそうになると思いますが、無性愛・アセクシャルというセクシャルが確固として存在するのです。あなたは、我々は、宇宙人ではありません、自己否定しなくても大丈夫…!🤝✨

●最後に

無性愛の人間は存在するというのは都市伝説にならないで欲しいと思います。本当にいます!笑 多分全員自分なりの処世術や観点を身につけて忍者のようにしていて、簡単には目に見えないとは思いますけど…笑🥷🥷

個人的なものでしたが、誰かの役に立てたら嬉しいです。
長文を読んでくださり、ありがとうございました。

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