見出し画像

アレルギー反応を科学する

注釈


アレルギー反応を科学する


アレルギーは、体内に物質が入った時、身体が、その物質を異物と見做して、異物を攻撃するために起こります。

体内に侵入してきてアレルギー反応を起こすようになる異物を「抗原」と呼びます。

即時型アレルギーにおいて、

抗原が入ってくると、主にマスト細胞(肥満細胞)に、IgE抗体が結合します。身体がアレルギー源として抗原を認識したことになります。

抗原の侵人によって活性化したT細胞(Th2)はインターロイキン(IL)-4などを放出し、それによって刺激されたB細胞がIgE抗体を産生、放出する。IgE抗体は血液を介して体内で、細胞表面にIgE受容体を持つ細胞、特に肥満細胞に結合する。 

化学伝達物質の働きと臨床症状の出現(病態生理)



このIgE抗体の結合したマスト細胞に抗原が結合すると、IgE抗体が刺激され、その刺激をマスト細胞に伝えます。これによってマスト細胞に貯蔵されているヒスタミンなど(メディエータ)が放出されて、これが体内にてさまざま作用することで、体内で炎症などが生じて、アレルギー反応が起こります。

刺激を受けて活性化したマスト細胞内では、さまざまな物質が作られます。マスト細胞が刺激されて放出される物質には、即時から、数十分かかって放出される物質、またサイトカインなど時間単位で放出される物質などがあることが判っています。

このような物質には、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、TNFα やインターロイキン-4(IL-4)などがあり、化学伝達物質(メディエータ)と呼ばれています。

また、IgEを介するアレルギーのマウスの研究において、IgEからの自発的なシグナル伝達が、IgE型B細胞による免疫記憶の形成を抑止していること、そのシグナル伝達が破綻するとで、アレルギーが発症することが判っています。

免疫グロブリン(Ig)

Igは、免疫グロブリン(Immunoglobulin)の略です。

免疫グロブリンは、タンパク質ですが、抗体に反応して作られると言われていて、アレルギーの検査の際にIg抗体を調べます。

免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、分子量、作用、その時間などが異なることが判っています。

IgGは、血液中に最も多く含まれている免疫グロブリンです。細菌や毒素と結合します。また、胎盤を通過できることが判っています。

IgAは、血液中では、腸管、及び、鼻汁、唾液などの分泌物で存在し、粘膜から細菌などが侵入するのを防いでいます。また、母乳中にも存在することが判っています。

IgMは、B細胞から産生され、感染の初期に働いて、細菌からの防御に関わっていることが判っています。

IgDは、B細胞の表面に分布していて、抗体の産生の誘導や、呼吸器感染に関わっていることが示唆されています。

IgEは、マスト細胞と結合することで、花粉症などのアレルギー反応に関与することが判っています。


脱顆粒現象科学する

マスト細胞は、細胞内で合成された物質を分泌顆粒内に貯留して、開口分泌によってその内包物質を分泌します。この開口分泌は、エキソサイトーシス(Exocytosis)と呼ばれます。

また、細胞内の分泌顆粒が細胞表面へ輸送され、エキソサイトーシス(Exocytosis)によって、顆粒の中に含まれるヒスタミンなどを放出します。これを脱顆粒反応と呼びます。細胞内Ca2’濃度([Ca2’]i)の上昇が伴うことが明らかにされています。

マスト細胞に発現しているタンパク質DOCK5が、分泌顆粒を運ぶ微小管の動きをコントロールしていることが判っています。

また、DOCK5の動きをコントロールすることによって、マスト細胞の分泌顆粒の反応が障害されて、アレルギー反応が抑制されるという研究結果が出されています。

「アレルギー反応を引き起こす化学物質が放出されるメカニズムを解明
~アレルギー疾患の治療応用へ期待~」

平成26年6月9日
九州大学
科学技術振興機構(JST)


遅延型アレルギー

遅延型アレルギーには、IgG抗体が関与していると言われ、また、T細胞が直接関与しているとも言われていますが、その検査方法など解明していません。

IgGに関しては、抗原が体内に侵入すると、その付近のリンパ節で、抗原に反応したB細胞が増殖し、プラズマ細胞に分化して、IgG抗体を産生することが判っています。また、一部は、IgG陽性のB細胞になり、長期生存プラズマ細胞に分化して、免疫記憶を形成します。


免疫記憶のメカニズム


参照

化学伝達物質の働きと臨床症状の出現(病態生理)

活動の応援として、ご寄付いただけましたら幸いです。 🍀応援ありがとうございます🤝🍀