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【MLB】2024年殿堂入り投票の展望(+模擬投票のお知らせ)

来年1月に発表されるBBWAAによる2024年殿堂入り投票について,11月21日に殿堂入り候補者が新たに発表されました!今回のnoteでは,殿堂入り投票の展望に加え,毎年恒例の「①MLB30球団ファン合同note企画担当者」及び「②読者のみなさま」による模擬投票をご案内させていただきます。

「②読者のみなさま」におかれましては,下記リンクからも投票可能となっておりますので,熟慮の上,ご回答をお待ちしております!!!

■アメリカ野球殿堂入り(Hall Of Fame)投票の概要

・ 殿堂入り選考の対象となるのは、MLBで10年以上プレーした選手のうち、引退後5年以上が経過した選手。
・ 選考対象となった選手は全米野球記者協会(BBWAA)の適性審査委員会殿堂入り候補者とするか否かが議論される。候補者として認められると、殿堂入りの可否を問う投票にかけられる。
・ BBWAAに10年以上所属している記者(約400名)に投票資格が与えられ、通常25~40人の候補者のうち最大10人までの名前を書いて投票する。
得票率75%以上の候補者が殿堂入りとなる。
・ 得票率5%以下の候補者はその回限りで候補から外される。得票率5~75%の候補者は次年度の審査・選考に持ち越されるが、10回目までに75%の得票が得られなければ11回目からは候補から外される。この候補者については一定期間を経た後、ベテランズ委員会(いわゆる時代選考)で殿堂入りが審査されることになる。

以上のスキームからも分かるように,殿堂入り(HoF)とは非常にシビアな制度設計の上で成り立っており,MLBでプレーした選手に送られる最上級の栄誉。前回投票を振り返れば,華々しいスポットライトを浴び続けた選手ではないものの堅実な守備と強打によって安定した成績を残したScott Rolenが唯一のHoF入り。前回の結果および今回から新たに投票対象となる選手を踏まえた上で,投票がどのように移り変わるのかを見立てていきます。


■有資格2年目以上の選手をおさらい

2023年以前からHoF投票の対象となっていた選手の成績詳細については下記noteにまとめてあるため,併せてご覧ください。そのため,有資格2年目以上の選手については,成績よりも昨年度の投票結果にフォーカスした展望を記します。

まず,殿堂入り最右翼であったScott Rolenが76.3%の支持を受けて資格6年目での殿堂入りを成し遂げました。これについては,2022年投票を最後にBarry Bonds,Roger Clemens,Curt Schillingといったビッグネームが10年目を迎えて失格したことで,ダブついた票がRolenらに流れてきたと推察できます。個人的には、普段メディアから”スーパースター”として扱われていなかったRolenのような選手が、こういった形で日の目を浴びることができるのがHoFの醍醐味だなとしみじみ感じました…!

2023年HoF投票結果(5.0%未満者除く)
Baseball Referenceより引用

また,サプライズであったのはTodd Heltonの得票率急騰【52.0%→72.2%】でしょう。通算打率.316&369本塁打は見事であったものの,キャリアを打者天国クアーズフィールドで過ごしたことは評価を難しいものにしていたはず。実際に僚友Larry Walker(通算打率.313&383本塁打)を以てしても殿堂入りに10年を要していたことから,私はHeltonについても前途多難な投票率を予想していました。残り2.8%という数字に鑑みれば今季HoF投票の大目玉といえるでしょう。個人的には通算rWARを見ても資格は充分に有しているかと思います。

Heltonほどではないですが,Billy Wagner,Andrew Jones,Gary Sheffieldの3名も15%程度のアップを果たした選手。Wagnerは先述のnoteにも記したとおり,歴代6番目となる422SVを挙げた実績などからディケイド有数のクローザーとしてHoF入りすべき選手かと思います。2025年に有資格10年目を迎えることから,今回で70%の大台に乗ることができるかに注目です。
Jonesは私が一番HoF入りを熱望する選手。というのも各ポジションにおいて歴代bWARが通算1位にもかかわらず,未だHoFとなっていないのはCFのJonesだけであるため。守備のスペシャリストというペルソナに加えて,通算434HR&rWAR62.7という打撃実績に鑑みても,彼が相応しくないとは口が裂けても言えません。

一方,Sheffieldの急上昇については正直想定外でありました。BondsやClemensといった禁止薬物使用疑惑のあった選手が前年の投票で失格となった上で,同じ薬物使用者がこれほど票を伸ばすというのは驚きを隠せませんでした。ただし,それを抜きにすれば歴代30傑に入る通算509HRを放った時代屈指のスラッガーであり,実績は間違いなくHoF級と言えるでしょう。今回がラストとなる10回目であり,神託はどちらに傾くのでしょうか。

そして今回の投票でも皆さんの頭を悩ませることになるのがCarlos Beltranでしょうか。通算rWAR70.1に加えて史上5人しかいない400HR&300SBの達成者であることから,本来であれば有資格1年目である前回投票にて一発合格を果たすはずでした。しかしアストロズによる2017年のサイン盗みスキャンダルが発覚し,首謀者の1人としてBeltranの名前が挙がったことで評価が急落。得票率が僅か46.5%に終わるなど,厳しい船出となりました。ただ,彼にとってキャリア最終盤のスキャンダルであったことや,アストロズ一同が社会的にも地位回復に至っている昨今の情勢を見れば,一気に75%へ到達することも有り得るかもしれませんね。個人的には,前回投票によって彼への断罪は成されたのだと思います。

Beltranを凌ぐほどのビッグネームであるAlex RodriguezとManny Ramirezは何度も当アカウントで取り上げているとおり,複数回に渡って禁止薬物使用が明るみとなった選手。共に傑出した打撃成績を残しているものの,BBWAAの記者が与えた評価は35%程度と極めて低いです。今後,60%程度まで上昇することはあっても,HoFの階段を跨ぐことは非常に厳しいかと思います。(それだけに先述のSheffieldが55%に上昇した”意義”に甚だ疑問がつきませんが…。)彼らが逆転でHoFになるとすれば,BondsやClemensといった巨頭たちがベテランズ委員会によって殿堂入りを果たした後なのかなと思います。

rWARにおいては60.0程度を記録しているものの,30%以下に終わっているAndy Pettitte,Bobby Abreu,Mark Buehrleらの動向も気になるところ。Pettitteについては禁止薬物使用が明るみになっているために別で議論が必要ですが,AbreuとBuehrleについては共に長く太いキャリアを送った名選手に他なりません。WARが全てとは決して思いませんが,彼らのようなunderrattedな選手が公正・公平に判断されるためにはWARで優劣をつけるべきだろうとも強く感じます。

また,Francisco RodríguezについてはBilly Wagnerと同程度の評価を受けると思っていたために意表を突かれました。ERA+やWHIPに大きな乖離があるとはいえ,同じ400SV達成者の2人の間に,60%近く得票差が生じるのは些か納得のいかない結果。Wagnerが殿堂入りするのであれば,なんとしてもK-RODが続いてほしいですね。

なお,前回初めて投票資格を得たにもかかわらず,得票率5.0%を下回ったことによって計12名もの選手が失格となっています。今回新たに登場するのはどのような選手なのでしょうか。

■今回の投票で初登場となる主要選手

引退後5年以上が経過し,今回の殿堂入り投票にて初めて投票対象となる選手について,全て触れたいところですが,主要な5名ほどをまとめていきます。

■用語集
rWAR(Baseball Reference算出のWin Above Replacement)
oWAR(  〃  のOffensive WAR)
dWAR(  〃  のDiffensive WAR)
AS(All-Star Gameへの選出)
GG(Gold Glove賞の受賞)
SS(Silver Slugger賞の受賞)

(1)Adrian Beltre(エイドリアン・ベルトレ)

2933試合 打率.286(11068打数 3166安打) 477本塁打 1707打点 121盗塁 848四球 出塁率.339 長打率.480 OPS.819 rWAR93.5
【受賞歴等:本塁打王×1,AS×4,GG×5,SS×4】
投票1年目(前回--.-%)

☆殿堂入りすべき理由
rWAR93.5は歴代40位の超高水準であり,rWAR80.0以上の選手が全員殿堂入りを果たしていることを考えれば議論の余地なし。(ステロイド使用疑惑選手を除く)
・2003年から計測されているDRS,2002年から計測されているUZRにおいて,どちらも通算で歴代1位を記録しているほどの名三塁手。三塁手におけるdWAR27.0もBrooks Robinsonに次ぐ歴代2位と傑出。
・加えて打撃でも歴史上33名しかいない通算3,000本安打の達成者。30代後半を迎えても決して「置物レジェンド」にはならずにOPS+100超えの打力を披露。
・通算477本塁打も歴代31位の数値であり,同水準の本塁打数でHoF入りしていないのはrWARが傑出していないCarlos Delgadoくらい。

★殿堂入りを妨げる理由
・なし。有資格1年目での殿堂入りが果たされなかったとしたら,アメリカ野球殿堂の存在意義が問われるほどの事態。
・無理やり理由を挙げるとしたら,NYY移籍後に3Bへ転向したA-RODに阻まれAS出場が僅か4度に終わった点や,低いBB%によって通算OPSがそこまで傑出しているわけではないといったくらい。別にそれを含んだ上でこれだけWARが飛び抜けていることを考えれば,全く意味のない数字。
・殿堂入りおめでとうございます。

(2)Chase Utley(チェイス・アトリー)

1937試合 打率.275(6857打数 1885安打) 259本塁打 1025打点 154盗塁 724四球 出塁率.358 長打率.465 OPS.823 rWAR64.5
【受賞歴等:AS×6,SS×4】
投票1年目(前回--.-%)

☆殿堂入りすべき理由
・rWAR64.5は二塁手として歴代15位となる数値であり,2015年にHoFとなったCraig Biggioと同水準。単年rWARにおいてリーグ上位5位に入った回数も通算5度であり,二塁手に限れば僅か7名しかいない快挙。(Utley以外は全員殿堂入り済み。)
・当時はエラーの多さから今ほど評価されていなかったものの,計測以降においてDRS+123(二塁手歴代2位),UZR+90.1(二塁手歴代1位)を記録するほどの名手。
・通算259HRは歴代226位と秀でていないものの,守備負担の多い二塁手というポジションに限れば歴代7位まで押し上がるほどの火力も持ち合わせる。特に2005-2009年においては5年連続OPS.900超えも達成。

★殿堂入りを妨げる理由
・30代前半から両膝の故障が相次いだことで稼働率や成績が下降。31歳~39歳までの9年間で907安打に終わったことで,HoFの第一関門である通算2,000本安打に到達できなかった。(先述のBiggioは3,000本安打を達成している)
・Utleyに非はないものの,Orlando HudsonやLuis Castilloといった旧来指標で勝る名手に後塵を拝し,一度もGG賞を獲得できず
・2015年のプレーオフにおけるRubén Tejadaへの危険なスライドはUtleyのキャリアを悪い意味で上塗りしてしまったダーティープレーになっており,記者の心証もファクターになってくるか。
・今回被投票となっている選手に絞っても,Utleyより安打数,本塁打数,OPS+などで上回る選手が少なくとも10名以上いる点も押さえたいポイント。

(3)Joe Mauer(ジョー・マウアー)

1858試合 打率.306(6930打数 2123安打) 143本塁打 923打点 52盗塁 939四球 出塁率.388 長打率.439 OPS.827 rWAR55.2
【受賞歴等:MVP×1,首位打者×3,AS×6,GG×3,SS×5】
投票1年目(前回--.-%)

☆殿堂入りすべき理由
・捕手として史上初となる3度の首位打者に輝いたピュアヒッターであり,捕手歴代9位となる安打数はGary CarterやJohnny Benchらを上回る。
・rWAR55.2についても捕手歴代9位に位置しており,同順位において1位から12位までで殿堂入りしていないのはMauerのみ。
・捕手守備もフロックではなく,通算のDRSやFRMにおいてもプラスを計測。2007年には盗塁阻止率.533を記録するなど,ゴールドグラブを3度受賞。

★殿堂入りを妨げる理由
・キャリアを通じDH休養を受けつつも,怪我によって年平均30試合程度を欠場。特に脳震盪のアクシデントに見舞われた2013年以降は打撃成績も全盛期から陰りが見られたために積算系指標を伸ばせず。
・同時期より1Bコンバートも本格化したため,31歳~35歳の5年間で積み上げたrWARは10.6に終わるなど,守備負担の減少に見合った成績を残すことができなかった。

(4)Matt Holliday(マット・ホリデイ)

1903試合 打率.299(7009打数 2096安打) 316本塁打 1220打点 108盗塁 802四球 出塁率.379 長打率.510 OPS.889 rWAR44.5
【受賞歴等:首位打者×1,AS×7,SS×4】
投票1年目(前回--.-%)

☆殿堂入りすべき理由
・打撃型外野手の多い左翼手という括りにおいても歴代33位となる通算2096安打を達成しており,oWAR49.4も歴代27位の高順位。
・「全盛期をクアーズで過ごしたからだ」と思われがちですが,STL時代のOPS+(138)はCOL時代のOPS+(131)を上回るほどであり,恐らくどこでキャリアを過ごしていたとしてもスター選手となっていた存在。

★殿堂入りを阻む理由
・Hollidayと同等以上のプロファイルを持つ通算366HR 1905安打 rWAR52.0のLance Berkmanが2019HoF投票に登場し,僅か1.2%の得票で失格。当時は4名のHoFを輩出しつつも,ビッグネームが蔓延っていただけに状況は異なるものの,厳しい戦いが予想される。
・ポジション的にも求められる水準は非常にシビアであり,左翼手で殿堂入りを果たした選手の平均rWARは65.1と,Hollidayとの開きが20.0以上もある。
・仮にダメだったとしても,この夢を息子に託すことのできる。というかJacksonを育て上げただけでもHoFの価値があるのでは😎

(5)Bartolo Colon(バートロ・コロン)

565登板 247勝 188敗 防御率4.12 WHIP1.31 3461.2回 948四球 2535奪三振 rWAR46.2
【受賞歴等:サイ・ヤング賞×1,AS×4】

☆殿堂入りすべき理由
・実働21年ものキャリアによって歴代36位となる2535奪三振,歴代76位となる3461.2投球回を記録。長く細いキャリアというわけではなく,2005年にはALサイ・ヤング賞を受賞。
・通算rWAR43.5,254勝,3824.0回,ERA+105のJack Morrisが殿堂入りを果たしており,同等の成績を残したColonにも間違いなくチャンスはある。

★殿堂入りを阻む理由
・2012年にテストステロンが検出され出場停止処分を受けている。実際,サイ・ヤング賞受賞後の2006-2009年は不振などによって僅か257.0回の登板に留まっており,その後の好転と禁止物質の使用は無関係でないはず。とするならば,35歳以降に迎えたルネサンス期を純粋に彼の実力と捉えない記者も少なからずいる…?
・そもそも先発投手で殿堂入りを果たしている投手の平均rWARは73.0と高く,ColonのrWAR46.2と比べて開きが大きい。
・Colonより短期間でColon以上の成績を残したBuehrleですら昨年10.8%と大苦戦中。

■投票率の展望

昨年私の予想した展望では

Rolenは失格者の浮遊票をある程度得ることでギリギリHoFに。
HeltonはBondsらに投票していた記者からの支持が厚いため,彼らが記録していた60%前半は硬い
・Jonesは50-60%をここで記録しないと今後の殿堂入りは厳しい。
・A-ROD,Sheffield,Ramirezは今後含めて40%で頭打ち。
・Beltranは30-40%で収まるのでは。

等々の展望を描いていました。結果は半分以上当たっていました😎今年もアナライズしていきますよ!!以下駄文です。根拠はほとんどありません。感覚論です。

◎2014年-2023年の殿堂入り選手の中で,通算rWARがBeltreを上回った野手は誰一人としていません。では満票になるかと言われればこれも難しいところであり,個人的には同ポジションで活躍したChipper Jonesが記録した97.2%を標榜したいところ。結構この数字は自信がありますので誤差は±1.0%程度と予想😤
Heltonは高くても80%程度で今回無事殿堂入りを果たすかと。個人的な話になりますが,彼が正当に評価される日が来ることは本当に喜ばしいことです。アルコールとの闘いにもなんとか終止符を打って欲しいですね。
◎一方でWagnerは殿堂入りするとしても10回目なんじゃないかと漠然に思っているので,お布施込みでも今回は70.0%前半で望みを繋ぐのではないでしょうか。Jonesは願望込みで65.0%くらいに上がってくれれば…。
Sheffieldの急騰は流石に今回続くことはないと思うので,58%程度と予想。A-RODとRamirezは引き続き30%台の壁に四苦八苦しそうです。
UtleyとMauerは共に30-40%と予想。いずれにせよ,初年度での50%到達は考えにくいです。Hollidayは10%程度が現実的か。
Colonは禁止物質使用者にもかかわらず,晩年はメディア露出が多かったのがどう転ぶか。ただ実績込みで25%-35%程度と予想。ただ,ここを超えるのであれば50%くらいに跳ねていても驚かない。
◎そしてBeltranの殿堂入りは次回に持ち越しと予想。今回は票を伸ばして55-60%程度は悠に狙えるのでは。来年,メッツのスタッフとして禊ぎを完結し,クーパーズタウン行きを決めると予想。

■模擬投票のお知らせ

本日11/22(水)~11/28(火)にて,読者の皆さまも対象とした殿堂入り模擬投票を実施します!投票結果については集計後,MLB30球団ファン合同note企画公式アカウントにて発表させていただきます。主な留意事項は以下のとおり。

・お一人様につき,投票は1度限りとしてください。
・候補者の中から最大10名(10名以下であれば人数は問いません)の選手に投票可能です。
・選手成績についてはお手数ですが,原則ご自身でお調べの上,投票ください。(Baseball ReferenceのHoF専用ページでも確認も可能です)
・選考に当たってコメントがあれば別途記載してください。(選んだ理由・選ばなかった理由・自分の中の基準等)
・今回いただいた投票内容,選考理由等については後日アップする集計記事にて掲載させていただく場合があります。
・今回の企画は「殿堂入りの模擬投票」であり,「殿堂入り選手の予想」とは異なるものです。投票に正解は存在しませんので,お気軽に参加ください!

上記ご確認の上,ご参加いただける場合には下記リンクよりお進みください。沢山の方の投票をお待ちしております!!

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