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MBAのこと④(オランダサッカーから学ぶ幼少からの経験学習)

MBAに通う中で学んだことをアウトプットするコーナー。今回は経験学習について。世界でもサッカー強豪国であるオランダがユースチームである小学生に対して行っている教育から経験学習について学びます。

〇か×の教育を受けていないか?

私たちはスポーツや勉強など幼少のころから様々な教育を受けています。例えばサッカーであれば、シュートを決めたら「ナイスシュート!」と褒められる。逆に、シュートを外したら「惜しい!もう少しやったね。」とか一方的にフィードバックをコーチから貰います。学校でも点数が良ければ先生や親に褒められてうれしいですが点数が悪ければがっかり。親にも「もっと勉強しなさい」と言われて自信を無くしてしまいます。

私自身も中学・高校とテニス部に属していましたが顧問の先生に褒められたり、叱られたりしたことはありますがその要因はどうだったのかという「考えること」を与えられた機会はありませんでした。〇か×の教育が中心であり、そこに「考えること」というところが抜けてた気がします。テストでいい点を取る。いいプレイをして勝利する。でもなぜいい点を取れたのか?取れなかった場合はなぜ取れなかったのかということを自ら考え、学習する習慣作りをオランダのサッカー教育はしています。

オランダサッカー少年チームの紅白試合の出来事

紅白戦でのこと、ある少年がゴールを決めた直後、突然コーチがホイッスルを吹き、試合の再開を一旦止めて、得点した少年を呼び止めた。
〇コーチ:先ずは、ゴールおめでとう。ところでいまさっき、君はシュートをする前に、何を考えたの?
〇少年A(ゴールを決めた少年):今日こそ一点取ってやるって思いました。
〇コーチ:それだけ?
〇少年A:でも、キーパーがどんどん近づいてきていたから、もしかしたら、止められるかもしれないと思いました。
〇コーチ:その時、君は、自分でシュートを打つ以外にどんなオプションを持っていた?
〇少年A:左奥からBくんが走ってきているのがわかったので、Bくんにパスをしてもいいかなと思いました。あともう1つは、キーパーをかわしてからシュートを打つということも考えました。
〇コーチ:でも、そうはしなかった。君は、キーパーが近づいてくる前に、シュートを打った。それはなぜ?
〇少年A:Bくんにパスをしなかったのは、Bくんがさっきシュートを外していたことと、Bくんが、ゴールに対してあまり角度がないところにいたからです。
〇コーチ:なるほど。
〇少年A:キーパーをかわすのをやめたのは、僕のドリブルスピードでは、そうするよりも先にシュートを打ってしまった方が入る可能性が高いと思ったからです。
〇コーチ:あの時、君は自分が持つ3つのオプションの中で、「即座にシュート(実際に少年が選択したオプション)」が最も成功確率が高いと考えたわけだね。OKでは、試合を再開しよう。

引用:神戸大学大学院経営学研究科准教授 服部泰宏フィールドワークより

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経験を言語化させて考えさせる習慣を作る

上記のコーチと少年のやり取りを見てどう思われましたでしょうか?大人のサッカー選手に対して行うようなフィードバックですが相手は小学生です。普通の少年サッカーであればシュートを決めたら「いいシュートやったね!」で、終わりです。オランダは違います。ゴールが終わった後いったんプレイを止めて、その時の判断についてコーチがどう考えたのか?と少年に考えさせるのです。シュート以外にB君にパスを出すことやキーパーをよけてシュートするというほかの2つの選択肢があったことも少年の判断の中から言語化させて経験から「内省的な気づき」を与えています。

そして、大切なことは、コーチがほかの選択肢があったということを少年に教えている訳でないという点です。ほかの選択肢もあったということを少年に経験の中から自ら気づかせるために言語化させることでそれが内省(省察)になり、概念として身につき次の試合では3つのオプションの中から様々な打ち手が出せる(実践できる)ようになるわけです。

経験学習モデルのサイクル

この実践⇒経験⇒省察⇒概念化のプロセスを通じて自分が直面する状況に対処するための実践的な知見を見出すことを「経験学習モデル」といいます。

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オランダのサッカー界には、優れた選手は優れた知(intelligence)を持っているという考え方が、浸透しています。サッカーをいうスポーツをどれだけ深く理解し、全てのゲーム、全てのプレーについて、どれだけ頭を使ってのぞむことができるか。「なぜうまくいったのか」「なぜダメだったのか」と考えること、反省することを時間の無駄だなどと思わず、そうした一見すると手間がかかるプロセスこそが、未来への投資だと考える文化がオランダサッカーを強くしています。

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日々の教育でもできる経験学習

「経験から学ぶ」という経験学習は日々の教育でも実践できます。
そのポイントとして

①経験したことを「なぜうまくいったか」「なぜダメだったか」と言語化して内省する
②言語化・内省したこと概念化(学び)に変える
③学んだことを次は実践してみる
④実践した経験を再び言語化して内省する
⑤①~④を繰り返す

これは親と子供への教育であれば、家庭の対話の中で内省する機会を与えたり、会社内の上司であれば部下に対してもできます。自分自身の内省習慣として「日記を書いて考える」こともできますね。大切なことは振り返る時間を取ること。そこで何を学んだのかを言語化することで次に実践に移しやすくなる。このサイクルを回せば学習効果は高くなりますね。私も実践していきたいと思います。

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