見出し画像

『高慢と偏見』と『高慢と偏見とゾンビ』を観ました。

『高慢と偏見』を観ました。

エリザベス・ベネットを主人公に、娘達を資産家と結婚させたい母親のベネット夫人と、ベネット家の近所に引っ越して来た資産家ビングリーと友人のダーシー氏らを中心にした、恋愛・結婚映画。
舞台は1800年前後とされるが、ナポレオン戦争の影響などは全然見受けられない。しかし、女性が男性のために尽くさなければならない社会であるのは変わりない。
ベネット家は娘達しかいないため、婿を取らなければ遺産が全て親戚のコリンズに流れるという危機に瀕していた。遺産をコリンズに渡したくないベネット夫人は、近所に引っ越して来た資産家のビングリー氏や友人のダーシー氏らに娘の誰かを嫁がせることによって、遺産の流出防止と娘の玉の輿を狙う。

基本的にはハッピーエンドだが、身分差を越えた恋どころか、身分差ありきの恋だと思える。
きっかけはエリザベスらの母親であるベネット夫人が、娘達の玉の輿を狙って計画したものだからだ。ダーシー氏やビングリー氏が資産家であるところに目を付けたベネット夫人の作戦は、中流階級の抱える身分差のコンプレックスを感じざるを得ない。
また、ストーリー終盤にはメアリーとコリンズ氏が接近しているのを見て、ベネット夫妻は揃って気を良くしてるようにも感じた。コリンズ氏はベネット家の親戚だが身分が高く、牧師をしている。
ダーシー氏とエリザベス、ビングリー氏とジェーンの結婚は、結局相手方の資産や身分によってベネット夫人が許可するだろう。コリンズ氏はシャーロットと婚約しているが、メアリーに乗り換えても不思議ではない。コリンズ氏はベネット家の親戚であり、メアリーと結婚すればベネット家の遺産を入手する上でベネット夫人の同意も得られるなど、ウィンウィンの関係となり、有利になる。
このストーリーはエリザベスを中心としたベネット姉妹の恋愛映画としても素晴らしいが、当時の身分制社会を反映し、それを逞しく利用して生きる人々の話としても好ましいと思う。

『高慢と偏見とゾンビ』を観ました。

大まかなストーリーは『高慢と偏見』と一緒だ。エリザベス・ベネットを主人公に、娘達を資産家と結婚させたい母親のベネット夫人と、ベネット家の近所に引っ越して来た資産家ビングリーと友人のダーシー氏らを中心にした、恋愛・結婚映画である。違うのは、ダーシー氏が日本刀を操るゾンビ狩りのプロであり、エリザベス・ベネットを始めベネット姉妹はこの時代の教養であり実用的な素養として中国で少林寺拳法を習得して来た人々だと言うことだ。
と言うより、この時代の多くの人々は、100年程前に植民地から伝わったウィルスによるゾンビの襲撃から生き残るため、日本や中国で刀剣の心得や少林寺拳法、孫子を習得し、西欧においては戦略を学ぶということをして来た。女性もそれは例外ではなく、ベネット姉妹のような身分や資産を持つ者が教養として修める他、キャサリン夫人が最強のゾンビ・ハンターとして名を馳せている。
しかし、身分差による偏見や女性と男性の格差は存在している。ベネット夫人は「武術を扱える女性は結婚に不利」だとして、近所に引っ越して来たビングリー氏とエリザベスの姉であるジェインとの玉の輿結婚を画策しているし、コリンズ氏も「戦闘から離れて自分と結婚して欲しい」とエリザベスに迫っている。生き残る術であっても、戦いやそれに関連するものは男性の領分であり、料理が出来ることなどは女性の仕事だという認識があるのだ。
それに「全てのゾンビを殲滅すべきか?」という疑問もある。ウィカムの言う通り、人間は生まれて16年で兵士になれるかも知れないが、1秒でゾンビになってしまうのだ。実際、ロンドンの教会ではゾンビ達が集会を開き、ブタの脳を代用品にすることによって、人間を襲って食べる欲求を自ら抑えていた。彼らのリーダーと交渉し、和解することによって、人間が生き残り、ゾンビと共存することが出来るかも知れない。
だがダーシー氏やコリンズ氏、キャサリン夫人は断固としてゾンビとの和解に応じる態度を取らない。しかも和解の提案をして来たウィカムは、(父親がゾンビ化したという事情があったとは言え)ダーシー氏に遺産を奪われた恨みから、意識を保ちながらゾンビと化していた。しかも『高慢と偏見』のストーリー通り、ベネット姉妹のひとりであるリディアを誘拐し、ゾンビの居る教会に立て籠もってしまった。
ウィカムの手からリディアを奪還し、ロンドンでの一大決戦に勝利したダーシー氏とエリザベス、ビングリー氏とジェインは無事に帰還し、結婚式を挙げた。しかしこれでめでたしめでたしではなく、その結婚式を復活したウィカムが率いるゾンビ軍団が襲う!
けれどもこれは『高慢と偏見』を乗り越えて結婚式が行われるまでのストーリーしかない。ゾンビと戦い続けるか、和解するかは、きっと鑑賞した側に委ねられている。観た後も楽しみが広がる、素晴らしい作品だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?