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リトルマーメイドが最先端の反差別エンターテインメントで良かった

ディズニーさんこんなん出して大丈夫?売り上げも評判もフルシカトで、今の世の中にこれが必要なんじゃ〜という信念で作られたんだろうなと思わせる怪作。良作とか名作とかではなく怪作‎。

女性向け風俗の店員のアカウントですが、全然関係ない映画の感想でゴメン。この記事は100%健全です。強引にエロと結びつけるならまぁ、、、いややめときましょう。

全然人に勧められないけど見ておいた方がいい人はいっぱいいる。特にアリエルの外見について文句言ってたヤツはね、人選が良いとか悪いとかじゃなくて、義務教育として知っておいた方がいい。

たぶんそいつらはこれを観て「ほらやっぱり〜」と言うし「下手な実写化なんてするべきじゃなかった」と言う。そういう気持ち悪さがある。

しかしその気持ち悪さこそが、狙って作られた製作者の真意だったらどうだろう?わざと仕組まれたその感じに気づいた何割かの人だけが、Part of Your Worldの向こう側にたどり着けるのだ。

ワチャワチャ楽しいキラキラの海の世界、みたいな映画を想像すると死ぬぞ。それはつまり陸への憧れだけで暴走していた序盤のアリエルと同じ。かわいいげのあるおてんばとかではなくて、憧れ通り越して狂気みたいなやつ。歌い方にもその狂気が乗っかっていて、あれできるのは世界でこの人だけと言われたらもう人選には納得しかない。
歌といえば鳥と蟹のラップのやつがとてもかっこよかった、あれ歌えるようになりたい。(タイトル不詳)

序盤は人魚サイドの世界から始まって、俺たちヒューマンは気持ち悪さすら感じる妙にリアルな海の世界に放り込まれる。思ったより何倍も暗い絵面にビビるなどする。怖いし汚いし全然ディズニーキラキラムービーではない。パイレーツ・オブ・カリビアンを見た事ある人ならちょっと分かるかも。ああいう系の、磯臭さとかヌルつきすら漂ってきそうな海のおぞましさよ。

もうちょいちゃんと書くと、楽しい海の世界はちゃんとでてきます。しかしこんくらいなら許されるだろーという絶妙なラインで、暗さというかホラー/スリラーっぽい絵面がところどころに紛れてくる。
(意味がわからない人はニモの映画とかシーライダーの映像を思い出して比べてみてください。色鮮やかなサンゴや熱帯魚、ディズニー映画は100%楽しい海を作れるはずなんですよ。それが今作は本能的に人間が理解できない触手系の生き物たちがキモ鮮やかを担当し、岩場の影や暗さと共にどうぞ、みたいな感じよ。)

さすがにキレイだろーと思っていたunder the seaのアゲアゲな歌唱シーンすらなんかちょっぴりキモい。初めて見る、リアルすぎるうねうねにょろにょろ海の生き物たち。フラクタルだったり集合体恐怖み、そんな感じがずーっと続く。

そして中盤、人間の世界に出てくるともう一段階キツい。人魚視点で描かれる人間の世界は奇妙なことだらけで、これまたしんどい。
人間のこと知らないからそうやっちゃうよねー!というコミカルかわいい描き方じゃなくて、狙いすました共感性羞恥の大盤振る舞いよ。

とにかくこんな調子で延々と、お互いにとって理解の及ばない壁の向こう側を描き続けるのでマジで観ていてキツい。

そういうのが塗りつぶされる月夜のシーンだけがとても綺麗で唯一の救い。声を出せないのに目線と態度と指遣いでとても最高なコミュニケーションをやっていて、アリエルというキャラの魅力が大爆発している。王子もかっこよかったね。
(非言語のコミュ力、これは女風業務でも見習いたい、、、あっ!やっとこのアカウントと繋がること言えたな!)

月に照らされた人間の肌の美しさ、輪郭が輝くこの感じ、テーマの類似もあってどうしてもムーンライトを思い出すよね。あれは青い月で、こっちは金色の月。
肌の色については浅い知識で語っても燃えそうなのでそんなに深く触れないけど、何の話かわからない人はムーンライト観ろ。
とっつきやすさ的に、こっちを見てからあっちを見るみたいな履修順にするといいのかもしれないね。

まぁそんなわけでタイトルに恥じない素敵名シーンも挟みつつ、大袈裟じゃなく全体の7割〜8割くらいのシーンはどことなく気持ち悪さや居心地の悪さを宿しているという感じ。

この気持ち悪さをキャスティングや映像表現の失敗、実写化自体への批判に向けるのは簡単だと思う。
これから観る人の多くはそういう風に捉えるんじゃないかな。きっとネットにはそういう意見が沢山出てきていいねを集めたりする。(もちろん「私は純粋に良いと思ったけどなー」みたいなのも出るでしょう。それはそう。感性〜。)

つまり何をやってるかというと、綺麗事としての「差別は良くない、みんなでハッピー」みたいな映画じゃないんですよ。
常識の向こう側を覗く気持ち悪さをまざまざと見せつけた上で「差別は良くない?そうだよね!じゃ、断裂を埋めるにはこれだけコストがかかります!覚悟を決めろ!」という映画なのね。
そう言われてみりゃアースラというキャラを介してまさにそんなストーリーをやっているんだけど、お話の中だけじゃなくて「そのコスト分はお前らが努力して受け止めろよ。」を映像表現として観客にも突きつけてくる。そんな感じ。

私はアナ雪2が好きなんだけど、それは氷を使えるエルサと違って、能力を持たないアナが戦うからなんですよ。その時「両親から聞かされてきた歌をうたう」という戦い方をする。歌がつまりディズニーの描く魔法なんですよ。パレードでもショーでもなんでも、ディズニーでは歌って踊れば願いが叶うじゃん。それこそが100年続く魔法の正体。

それと対比したときの今作は
「こういうのは魔法じゃどうにもならんからな、お前らがものすげー努力とコストをかけて埋めろ。」
というお説教を食らった感じ。

我々が受け持つべきコストのほんの一端として、多くの日本人が「受け入れづらい」と感じたキャスティングがあったわけですね。今の世代で無理やりにでも受け入れ体勢を築いておくことで、次の世代に良いバトンを渡せる。そんな信念を感じました。

ポリコレに配慮したキャスティングどころじゃねぇ〜、世界一語気つよなポリコレの最前衛な映画でした。
そこにディズニーでやる意義も、このタイトルでやる意義もしっかり作り込まれていて最高だった。最高だけど他人に勧めずらいこの感じよ。

気持ち悪さを乗り越えた先、最後の最後に人間と人魚が大集合するシーンが圧巻。エンタメ的にもポリコレ的にもぶわっときた。このラスト1分を美味しく味わうために丁寧な下ごしらえが続く映画。
うわー観てよかった!!!

おまけ
まじでスタッフ全員この顔して映画作ってると思う。いいツイートだ。

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