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大学教員公募について~書類作成、面接、模擬授業~

今年度も終盤です。来年度の準備に奔走する中で、ふと、昨年度(2020年度)自分が公募を勝ち抜いたときのことを書き留めようと思いつきました。なお、採用時の職位は専任講師・任期無し、年齢は20代です。書類作成・面接・模擬授業の具体的内容については有料とさせていただきました。この部分の情報の価値については様々な意見があると思います。ここでは、「まあ読んでみるか」程度の値段設定にしました。無料部分を読んで興味を持たれた方、助言等が欲しい方は是非ご覧ください。

この手の記事は意外と少なく、一年前の自分を含め逃げ場のない公募戦士達は、藁にもすがる思いで様々な情報を探索していることと思います。履歴は、「大学教員 公募」+「通知 面接 結果 書類」で埋まっていたのではないでしょうか。

私がこれまで割と見かけたのは、面接に呼ばれた回数が多い方の記事です。これら経験に裏打ちされた重厚な記事に比べ、本記事はなんとも説得力に欠ける心許ないものかもしれません。一方、本記事に強みがあるとすれば、それは公募戦士1年目、かつ20代で専任教員の座を射止めたという「勢い」です。特に、研究者の道に本格的に足を踏み入れた方、あるいはこれから大学教員を目指す修士課程・博士課程の方、書類や面接に苦労されている方々には参考になるかと思います。

前置きはここら辺にしておきまして、ここからが本題です。私が大学教員公募に挑戦したのは2020年-2021年シーズンです。博士後期課程3年になり、一応博士論文完成の目処もついたところで、Jrecinで情報収集しつつ、公募への挑戦を開始しました。研究分野は社会科学系で、1つの公募に対して100倍はくだらない(といわれている)領域です。

◎公募戦績

8戦2面接2内定(同時期に内定を頂いたため片方を辞退)

◎公募開始時の業績・経歴

論文(ファースト)6篇、学会・研究会報告12件、教科書執筆分担1件、外部講師・出前授業等10件程度、教歴(非常勤等)2年(3校)、学振DC2、修士課程時に1年間研究留学

◎公募状況(大学の地域についてはフォッサマグナを基準に西日本・東日本としています。大学のランク付はあまり好きではないのですが、参考程度に。本質ではないはずです。)

➀西日本私大(Eランク)

 5月中旬締切り→8月下旬不採用通知

➁東日本私大(Dランク)

 6月下旬締切り→12月下旬不採用通知

➂西日本公立大(Bランク)

 7月中旬締切り→11月下旬不採用通知

➃東日本私大(Cランク)

 7月下旬締切り→12月下旬不採用通知

⑤西日本私大(Bランク)

 9月下旬締切り→12月下旬不採用通知

⑥東日本私大(Fランク)

 11月下旬締切り→12月中旬不採用通知

⑦西日本国立大(Aランク)

 12月下旬締切り→1月中旬面接通知→1月下旬面接→2月中旬内定通知

⑧西日本私大(Dランク)

 1月上旬締切り→1月中旬面接通知→2月上旬面接→2月中旬内定通知

以下では、➀~⑧を見た傾向その他の経験談を記述します。

1.若手のチャンス時期

公募には、当然現職の方も参戦します。博士号持ち+教歴十分+研究業績十分の即戦力研究者と教歴・業績共に薄い若手を比べると、若手にとって武器となり得るのは年齢と勢いくらいです。公募先が若手に的を絞っていない限り、なかなかマッチングしないのが実情でしょう。

一方、下半期頃から次年度の計画・準備が始まることを考えるならば、下半期、特に年をまたいで以降の公募における現職の大学教員の参戦率はグッと下がります。そもそも採用する側からみても、次年度の準備途中で現職をほっぽり出して次の職へ移るような方は「危険人物」として敬遠する対象となるでしょう。言い換えれば、年度後半以降の公募には若手狙いのものが多いということができるでしょう。

現職でない若手にとって最大のチャンスとなるのは、1月~2月頃にかけての公募(次年度4月着任)でしょう。この時期の公募で他の若手研究者と差を付けることのできる業績を持ち、かつ後述するようにコミュニケーション能力を磨いておくことが必須です。

2.不採用通知の時期

ネット上には、2,3ヶ月で不採用通知が来るという情報が出回っています。一方、私が経験した中では➁~➃のように、締切りと不採用通知の間がかなり空いているケースが目立ちました。上半期の公募結果と9月公募の結果が年の瀬に押し寄せてきた時は本当に自信喪失しました。

早い時期での内定通知には逃げられるリスクがつきものです。確実に赴任するであろう条件が整った段階(例えば、内定承諾書を提出する、次年度の具体的な準備に入る、など)で、不採用通知を出すケースが、少なくとも私の研究分野では多いような気がします。不採用通知が来ていないからと言って変に期待する事なかれ。来なかった分の不採用通知が年末頃に一気に押し寄せてきます。

3.面接通知の時期

一方、⑦、⑧のケースですが、面接通知はかなり早かったです。大体2週間ほどで通知を頂きました。どちらも、まず事務の方から電話があり、その後メール(⑦)か郵送(⑧)で正式な面接通知の書類が届きました。電話を頂いた時間は10:00頃と16:00頃でバラバラです。

面接は、⑦は2週間後、⑧は3週間後でした。面接内容については有料部分で触れることとします。

4.内定通知の時期

一般的に「内定の場合は早い」と言われています。中には面接日の夕方に連絡が来るとも。私も当初そのように思っていたのですが、⑦、⑧については結構時間がかかりました。ただし、ありがたいことに両者とも、結果がいつ頃出るか、面接中に教えてくださいました。どちらも教授会採決を通過する必要があったので時間がかかったとのことです。選考委員の中で第一候補者が決まった段階で内々定をいただくということはありませんでした。

5.リサーチマップへのアクセスについて

応募先の大学の先生方が自分に対してどれくらい興味を持ってくれているのかというのは、非常に気になるものです。私も⑤に応募したあたりから自分のリサーチマップにgoogle analyticsを仕掛け、どの地域からのアクセスがどれくらいあるのかを日々チェックしていました。

正直に申し上げますと、アクセスの頻度と面接通知・内定通知にどれくらい相関関係があるのかは分かりません。ただし、不採用通知を頂いた⑤、⑥については、締切り後、おそらく審査期間中に細々とアクセスがありました。ただし、長続きはしません。1日~3日ほど、1~2件/日くらいのアクセスがある程度です。それ以降は全くアクセスはありませんでした。

一方、内定通知を頂いた⑦、⑧については、締切り後、平日限定で1~2週間ほど1~3件/日くらいのアクセスが続きました。面接通知を頂いてからは0~1件/日ほどに収まったのですが、面接日を境にアクセス数が再び増えました。面接直後は2~3件、その後1~3件/日くらいのペースが続き、おそらく教授会が開かれているであろう日時(応募・面接準備をする過程で大学のシラバスをチェックするかと思いますが、不自然に授業が全く入っていない曜日・時間帯があります。ソコです。)には1時間に5件ほどのアクセスがありました。関心を持って頂いているのかな~という程度に見ていたのですが、今思えばあのアクセスの増え方は内定の前兆だったのかなと感じています。関心がありましたら、是非google analyticsを仕掛けてみてください。

6.面接の手応え

幸いにも面接落ちを経験しなかったため、「どのような手応えがカギとなるか」という視点は持ち合わせていません。あくまで私が面接で感じた印象を述べます。⑦、⑧ともに、ありがたいことに模擬授業に対する評価が高かったです。ダメ出しは一切なく、お褒めの言葉を頂きました。非常勤等で対面・オンラインの授業共に慣れていたのが功を奏したのだと思います。その後、面接自体は非常にフレンドリーに進んでいきました。⑦については10名ほどの教員が面接に参加しており、各教員から質問を頂きました。内容は、研究、着任後の業務、経歴、学生との接し方など多岐にわたるものでした。やはりコミュニケーション能力が問われます。答えにくい・分かりにくい質問をどのようにいなすかがカギだと思います。面接の具体的内容や肝心のいなし方については後述します。⑧では、4名の教員が面接に参加していました。終始非常に和やかな雰囲気で、ある先生が「是非○○先生(私のこと)のような方に着任して頂きたい」と仰ってくださった時には、思わず採用を期待してしまいました。こちらも、着任後のことをかなり具体的に聞かれました。こうしてみると、やはり面接の雰囲気そのもの、面接に参加している先生方の前のめり感、着任後の業務についてのやりとり、が手応えといいうるポイントであったような気がします。

7.出来公募、コネ、業績等について雑感

出来公募と思われる(思いたくなる)ものは何件かありました。➀と⑥ですが、応募書類が返却されたのはありがたかったものの、論文の抜刷りや書類等が読まれた形跡は皆無でした。

もちろん門前払いであった可能性もあります。しかし結局、「出来公募の証拠」は何もありません。「あれは出来だ」云々いう方もいらっしゃいますが、言葉を選ばずに言えば単なる負け惜しみです。出せそうな公募にはとりあえず出すしかない。公募戦士に選択権などないのです。

コネ作りが必要なのは言うまでもありません。しかし、何より大切なのは第一に書類の内容であって、そこを勘違いしてはいけません。私の場合、⑤は小さなコネがありました。⑦⑧はガチ公募です。しかし⑤は不採用、⑦⑧で面接通知を頂きました。コネなどあまりアテにはならず、仮にあったとしても結局応募書類の出来映えを補強する(言い換えれば、知り合いの先生に強く推薦してもらえる)材料にしかならないのです。

「自分が書類選考で負ける要素を削り落とし、客観的に見て『この人を取らない理由はない』と評価されうる力量を身につける」これを肝に銘じて業績作り・書類作りに臨むとよいかと思います。

基本的に、博士後期課程入学以降の年数分の論文は必要でしょう。D3であれば3本です。ただしそれは最低ラインです。多ければ多いほど「しっかりやっている感」はでるものです。手前味噌で大変恐縮ですが、私の場合、D3でファーストが6本ありました。上半期の公募は全敗し、年をまたいでの公募は全勝ですので、この本数は若手の中で勝負をする場合に限って一つの目安になるでしょう。逆に言えば、D3で6本程度では、年齢を考慮しても現職の先生方と勝負しても歯が立たないということです。

学会報告と論文の本数のバランスも非常に重要な気がします。業績は、基本的には学会で発表した研究成果を論文にまとめるという流れで構成されます。学会や研究会での報告がやたら多いにもかかわらず、論文の数が少ないというのは、「この人は論文を書く能力がないんだな」といっているようなものでかえって逆効果な気がします。私は、2~3報告に対して1論文(和文40000字前後)を目安にしています。

その他、やはり教歴も重要であると実感しました。面接の中で、教育経験が話題となることが多々あったからです。非常勤等の経験がないと、そのような話をすることはできません。話を振られても経験の裏付けがないため、フワッとした議論に終始してしまいます。この業界、「教歴(非常勤であっても)をつけるには教歴が必要」という意味不明な世界ですが、そこは先輩や指導教員を頼ってまず1つめの教歴をつけましょう。1つめにありつけることができれば、芋づる式に職はやってきます。

ここまで、ザックリと勢い外形的な話をしてきました。

以下では、私がどのように書類作成に臨んだのか、面接でどのようなことを聞かれたのか、どのような模擬授業(⑦、⑧ともオンラインです)を行ったのか、公募の雑感・アドバイスについて記述しています。個人特定リスクの軽減や内容の価値も考え、拙文で恐縮ですが有料とさせて頂きました。興味のある方はどうぞ参考になさってください。

具体的な内容は以下の通りです。

8.公募書類の作成について:どのような書類が審査を通過するのか。不採用通知をもらった➀~⑥の書類と、面接通知・内定通知をもらった⑦⑧の書類とを比較しつつ具体的にどの部分がカギを握っていたのかを振り返ります。
9.面接の内容・答え方について:聞かれた内容16項目+私の答え(答え方の方針)を具体的に記述しています。重要な質問事項についてはコメントを付しています。
10.模擬授業の組み立て方:どのような模擬授業が「イマドキ」で受けが良いのか、こちらも具体的に記述しています。アクティヴラーニングの導入に困難を感じている方には特に見て頂きたいです。
11.その他思うこと:感想文めいたものです。公募書類の作成や面接に向かう心構えとして肝に銘じておくべきこと、またそれらが表れる諸々の部分について記述しています。

ここまで読んでくださった方、拙い文章を読んでくださりありがとうございました。少しでもみなさんの力になれれば幸いです。

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