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ヒアリングが難しい!!!のハナシ

こんにちは。就労継続支援ビルドの秋田です。
ビルドは札幌市でデザイン制作とイラスト制作をメインにした作業を行う就労支援B型事業所です。
今日は、支援スキルの方面の話をしていけると良いなと思っています。

今日のテーマは『質問』です。

ビルドのスタッフは、基本的にデザイナーとイラストレーターです。
精神保健福祉士である秋田と、作業療法士/イラストレーターのマコトさん以外は医療福祉系の専門教育を受けていないし、福祉業界の仕事はビルドが初めて!の状態です。
マコトさんも医療系の仕事だったから福祉業界は初めてだけれど、リハ職だからちょっとニュアンス違いますかね。障害福祉は本当に初めてで戸惑いも多かったと思います。
代表も前職の前はグラフィックデザイナーですし。

と、ここまで話しておいてアレですが、支援スキルとして障害福祉業界の経験は正直必要なくて、どちらかというと要求されるのはビジネスパーソンとしてのスキルなのです。

たとえば代表はグラフィックデザイナーとして長年働いてきたから、チームを率いていた経験もあるし、もちろんディレクター経験も豊富です。人材育成をする立場になることもあったと思います。
イラストレーターのニオさんは前職接客業でした。
通常、一定期間会社組織で働いてくると、最低限必要なコミュニケーションスキルは習得しています。他者に何かを伝えるスキルは充分備わっています。
さすがにイラストのディレクションは未経験なので、利用者さんに仕事を振る過程で「このほうが伝わりやすい」といったノウハウを見つけていくことになりますが、これは障害関係なく単純にディレクションのスキルです。
技術指導や実務案件の対応はこれらの経験とコミュニケーションスキルで充分に対応できます。

では、支援の部分。ニーズのアセスメントや見立て、支援方針を考えることなどに必要なスキルはどうでしょう?

主に"質問"をすることが多くなり、いつもよりちょっと高度なスキルを要求されます。
これにはインタビューとヒアリングがありそうです。

【インタビュー】
-調査や診断のため対象となる人と面接すること.
-面接のこと。特定の個人または集団と直接接触して交渉をもつことであり、調査診断、試験、取材などのために必要な情報を収集したり、またはこの過程が被面接者に呼び起こす効果を利用して、治療または説得したりすることを目的として行われる。たとえば企業の採用面接のように「面接」ということばが用いられる場合だけでなく、「相談」「カウンセリング」なども面接の一種である。

コトバンクより抜粋

【ヒアリング】
面接調査で、相手の話を聞くことを中心に情報収集する方法のこと。

コトバンクより抜粋

なんだか言葉の意味だけだと、どっちにも面接で使うって書いてあるし、よくわかりませんね……。

ネットの海をさまよっても、明確な定義がイマイチ見つかりませんでした。
日本語の文化で見ると「インタビュー」は著名人等に対して取材をするニュアンスが近いかなと思います。
主体はインタビューされる側にあって、紹介するイメージ。
「ヒアリング」は聞き取りですけれど、主体が聞く側にあるニュアンス。
聞き手が知りたいことがあって情報を収集するイメージ。

支援の場では、たぶんどっちも使います。
今回は主にヒアリングのスキルについて言及していきます。

ヒアリングは、「自分の中に仮説があって、それを確かめる」行為なので支援の場では諸刃の剣です。誘導になってしまうリスクを伴います。

一方で、支援の介入時期など、本人も支援者もまだ方向性が見えていない段階では、アセスメントの意図もあるので積極的に"ヒアリング"していくことになります。
このときに行う質問は、支援者の側に一定の仮説があって、それを確かめていく行為です。

たとえばイラストの練習を始めたばかりの初心者の利用者Aさんがいたとして
まずは基本操作を覚えたいとの希望で、テキスト学習でを学んでいる場面。

Aさんは、なかなか作業に集中できず、他の作業をやってみたいと希望されました。

支援者は、Aさんにとってどの部分がやりづらいと感じ、イラスト以外の作業をしたいと希望したのか?を探っていく必要があります。

このとき、いくつか質問をしていきますね。
利用開始から間もなく、まだ関係ができていない段階ですから、単刀直入に「飽きました?」と聞かれて、朗らかに「飽きました!!」と答えられるメンタルの強い方は多くありません。

そこで支援者は、いくつかの可能性を頭に浮かべます‥‥


  • 文字情報を追うのが苦手な方なのかな?

  • やっていてわからないことがあったけれど質問できなくて困ってしまったのかな

  • 普段は動画を見るタイプかな?

  • イラスト制作自体がイメージと違っていたのかな

  • 最初にイラストと言ったけれど、他の人の作業を見て気になることができたのかな?

などなど…

利用開始早々だと、なにかしらやりづらさを感じていてもなかなか言い出せないこともありますよね。

これまでの様子観察で、質問等は行える方だということがわかっています。イラスト自体は楽しいという発言も聞かれていました。

この場面では、テキスト学習が苦手かつ指示通りの作業が苦手なのかもしれないと仮説を立ててみましょう。

Aさんは他の作業を…と希望していますから、まずはそこから確認です。

秋田「イラスト以外の作業を希望ですか?なにか興味がある、やってみたいことがありましたか?デザイン関係だとIllustratorの基礎練習やPhotoshopのテキスト学習もありますよ。イラストも、デジタルだけではなくてアナログでもいいですし、線画はアナログで清書や塗りだけデジタルということもできます。ですが、作業に集中しづらい様子が見受けられたので何か気になることがあれば教えてほしいです。」
Aさん「イラストをやりたい気持ちはあるんですけど、なんだか集中力が続かないんですよね…」
秋田「どんな部分で集中できないと感じますか?」
Aさん「本を読んでいると眠くなってしまって…」
秋田「そうだったんですね。まずはアプリに慣れることが目標でしたから、本を使わなくてもいいですよ。動画教材を見ることもできますし、いったん自由に創作してみることもできます。パソコンで絵を描かなくてもいいですよ」
Aさん「本を終わらせなくても自由に絵を描いてもいいんですか?」
秋田「決まりはないので問題ありません。なにか描いてみたいものがありましたか?」
Aさん「実は、家ではこういった絵を手描きで描いていたので、パソコンでもやってみたいんです」

※事例は架空です


こうしてAさんは、自由にイラストを描きながら、やりたいことを実現する操作がわからないときに質問するという過程に入りました。


実はこのようなやりとりは、営業の人が行う「営業ヒアリング」で実践されているものに近いです。
(↓このサイト見ながら思いました↓)

営業ヒアリングでは、営業先の情報や業界の状況を事前に収集して提案できる手だてをたくさん用意した上で客先に伺い、潜在的ニーズを掘り起こして仕事に繋げていきますよね。

支援機関では、関係機関との連携や本人への聞き取りで、ある程度の基本情報を得ています。日々の作業の様子や会話からも情報を得ることができます。ですので、なにかしら発信をしていただければ背景を予測すること…仮説を立てやすい部分はあるのですよね。
ですので、ある程度の仮説を設定した上で質問を行い、次の方針を決めることができます。
ちなみにですが、初回の面談ではインタビュー形式でお話を伺うことが多いです。

以上の理由からできる営業!タイプは支援者に向いているかもしれませんね。

支援をする上でちょっと難しいな?と感じたときは、福祉支援技術以外の部分に目を向けてみると役立つ情報に出会えるときもありますよ。


今日の noteヘッダーイラストはYOUさん(仮名)による水族館のイラストでした。
余談ですが最近札幌にはAOAO SAPPOROという新しい都市型水族館がオープンしたばかりで
夏の暑い時期というのもあいまって水族館を描いてみよう!ということになったみたいです。
館内の照明もブルーがメインで、なんだか不思議な空間ですよ。
イラストは #みんなのフォトギャラリー に登録しますので、どんどん使ってくださいね!


いただいたサポートは利用者さんの工賃に!素敵なヘッダーイラストを描いてくださった皆さんに還元しますね。