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タルホと月(稲垣足穂について)

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ブレードランナー関連/稲垣足穂関連/思想関連
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記事一覧

春に目ざめる男性の秘密

微温い風に起こされて窓外を見ると、天が紫に染まっている。 腕時計を見ると18時を回って、そ…

雪雪
2週間前
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The Ding Dong Song

夕暮れに青く染まったモスクから巡礼の声が聞こえ漏れてくる。瓦斯灯に灯りが点って、街々から…

雪雪
4か月前
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いと美しき少年の寝顔  『君たちはどう生きるか』の感想

スタジオジブリの最新作『君たちはどう生きるか』をIMAXにて鑑賞。 感想などをネタバレを交え…

雪雪
9か月前
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美しき稚き婦人に始まるA感覚童話映画『君たちはどう生きるか』の感想

先日、『君たちはどう生きるか』を初日に鑑賞し、それから、何度も頭の中で反芻する度に、今作…

雪雪
9か月前
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少年自身

「迫るような森を背に鳥居がある。そこを潜ると屋敷が見えてくる。ふたなりの主人がお前を待っ…

雪雪
9か月前
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稀覯雑誌『ADONIS』

ついに、念願叶って、『ADONIS』を手に入れた。 創刊号から順に5冊。初期本である。 これは私…

雪雪
9か月前
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『一千一秒物語』と『タルホと月』

最近、2つのことをしていて、それで時間がどんどん無くなる。 一つは稲垣足穂の『一千一秒物語』の前身となる『タルホと月』の原稿起こしとその製本である。製本とはいっても、個人で楽しむためのものである。 日本での著作権は2016年に死後50年から70年に延びたため、稲垣足穂の著作権フリーは彼の没した1977年から70年でそれの翌年、つまり2048年である。 『ブレードランナー2049』じゃあるまいし、まぁ『イナガキタルホ2048』である。 谷崎潤一郎は1965年に亡くなったが、

タルホと月⑳ 『彌勒-MIROKU-』

林海象の映画『彌勒-MIROKU-』に関して。 『彌勒-MIROKU』は2013年に公開された作品で、稲垣…

雪雪
7か月前
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タルホと月㉑ 聖なるものと俗なるもの

稲垣足穂という稀代の怪人、魔神に関して。 先日、足穂の墓がある京都の法然院を訪ったところ…

雪雪
7か月前
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タルホと月㉒ 西山金蔵寺と日本最古のボーイズ・ラヴ♡本? 『秋夜長物語』

京都は洛西に西山金蔵寺なる寺がある。 桂川を超えて、洛西ニュータウンを超えていくと、いき…

雪雪
7か月前
9

ADONIS&SATYR-アドニスとサテュロス

第一章 ある熱帯のヴィラにて 作品は何度でも改稿され複製される。これも例外ではない。 自…

雪雪
8か月前
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ブレードランナー2049とルヌガンガ

私は『ブレードランナー』、『ブレードランナー2049』が大好きだと常に言い続けているが、私は…

雪雪
1年前
25

親友という百合の花、歌劇団の代理恋愛 

川端康成の小説に『親友』という作品があって、これは少女小説である。 これは川端康成幻の作…

雪雪
1年前
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『少年愛の美学』および、クナーベンリーべの近親相姦的美学』  稲垣足穂考/タルホと月

マクラ 夜半、自宅へと向かうバスが目的地へと着き、降車すると夏至の匂いがする。それは、「菊の香や 蘭より暗き ほとりより」という、医師である桃園豪が、「どうだ。このパロディは」と胸を張る蕪村のパロディ句に親しいが、けれどもこの匂い、それは、それよりももっと、肉体的な情緒を削ぎ落とした感覚、乾いた感覚の世界である。 花壇には、蘭や菫も愛らしく微笑んでいて、ヘリオトロープが匂い立ち、 月光と、幾つかの瞬く星々に照らされている。川沿いの学校の前のバス停だからだろうか、木に溢れてい