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モディリアーニにお願い


この秋に、『ブルーピリオド』のTVアニメが始まる。
『ブルーピリオド』は東京藝大受験をテーマにした美術漫画である。これは超面白いので、無論おすすめではあるのだが、美大漫画には『モディリアーニにお願い』という作品もある。

モディリアーニとは、アメデオ・モディリアーニのことである。
モディリアーニはエコール・ド・パリを代表する画家で、一度観たら忘れられないインパクトを残す絵を描く画家である。モディリアーニは貧困、そして病で35歳で死んだが、死後になって評価された。

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この『モディリアーニにお願い』は田舎の美大を舞台にした作品で、才能の葛藤が描かれている。
主人公は3人の男子生徒で、彼らは各々の学科の作品作りに日々精を出しているが、他者との才能の差などに、いつも悩まされている。

『ブルーピリオド』はある種、ストーリーラインが縦軸で、そこに美術における悩み、または才能、作りたいもの、他者の評価など、詰まるところ、同様の内容を絡めて描かれてはいるのだが、まずは藝大入試という目的があり、その点で比較的ライトで読みやすいのである。
『モディリアーニ』はどちらかというと、『ブルーピリオド』における第二部に近い肌触りの作品である。『プルーピリオド』も第二部から話の筋の掴みどころが難しくなって、評価が分かれる。

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私が好きなのは、バイトで、ある画家の個展の受付をする話である。この話の中で、この画家の個展にはほぼ誰もお客さんが来ないのである。
これは、当然だろう。誰も無名の画家の個展などに行くわけがない。
皆、DMを出したり、SNSで宣伝をしたりするが、それでもお客さんなど来ないし、売れないのである。芸術で食べていこうなどとは、土台無理な話である(音楽、小説、役者も同様)。
そこには才能に加えて、恐ろしいほどの自尊心、恐ろしいほどの時の運、恐ろしい程の社交性が必要になってくるのだ。人は簡単にはお金を出さない。観てくれない。読んでくれない。来てくれない。
けれども、この画家はそれでいいのである。作品を発表して、そして、また次に描きたいものが浮かび始めている。それでいいのである。
これは、真の意味での創作者の話である。
躍起になって、作品を宣伝することに命を賭けるわけではない。
作ることが楽しいのである。無論、お客さんがきてくれたら尚嬉しいが。

『モディリアーニにお願い』は、非常に小さな作品である。けれども、この作品には美しいきらめき、創作者のきらめきが、作中でも描かれる宮沢賢治の『やまなし』のように輝いている。

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