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eスポーツ漫画、『東京トイボクシーズ』の最終巻を読む。

『東京トイボクシーズ』の4巻&最終5巻が発売されたので読む。


3巻が発売されてから2年くらい新刊が出ていなかったので、久しぶりである。そういえば、最近『ヒストリエ』も全く新刊が出ていない。

さらに、私は『バガボンド』を既に8年待ち続けているが、その間に井上先生は映画を作っていた…(『バガボンド』は37巻が2014年に発売されてから休載中で、以降は38巻の中盤の5話くらい進んで止まっている)。
恐らく、『バガボンド』を今度は映画でやるのではないか。『スラムダンク』は既に興行収入120億円、最終130億円近くいくだろう。
井上雄彦のこと、また新しいアニメーション技術(『かぐや姫の物語』が近いのかな)的な感じで巌流島を描くのではないかと妄想している。

と、全く関係のない話を書いたが、要は『東京トイボクシーズ』はやはりなかなか読み応えのある面白いマンガだったということが書きたいのである。

前身である『東京トイボックス』、その続編の『大東京トイボックス』はゲームクリエイターを主人公にした作品である。
弱小ゲームスタジオのG3に1人の天才ゲームデザイナーがいるが、彼を軸にゲーム開発と、現実のゲームが起こす問題とを絡めた書いた漫画であり、お仕事漫画である。ドラマ化もされている。

『東京トイボクシーズ』は、この、G3が制作した『サムライキッチン』という格ゲーの最新バージョンがメインの競技として登場する、eスポーツ選手を描いた青春マンガである。
前2作は大人の青春マンガ(つまりは職業漫画)、そしてこれは少年少女の青春マンガである。『大東京トイボックス』同様に、現実のゲームが持つ問題、所謂、ゲーム中毒やゲームが子供に与える影響を絡めて描かれている。然し、やはりあくまでもゲーム讃歌であり、ゲーマー讃歌の漫画になっている。

eスポーツは年配世代には中々理解されにくい部門で、それは作中でも同様だ。今作はeスポーツ科が新設された進学校が舞台だが、そこでの少年少女、いや、少女少年が切磋琢磨していくお話である。

人は、識らないこと、まだ始まって間もない文化には懐疑的であったり、白い目で見たりする。然し、このeスポーツに賭ける主人公たちの思いというものは、決して馬鹿に出来ないものである。
何かに打ち込むことそれ自体が藝術であり、作品とはただの副産物に過ぎないと、私は教えられた。作品とは、その時間が刻まれただけの具象に過ぎないのである。

この『東京トイボクシーズ』が面白いのは、漫画としての展開の面白さを損なうことなく、このeスポーツという要素を部活漫画、プロを目指す戦い漫画として巧く落とし込んでいる。そのための作中に出てくるキャラクターの役割はテンプレート的であるが、同時に魅力的であり、舞台が変わればここまで読めるものになるのかと思わされる。

こういう漫画は、ライバルが登場してそれに勝つ、というのも勿論燃えるものだが、然し、一番心を打たれるのは、やはり主人公たちの感情の発露、それに寄り添ってくれる仲間やメンターの思いやりである。
私なんかはスポーツ漫画ではやっぱり『ベイビーステップ』のエーちゃんが神田に負けてプロを諦める決心をした際の青井コーチの言葉なんか、好きなシーンベスト10に入るのである。

無理に明るく振る舞う必要はないんじゃよ。

今作でも、そのようなシーンは幾つか登場する。
結局は、人と人の感情がぶつかった時にこそドラマは産まれる。その火花は、純粋な頃の少女少年時代は一層に青く燃えるわけだ。

今作はまだeスポーツという若い競技においてはそのきざしの一部でしかないかもしれないが、少しでも多くの方に読んでいただきたいと思い、紹介したく、この記事を草した。

ちなみに、私は格ゲーがクソ苦手で、コマンドが全然覚えられないのだ。

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