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バレエ・リュスとディアギレフ


バレエ・リュスというロシアバレエ団が存在していた。
このバレエ団は、セルゲイ・ディアギレフというプロデューサー、いや、山師が立ち上げ、ボスを務めたバレエ団で、凄まじい芸術一座だった。

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下記の本に、彼の来歴が事細かにかかれている。二段組の大著で、読むのに大変労力がいる。辞典に近い。

バレエ・リュス所属のダンサーに、ワーツラフ・ニジンスキーがいた。
ニジンスキーは天才で、彼は空中で静止するほどのジャンプ力を持っていると言われていた。

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彼のことを描いた漫画に、山岸凉子の『牧神の午後』がある。山岸凉子先生は、自身もバレエをしていたりして、『テレプシコーラ』や『アラベスク』などの傑作バレエ漫画をたくさん描いている。

私は『テレプシコーラ』が好きである。1部は10巻までで、姉妹の物語が描かれ、2部は5巻までで、ローザンヌコンクール出場の話である。
表紙を見たら、皆誤解するかもしれないが、実際にはまだ小5小6くらいの姉妹の話なので、表紙の人は一切関係がない。

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ニジンスキーは後年、狂ってしまって、若くしてバレエ・リュスからも離れた。彼は振付師としても天才だったから、『牧神の午後』や『春の祭典』などの意欲作も発表していたけれど、ディアギレフとの痴情の縺れもあって、それも狂うのに拍車をかけた。
その辺りは、ニジンスキーの手記を読めば彼の感情はわかるが、恐ろしい魔書のようなものだ。

川端康成が、ニジンスキーを『舞姫』の中で描いている。彼は、狂気に落ちていくニジンスキーを、自身の描く『魔界』の住人として重ねてみていたのか。
『舞姫』には川端の好きな、一休禅師の揮毫である『仏界入り易し 魔界入り難し』が登場し、作中、この言葉の意味を巡ってヒロインとその父(だったかな)の会話が交わされる。
川端の後半期作品の重要なファクターである。

ディアギレフというのは天才プロデューサーである。
たまさか、こういう人間がいる。本人に芸術的な才覚はないのだが、芸術を見抜く目、芸術を愛する心があり、芸術家の人心を掌握し、彼らの力を最大限発揮させることが出来る。ある意味、小説ならば菊池寛とかもこの類ではないだろうか。
ディアギレフはバレエ団を立ち上げる前には『芸術世界』という雑誌を編纂していて、この同人メンバーの画家レオン・バクストがバレエ・リュスの作品の舞台美術を多く手掛けた。彼は、フックアップが得意なのである。

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彼はバレエ・リュスを立ち上げてからも、様々な才能のある人員を起用して、ロシアバレエ団は素晴らしい芸術一座となった。

けれども、そういう人間は得てして問題も多くあるもので、ニジンスキーの他にも確執を作ることも多く、また仕事の面でも財政的な問題を多く抱えたりもした。

バレエ・リュスは調べれば調べるほどに奥深い、美しい世界だ。
私はニジンスキーを主役にした(と、いうよりも彼を複製させた人間)を主人公にした小説を書いた。自分では結構好きな作品なので、読んでもらえたら幸いです。

最近、またバレエ・リュスの本が出ていて(華麗なる〜の方)、欲しいなぁと思いながらも、他のものが欲しくなって買えていない。
欲しいと思って買えなくて、それから数ヶ月してもまだ欲しいということは、本当に欲しいんだろうなぁ…と悩んでいます。

ちなみに、このセゾン美術館の本は相当充実していますので、こちらがベストバレエ・リュス本です。


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