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【オープンデータでデータ分析】国勢調査2020人口移動、就業状態等及び従業地・通学地から見た石川県能登地域の現状

おつかれさまです。
石川県のシビックテック団体Code For NotoのBee.B.です。
民間企業で働きながら、石川県のデータアナリストをしている者です。
今回は、オープンデータを活用して、石川県能登地域の居住者の特長について分析してきたいと思います。

令和6年能登半島地震の発生を機に、能登半島の過疎化・集落の点在に焦点が当たり、多くの方が石川県に関心を向けてくださっている今だからこそ、
実際にどんな方が住んでいて、人口の移動はあるか。そのあたりを見ていこうと思います。


扱うデータ

国勢調査2020年 人口移動、就業状態等及び従業地・通学地(e-Stat)のデータをDLし、Looker Studioでマッピングしていく。

※Looker Studioでメッシュマップを作成するためには、地理空間フィールドを持つデータセットをBig Queryで作成する必要があり、すべてのメッシュをポリゴンデータとして保持するには、少しだけ加工が必要である。以下のデータセットでは、すでに全国の1kmメッシュデータをポリゴン形式に変換してあるので、ぜひご活用ください。

国勢調査2020年 人口移動、就業状態等及び従業地・通学地メッシュマップ(石川県)

実際のメッシュマップはこちら。(石川県のみ)

実際にデータを見てみる

農林漁業就業者世帯数 一般世帯数


今回、隆起した珠洲市から輪島・志賀町までの外浦には、数多くの漁港があり、毎日のようにニュースで目にする。では、石川県の輪島市・志賀町にとって漁港・漁業が出来なくなるというのは、どのくらいの影響なのだろうか。
以下のマップでは、農林漁業就業者世帯数 一般世帯数を表している。右下の内浦にある赤いメッシュは小木港・つまりイカ漁をしている漁港。左上の赤いメッシュが輪島漁港。そこから南の志賀町のほうまで、ほんのり赤いメッシュが点在しているが、それらは漁港を表している。
つまり、それほど多くの世帯が漁業を営んでいるのだ。

その漁港が隆起によって使えないとなると、長期の休業・廃業を余儀なくされる。今後の再建の方針に期待したい。

ちなみに加賀方面はこのようになっている。

次は、学歴についてみてみる。

最終卒業学校卒業者(15歳以上人口)うち 小学校・中学校

高校にいかず就職される方の分布だが、輪島朝市・漁港の近くも全体的に赤くなっている。今回の能登半島地震による火災で、輪島朝市は甚大な被害を受けたが、その中には多くの輪島塗の業者さんも含まれていた。その被害は、輪島漆器を作成する工程を知っている人なら、想像がつくだろう。

木地、下地、中塗り・上塗り、加飾すべての作家さんがプロセスの中に含まれており、そのどれもが欠かすことは出来ない。

以下は、輪島塗業界を立ち直すためのクラウドファンディングです。興味のある方はご支援の程よろしくお願いいたします。

話を戻しますが、
最終卒業学校卒業者(15歳以上人口)うち 小学校・中学校を見ることは、職人さん・漁師さんなどの人口分布を把握するのに役立ちます。

在学生 うち 大学・大学院

奥能登は高校卒業すると、みんな出て行ってしまいます。
高等教育機関の無い奥能登では、高校生まで育てたら外に出てしまう。という地域課題を抱えています。

実際にマップで見てみても、大学生はほぼゼロ。

加賀エリアも見てみましょう。

加賀エリアも全体的に少ないですね。石川県そして、地方都市の課題でもある18歳以降の県外流出を顕著にみることが出来ます。

ただ、コロナ禍によって、オンラインでどこでも仕事が出来る・授業が受けられる環境になりました。コロナ禍から時間が経つとまたオフライン傾向に戻りつつありますが、それでも完全オンラインで仕事が出来る企業も増えています。

珠洲市は東証プライム上場の製薬会社が本社機能の一部を置いたことで、若い方の移住者数が増えるといった効果も生まれており、
実際に震災のときには若い方が現地で活躍したおかげで、多くの命が助かりました。

実際にこうしてデータで見える化することで、県外で石川県のことを全く知らない方でも人口分布を把握でき、
この地域で課題を解決するようなソリューションを生み出せれば、日本全国の同じような過疎化地域でも横展開できるのではないか。そんなマーケティングに繋がります。

居住期間 1年未満

次に、居住期間のマップを見ていきましょう。
移住したてほやほやの人がどこに分布しているか。

能登には、のと里山空港がありますので、そこが赤くなっているのが特徴的ですね。あとは、七尾のベイエリアが赤いエリアが多いです。そして、実際にマップを見てみると、最果ての地・珠洲市にも移住者がちらほらいることがデータで分かります。

ここで御祓川大学という取り組みについて紹介します。

御祓川大学は、大学のない能登でも市民が自由に学べる場を作るために設立されました。
地域、まちづくりに関わるきっかけ、または深く学ぶきっかけとして、地域をもっと面白くしようとする市民たちとつながり、ワクワクする新しい知識や価値観に講義・対話を通じて出会う場所です。

https://academy.misogigawa.com/about/

御祓川大学は県内外の大学生・社会人が地方のまちづくりを学べるインターンであり、若い方との関係人口の醸成にも繋がっている。
こうした地元のまちづくり企業が行政を引っ張る形で関係人口を増やし、移住者の増加に繋げています。

加賀エリアも見てみましょう。

やはり大学の多いエリアの移住、そして金沢駅から50m道路沿い、金沢港までのエリア、また、金沢のベッドタウンである野々市市にも移住者が多い印象です。

人口の移動と交通機関には大きな関係があります。
2024年3月16日には金沢終点だった北陸新幹線が福井県敦賀駅まで沿線されます。小松駅や加賀温泉駅にも新幹線が止まるようになると、また多くの人が流れ込んできます。

ただし、石川県は金沢に新幹線が開業した年に、多くの人口流出がありました。それは、明治時代の日本海が表日本と呼ばれていた時代から、鉄道の発達した太平洋側が表日本に移ったもと同じ現象です。

交通機関が便利なる一方で人口流出が大きくなる。そして、能登半島地震があり、また人が出て行ってしまう。

「住まなくていいから、いつでも帰ってこられる故郷」

というまちづくりが今後必要になってくるのだと思います。

普段は都会に住んでいて、休日や連休に、自分の生まれ育った故郷ではないければ、能登の温かさを充電しに帰ってくる。Code For Notoもそんな活動の一端を担えればと思います。

おつかれさまでした。
このように国勢調査の人口移動・就業状況を定量的・俯瞰的に分析することで、県外の方でも地域課題の発見とマーケティングに活かせるようなデータになってきます。

他の地域のマップを作ることも可能ですので、自治体の方でご興味あれば、ぜひお問合せいただければと思います。

それではまた!

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