見出し画像

『わたしに会いたい』を読んで

「くもをさがす」黄色い本で蜘蛛の絵が書いてある。
書店へ行けば今もたくさん平積みされている。
西加奈子さんという作家さんが書いたし、描いたものです。

西さんの本との出会いは、多分友達が教えてくれて
関西弁の小説を読んだのが当時初めてで、
内容も面白くて一気に引き込まれました。
そして西加奈子さんという人に対しても強く惹かれてしまう。
感想を書くハガキに「西さんと友達になりたいと思った!」
と書いて投函していた経験があります。
(全然友達じゃないです!笑)

「くもをさがす」では作者の西加奈子さんの
カナダでの乳がんの病気との向き合い治療していく様を
ノンフィクションのお話として書いてあるのに対して、
今回の『わたしに会いたい』は8つの短編小説集となっています。

実際に西さんが経験したこともお話の中にあったし、
フィクションじゃないと聞いていられない、見られない、言いたくない
(どこかのお猿さんじゃないけど)
そういう内容も含んでいる、とわたしは感じました。

フェミニズムとは
女性が女性であることの意味、そして男性が男性であることの意味をお互いが尊重しあえる、そんな思想。
性差別的な搾取や抑圧からの解放を求める運動のこと。

今回は蛍光オレンジに乳房のような丸いイラストがある表紙で
可愛いなあ、と思って家に届いた本をじっくりじっくり眺めた。

わたしが男だったらよかったのにな、
と考えたことは人生の中でいくらでもあるけど
(え、あるよね?笑)

シンプルな格好なのに背が高いとなんか様になるのがいいなとか、
なにもしていないのに肌が綺麗でいいなとか、
いっぱい思い切り食べても太らないのいいなとかとか。
(おい、偏見!)

「え、ビヨンセやろ?あんたビヨンセやんな?」
どうやらイメルダは、私のことをビヨンセだと(もちろんそれはあのビヨンセとは違うのだが)勘違いをしているようだった。
いや、どこがビヨンセいう顔やねん!と、日本語で声に出しそうになった(その瞬間「おい、偏見!」という言葉が、自分に撥ね返ってきた。マドンナだろうが、リアーナだろうが、どんな名前だって名乗る権利が、私たちにはあるのだ)。
「私は、ビヨンセではありません。」
人生で、こんな台詞を自分が口にすることになるとは思わなかった。「私は、ふみえ。」

わたしに会いたい/Crazy  In Love/西加奈子

その中でも1番男だったらよかったのに
と強く感じざる得ない瞬間が来たのが、
やっぱり妊娠、出産、育児をしている時だろうか。

ポイントなのは“一瞬だけ“そう強く思うと言う事、
なのでいつもというわけではなく、ある程度くると
そのゲージまで辛さがくるイメージです。

だからお母さんだけの特権だなあ〜
と内心ほくそ笑んでいる時だってあります。
(例えばわたしとじゃなきゃ寝れない!とかお父さんいや!お母さんがだいすき!とか言われると内心、ね。)

わたしが初めてその瞬間がきたのが妊娠中、職場にて
「育休の実績がないから一回辞めてもらってパートで戻ってきてもいいよ」という言葉だった。
え?て、思ったけど甘んじてその条件を受け止めた。

やっぱり育休を取れるようにやろうと思う!と言われた時はすごく嬉しかった。そんなふうに動いてくれた事務長さんには今でも感謝している。そうなるとなぜが同僚からの風当たりが強くなった。
同僚の「え!そんなんでちゃんと子ども育てれるの?」
「みんなは辞めていったよ。」

子どもを保育園へ預けるとこに否定的な言葉はいくらでも受けたけど、
どれも保育園へ自分の子どもを預けたことのない人からの言葉だと
だいぶ後になって気づいた。だけどその当時はいちいち傷ついていた。

無事に育休を明けて職場へ復帰するとパートで週1、2くらいしかシフトに入れられない、と言われた。
保育園へ預けるのにある程度働いている実績がいるんですが、と言えば「掛け持ちでアルバイト見つけてきて」
え?て、思ったけど甘んじてその言葉を脳へ伝達し、
(受け入れたくないけど自動で受け入れるしかないと反射的に動いた感じ)掛け持ちできるところはないか探した。

子どもはまだ当時1歳、子供と一緒に私もよく泣いてた。
「育休の税金がもったいない」「風邪をひいたらちゃんとコロナ検査してきて(当時PCR検査なんて気軽にできないとわかっていたはず)」

こんなこという人いるんだ、と思うかもしれないけど実際にいました。

結局わたしはその職場から離れた。
(転職活動も正直辛かった。小さい子供がいるのになぜ働くのか、何度も聞かれた。お金のため、生活のためなのに。小さい子供がいるだけで私の価値は下がるんだな、と感じてしまった。)

一方、夫は?普通に変わらず仕事している。
私が頭がパンクしそうになりながら履歴書書いてる横で・・・
これ以上はやめます。笑
(夫は1ヶ月、育休を取ってくれた。子供が熱が出た時は大きくなった今でも変わりばんこで仕事を休んでくれている。今回の私の入院から今も介護休暇を取ってきれてサポートしてくれている。)

「リナみたいな奴ってたまにいるよね。なんか急に世界系気取るっていうか。」世界系ってなんだろう、そう思ったけれど、聞かないでおいた。「どうせ戦争反対なんでしょ?何、そう言ってたら立派な人間なわけ?どの口で言ってんのって話。あたしたち恵まれてんじゃん。まつエクしたりネイルしたり脱毛する余裕ある人間が戦争反対とか、はっ。」

わたしに会いたい/VIO/西加奈子

「うーん、私たちはなんていうか平和なところで暮らしてさ、毛の処理とかするような余裕あるじゃん?それで世界のこととか戦争のこととか話すって……。」「え、なんでおかしいの?」「ヨウさんはさ、人のVIOを間近に見てさ、毛を剃ってさ、それって結構きつい仕事じゃん…多分外国から来てるわけじゃん。日本て平和じゃん?VIO脱毛って安くないしさ、私ヴィトンのカバンとか持ってるし、なんかそんな贅沢して、人に下の毛の処理させながら戦争反対とかってさあ……。」「えー、リナさん、じゃあヨウさんが脱毛する側だからかわいそうって言いたいんですか?あ、職業差別じゃん!」まりぷぅは目頭切開で大きくした目を、さらに大きく見開いた。

わたしに会いたい/VIO/西加奈子

世の中にはたくさんのハラスメントがある。
わたしが経験したものもいわゆるマタハラ、モラハラに値するのかな、と思うがそれはあまりにも当たり前に堂々と行われるのであれ?って一瞬思うけど受け入れてしまい、それが当たり前になって良くない風習が残っていく。だけど逆に「それは本当はおかしいんですよ。」と勇気を出して言って辞めたあの後、少しはそれぞれが考えてくれればいいなとも思う。

ついついフェミニズムぽい発言をするときに女性VS男性の構図をよう目にするけれど女性同士だってこういうことは大いにある。

お互いが尊重し合えるのが大切だと心から思う。

そして西さんがわたし達に問題提議してくれた問題は
上にも書いたけど目をそらしたくなる生々しい怒りを感じる。
でもガールズバーで働く娘達が世界系のことを話していように
その問題に対して考えるのは別にいいし、それは自由!と思います。

余談かもしれないけどSNSに育児や夫婦問題のページを目にするようになったのは自分が体験してから。
つまり、ついつい探してしまって、さらに提供されて、共感して、癒されているのかなって思う時がある。

是非、たくさんの人にこの本が読まれて
少しでも考えるきっかけになったらいいなと思う。

共感で癒されるのではなくて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?