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2022年9・10月の記事

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①【文芸時評10月】干さオレ~二子玉死闘篇~ 荒木優太 ②【文芸批評時評9月】夏はあっという間に過ぎ去った 中沢忠之 ③【連載】考えるあゆみ(第一回) なかむらあゆみ ④【連載】… もっと読む
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ポエムはみんな生きている(第六回)

「しょっぱいリアル」 安倍元総理暗殺の映像論  ni_ka安倍晋三元内閣総理大臣が、衆人環視のなか、街頭演説の最中に、暗殺されたテロ事件から、季節は巡り、今は秋。安倍晋三さんは、彼の父親である安倍晋太郎元衆議院議員と同じ67歳で亡くなった。あまりにもあっさりとあっけなく、映像に撮られながら亡くなった。 私が安倍元総理暗殺事件でなにより着目したのは、事件の前後とその瞬間を捉えたいくつかの記録映像、つまりアーカイブによる表象だった。政治的や倫理的な観点からの興味ではないこと等、

いま虚構や批評にとって陰謀論とは何か(前編)——全体性の思考と陰謀論化した世界

フィクションの感触を求めて(第四回) 勝田悠紀 0.はじめに  この連載もついに四回目になった。ほぼ同時期にスタートし勝手に同級生のつもりだったなかむらあゆみさん「地方文学賞の賞金で文芸同人誌をつくる」、韻踏み夫さん「耳ヲ貸スベキ!」が相次いで全六回を完走し、荒木優太さんの「干さオレ」にいたってはまさかの二周目である(と書いていたら先日ついになかむらさんも二周目に入った)。一人あるまじき進度の遅さにオレもいつ干されてもおかしくないと内心恐々だが、なんとかゴールラインを切れ

考えるあゆみ(第一回)

「『わからない』が怖い」 なかむら あゆみ 怖がりである。  自然災害も人から嫌われることも驚かされることも人の輪に入るのも夫の運転以外の車に乗るのも丑三つ時に鏡を見るのも、考え始めると他のことが手につかなくなるほど恐ろしい。ゴーストバスターズの巨大なマシュマロマンは未だ夢に出てくるし、「もし呼吸を忘れたら」という呪縛は40年間私の寝つきを悪くしている。小学5年の時、霊感少女と一緒に鉄塔の先端に立つドラキュラを見たせいで、今も尖塔が恐ろしい。  そして私は「わからない」が怖い

夏はあっという間に過ぎ去った

文芸批評時評・9月 中沢忠之 「「事件」は文芸誌で起きるんじゃないSNSで起きる」という名言をぶちあげた栗原裕一郎が、みずからSNSで「事件」を巻き起こしている。  トランスジェンダー差別をめぐってである。結論からいえば、栗原の論点は2つある。まず、昨今のトランス活動家の差別批判に、行き過ぎた暴力があると批判している点(①)。さらに、その暴力を文壇に持ち込んだとして文芸誌『文藝』および水上文を批判している点(②)である。トランス差別批判一般の話と個別文壇内の話とまとめられる。

干さオレ~二子玉死闘篇~(第四回)

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