2023 International Youth Design Competition 優秀賞 伊藤楽葵
ー優秀賞受賞おめでとうございます! オーストラリアのコンテストに続き、現地の審査会に参加していかがでしたか?
受賞できたこと、また、海外でショー形式のコンテストに参加できたことを嬉しく思います。前回のオーストラリアの時は展示形式の審査で、他のファイナリストと交流する時間があまりありませんでした。でも今回は3日間かけて、みんなとショーを作っていくような、イベントが完成していくさまを見ることができたから、達成感もありましたね。
ー今回のコンテストに応募した経緯を教えてください。応募した作品は昨年のヘンペルアワードの時と同じものでしたね。
去年、同じ中国のヘンペルアワードに通ったというのもあり、6月に国際交流センターからのメールを見て、すぐに応募しました。欲を言えば、新しく作り直したかったというのがありますが、他のコンテストも重なっていたため、過去作品を応募しました。他のファイナリストも卒業制作を出している人が多かったようです。
ーファイナリストは35名で、その内の1名はデジタルファッションでした。中国だけでなく、スペイン、イギリス、南アフリカ、インドなど、様々な国から集結した学生の作品を実際に見てどう感じましたか?
それぞれの個性、その人の色が出ていましたよね。作品を見ただけで、好きなものまでわかるというか。これを作ったのはやっぱりあなただよね、みたいな。コレクション形式で発表していたからというのもあると思います。体数が多い方が迫力も見応えもあるし、自分のテクニック的な部分も多く見せられるだろうし。特に色使いとか、すごく上手いなと思いました。生地からアプローチしている人が多くて、引きで見た時のコレクション全体としてのまとまりや美しさがあって、日本の作り方と全然違うことを実感しました。
実際に作った人に質問しても、ゼラチンで生地を作っているとか、工場に依頼しているとか、デザインの発想から作り方から何まで全部違うというのは、すごく驚いたと同時に面白いと感じた点です。
ー本番までの3日間、フィッティングやリハーサルなど、朝から夜中までのスケジュールでした。その中で一番印象に残ったことは?
他の制作者と会話できたことが、すごく楽しかったです。その人と作品を照らし合わせて、どんな素材を使っているのか、どんな技法で制作したのか、どんなテーマなのか、そういう深掘りした話ができたから。
ヘンペルアワードの時もWeChatで気になった作品の人にメッセージを送ったりしたのですが、オンラインだとそこまで話したり仲良くなれたりしなかった。実際に会って、直接話すというのはいい刺激になりました。日本が好きで、日本へ遊びに行きたいと言ってくれる子たちもいて、日本に来た時にまた会おうね、みたいな、そういう仲間ができたのはすごく嬉しかったです。
でも、同時に言葉の壁をすごく感じました。通訳アプリで会話はできますが、その場のノリやタイミングがワンテンポ遅れてしまう。英語を話せるようになっておきたいと痛感したので、自己投資として賞金で英会話教室に通いたいと思っています。
ー言語以外に、もっと準備しておけばよかったことはありますか?
フィッティングシート。着装写真とアイテムの写真は用意した方がよかった。アイテムが複雑で、着せつけに時間がかかってしまったので。あとはサイズ感。今回のモデルさんは細くて、コルセットも最後まで締まりきらず、安全ピンで留めてショーに出したんです。体をシェイプさせたディティールが多かったから、そこでちょっと苦労しました。次はショーの裏側も考えて制作しようと思います。例えば、ひもで固定するところをファスナーにするだけでも着せやすくなりますし。
自分は男だから、今までショーの裏側を見たことがなかったんです。学校のショーや他のコンテストでもバックヤードには入らせてもらえなくて、でも今回はその場に立ち会えて、フィッターの子たちがモデルさんに大急ぎで着せ付けているのを見て、なおさらそういう気持ちが強くなりました。
ー本番は大雨でショーが中断したんですよね。
すごく記憶に残っています。初めての屋外のショーで、中国語が飛び交っていて、大雨。当日のリハも雨で中止になり、一発本番みたいな感じでした。こんなこと、この先ないかもしれませんね。
北京服装学院を見ることができたのもいい経験になりました。作品提出やフィッティングの場所が北京服装学院で、隙間時間で図書館や博物館など校内を案内してもらいました。食堂も美味しかったです。
各ファイナリストにボランティア学生が1人ついてくれるのですが、それが北京服装学院の学生たちだったので、学校の話を聞けたりとかして。学校の敷地内に寮があるから、土日も教室が開放されているとか、服は自分で縫わずに工場に投げちゃうとか。3DソフトのCLOなんかも普通に使われていて、レベル高いなと。
ー伊藤さんには日本語が少し話せる学生さんがついてくれました。
やっぱり海外でひとりだと不安もあるじゃないですか。そういう中でずっと一緒にいてくれて、すごく安心したし、分からないことも聞いたらちゃんと答えてくれて、感謝ですね。ちょっとした気遣い、椅子を持ってきてくれたりとか、自分は濡れているのに傘を貸してくれたりとか、人の優しさに触れた3日間でした。
ーこれから海外コンテストを目指すかたにメッセージをお願いします。
日本のコンテストに何個も出して全部落ちてしまっても「自分はダメだ、諦めよう」とはならないで、海外のコンテストだったら高い評価を受けるかもしれません。だから、挑戦してみて欲しいです。
デザイン画が苦手だったとしても、ポートフォリオでの応募であれば、色々な方法で表現できます。スワッチを貼ったり、写真を入れたり、自分の得意なところからコンテストに挑戦できる。絵が得意ならもちろんいいし、パターンが得意ならCADから出力して、こういうパターンの服を作ります、でもいい。今回なんて、ポートフォリオですらなくて、作品撮りの写真を何枚かメールで送るだけでした。
ー伊藤さんの次の作品にも期待しています。
海外のコンテストにはこれからも挑戦したいですし、中国のコンテストがあったらまた参加したいです。次は新しいコレクションの話ができたらいいですね。
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