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勝手に…『続・アナと雪の女王』 第2章

【このお話は『アナと雪の女王』を元に著者が自主的に創作した2次創作物であり、ウォルト・ディズニー・カンパニーとは関係を持たない作品です。】

*第2章 凍てつく王国と氷の城*

山の中に入ったオオカミは行く当てもなく彷徨っていました。
「…何だ、これは?」
見ると岩場の陰に鈍い輝きを放つ小さな黒い玉が落ちていました。
オオカミが匂いを嗅ぎ、鼻先でそっと突ついてみると、突然玉は真っ赤な目と鋭い牙を剥き出してオオカミの首筋に噛み付いて来ました。
「感じるぞ、お前の悲しみ、憎しみ! その無念を晴らす為に力を与えよう。我を取り込み、復讐の為の血肉とするが良いっ!…」
激しい痛みと苦しみにオオカミは狂ったように走り出しました。
黒い玉は何時の間のかオオカミと同化して、オオカミの目は玉と同じような真っ赤な目になっていました。


「ママ、パパはもう南の国に着いた頃かな?」
アンはベッドでシーツから目だけを出して、エルサに尋ねました。
「あら、アン。まだ眠くならないの?」
昼間、街の中を見て来たからでしょう。
アンは夜までずっと、暇さえあればエルサに街の中で見て来たことを話してくれたのです。
好奇心旺盛なのは、何時もアナと一緒にいるからでしょうか?
いいえ、それもあるけどアンの父親もとっても好奇心旺盛な人。
エルサはアンの父親との出会いから結婚、アンを産んだ時のこと、今も自分を助けて女王の代理として遠くの国まで出向いてくれていること、そして何よりもアンのいい父親でいてくれることにとても感謝しています。
「そうね、今頃はきっと無事に着いてる頃。そしてご用が終わったら、すぐ様アンの所へ帰って来てくれるわ。」
「パパ、早く帰って来ないかな…」
そこまで喋ると、アンはスヤスヤと寝息を立て始めました。
「おやすみ、アン。」
シーツを整えたエルサは寝顔に優しく微笑んで、枕元の明かりを落とすのでした。


「お城に氷を運ぶ係のあなたが、どうしてエルサに謁見してるのかしら?ビックリしてしまったわw」
お城のテラスに出た二人。
クスクス笑いながら喋るアナに、ちょっと膨れっ面のクリストフは、
「この前お城に氷を運んだ時にたまたま女王様に出くわして『氷を運ぶ以外には何をしてるの?』と聞かれて、『何時も山の中で何かしてる。』と答えたら、『大臣や門番に話しておくから、これからお城に来た時には山の中の様子を聞かせて欲しい。』と頼まれて、それで今日は女王様にお目に掛かっていたのさ。」
「へぇ、そうだったの。でも何でかしらねぇ、山の事を調べる役人だっているのにね…?」
不思議そうに答えるアナにクリストフは
「その時の女王様は、何だか心配そうな表情だった気がする。気にし過ぎかなぁ?」
「だと思うよ。今のエルサは戴冠式までのエルサとは違う。幸せな結婚をしてアンをもうけて、魔法だってちゃんと操れるようになったんだから。」
女王になるまで自由にエルサと会えなかったアナは、今は別の意味で中々エルサに会えなくても、家族の繋がりを強く感じられてとても幸せだったのです。
「そうだな。一緒に暮らしてるアナがそう思ってるのなら、きっと俺の考え過ぎだな。」
「そうよ、気にし過ぎ!」
アナとクリストフは顔を見合わせて大笑い。
アナは今の幸せがずっと続いて欲しい、いや、続いて行くと信じていました。

その時、突然雷鳴が轟いてお城に巨大な稲光が突き刺さりました。
「何っ?一体どうしたの!?」
「お城に大きな雷が落ちたんだ!行ってみようっ!!」
突然の事に何が何だか分からないアナに、クリストフが言いました。
「待ってっ、あの辺りはエルサたちの寝室がある所。エルサとアンが心配だわ!」
「よしっ、急ごう!」
二人は駆け出しました。


「一体、何が…?」
天井や壁が崩れて、明かりが消えてしまった寝室。
「そうだ、アンは?アンは何処なの?」
「ママっ、怖いよっ!一体どうしちゃったのっ?」
「良かった。アン、無事なのね。」
埃まみれになったエルサは、暗く足元が見えない中をアンのいるベッドに近づこうとしました。
と、その時頬に当たった冷たいもの…
「これは…雪?」
そして荒れ狂う吹雪が巻き起こり、突然現れた赤い目の魔物が恐ろしい声を発しました。
「魔法の匂いを嗅ぎつけてやって来たら、どうだこれはっ!お前の力も中々のものだが、そこにいる子供の中に眠る力はそれ以上ではないか!」
エルサはハッとしました。
「アンにも魔法が…。でも私のように幼い頃から発動してないから気づかなかった…」
「その子をいただいて行くぞ。我が願い、人間への復讐にそのちから(魔法)を使う為に!」
「イヤぁー!…」
その赤い眼に睨まれたアンは恐ろしさのあまり気を失ってしまいました。
それでもエルサはアンを救う為に立ちはだかり、自分にできる精一杯の魔法を氷に変えてぶつけました。
一瞬にして凍りつく魔物。
しかしその氷を打ち砕き、恐ろしい唸り声を上げて歩み寄って来ます。
「何て怪物なの!」
そして歩み寄って来た魔物に吹き飛ばされ、崩れた壁に背中を激しくぶつけるエルサ!
魔物は振り返り、アンを捕まえようとしています。
「やめてぇー!アン、逃げてぇー!!」
その声を聞き振り向き様に放った魔物の魔法がエルサを捉え、体を凍らせていきます。
気を失ってるアンを抱きかかえ、魔物は恐ろしい雄叫びを放つと壁の穴から外に飛び出していきました。

その直後、灯を携え飛び込んできたアナとクリストフ。
「エルサっ!何て酷いことに!!」
「ダメだ、女王様の体はどんどん凍っていくっ!」
何もできない二人にエルサが言います。
「アンが魔物にさらわれて…。お願い、アンを助けて。」
「でも、どうやったら?私には魔法なんて使えないっ!」
だんだん意識が遠のくエルサは、か細い声でアナに伝えます。
「アナ、10年前に私を救ってくれたあなたたちなら…もし、困った時にはこの子を。魔法が使えないあなたでも、持っておける…この子は、私たちの思い出が元だから…さ、手を取って…」
冷たくなっていくエルサの左手が淡く白く光ってます。
アナがその手を取るとエルサは囁く(ささやく)ように歌います。
「♪ 雪だるま作ろう、雪だるま作ろ…」
エルサの手からアナの手に光が伝わっていきます。
「これは…オラフねっ!」
驚いてエルサを見つめるアナ。
「アンと王国をお願い…」
まつげの先の小さな涙が凍った瞬間、エルサの体は全て凍りついてしまいました。
「エルサ、きっとみんなを元通りにするから…」
 …
「国中凍りついて、エルサの氷の城が復活してるっ!」
しばらくして空が薄明るくなってきた頃、壁の穴から外を見ていたクリストフが驚きの声を上げました。
「何で氷の城が…もしかして、アンはあそこに連れて行かれたんだわ。」

再び凍りついた王国と立ち塞がるようにそびえ立つ氷の城。
そして厚い雪雲がアナとクリストフを押しつぶすようでした。

続く🪄✨✨✨

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