【映画】「レオン 完全版」感想・レビュー・解説

いやー、これはメチャクチャ良かったなぁ。「名作」だっていうぐらいの情報しか知らずに観に行ったけど、メチャクチャ良かった。

とにかく、ナタリー・ポートマンの存在感が圧倒的だった。凄いもんだ。映画を観た後でちょっと調べてみたけど、監督のリュック・ベッソンがセクハラで訴えられてたり、「レオン」の中のシーンも、「不適切な描写がある」と物議を醸しているそうだ。まあ確かに、「不適切な描写」と言われれば、まあそうだろうなぁ、という部分はある。だから、「ナタリー・ポートマンが凄く良かった」みたいなことはちょっと言いにくい感じもしているんだけど、しかしやっぱり「良かった」としか言いようがない。

こう、なんというのか、「12、3歳のナタリー・ポートマンをどう扱ったのか」みたいなところはまた別途議論されるとして、僕は、「映画で描かれているマチルダ」に焦点を当てて捉えてみれば、「自分の持てる”武器”を使って気を惹くしかなかった」という感じに捉えている。なにせマチルダは、冒頭からなかなか絶望的な状況に置かれるのだ。頼れる人間は、よく知らない目の前の中年男性だけ。「生き抜くためにどうすべきか」というマチルダの生存戦略こそが、マチルダの様々な振る舞いとして描かれているのだと思う。さらに、映画の展開を素直に信じるなら、「マチルダはレオンに恋心を抱くようになった」わけだ。であればなおさらだろう。

まあもちろんそこには、「女優ナタリー・ポートマンをどう扱うか」という問題が不可分なわけで、単純には考え難いが、「マチルダの言動」という意味で考えれば、映画での描かれ方は「おかしい」と言うほどではないように感じる。まあ、これは僕が男だからそう感じるのかもしれないが。

この映画はとにかく、「中年男性のレオンと、13歳のマチルダの間に『恋』は存在し得るのか」という部分がとにかく重要になっていく。なんというのか、「そう捉えなければ2人の関係性を上手く説明できないだろう」という展開になっていくのだ。しかし当然だが、普通に考えて「中年男性」と「13歳の少女」の間に恋など存在するはずもない。ただ、映画『レオン』では、とにかくその部分のリアリティをどうにかして高めようと様々な描かれ方がなされているし、少なくとも僕の感じ方では、「2人の間には『恋』が存在した」と受け取ってもいいだろうと感じさせるだけの物語になっていると感じる。

そして、そう感じさせる上で、とにかくナタリー・ポートマンの存在感が凄かったと言っていいと思う。映画の冒頭でタバコを吸っているので、正直映画を観終えて調べるまで、マチルダの設定が何歳なのか知らなかったのだけど、劇中でマチルダが「18歳」と嘘をつくシーンがあり、さすがにそれはないと分かる。まあでも、13歳だとは思わなかったが、とにかく普通に考えれば、メチャクチャ子どもでしかない。

しかし、ナタリー・ポートマン演じるマチルダは、とても大人びた存在でもある。子どもっぽくはしゃぐ場面での子どもっぽさもちゃんとありつつ、同時に、大人びた振る舞いもちゃんと様になっているのだ。このバランスはそうそう成り立たないと思うのだけど、この『レオン』という映画は、それが両立させられないと成立しない物語なのだ。

そしてそれを、ナタリー・ポートマンが見事の演じている。

特に印象的だったのは、「私が賭けに勝ったら……」というシーン。「子ども」だと思って観ていたら、どうしたって「真剣さ」が生まれないシーンだ。しかしマチルダはここで、凄まじい「大人感」を出してレオンを、そして観客も圧倒する。レオンとしても、「本気だ」と分かっていたからこそのあの行動なのだし、それはまさに、マチルダのことを「子ども」とは見ていなかった証だろう。まあ、「殺しの技術を教える」という決断をした時点で既に子ども扱いは止めたのかもしれないけど、それにしても、とても印象的なシーンだった。

とにかく、「ナタリー・ポートマンが凄い」に尽きる映画である。

そして、マチルダだと関わり続けるレオンの方も、なかなか難しい役どころだろう。「明らかに幼い女の子」でしかないマチルダに、殺しの技術を教えなきゃいけないし、愛の告白はされるし、色々と相手しなければならないのだ。さらに、そんなマチルダと「心が通じ合う」みたいな状態をリアルに感じさせなければならないのだ。

メチャクチャ難しいだろう。しかし、そんな難役を、見事に演じている。

あと、なんやかんやストーリーの展開も良くて、「おいおい、そういう設定なのかよ」みたいな展開もあったので、そう感じたような部分はなるべくネタバレにならないように書くつもりだが、「どう見ても、気が狂ったヤバい組織のボスだろう」と思ってた役を演じてた人(これがゲイリー・オールドマンなのかな)が大変良かった。何をしでかすか分からない感じとか、「ってか、その立場であの振る舞いかよ」っていうイカれっぷりとか、とてもいい。役の設定的にも、この人物がいなかったらレオンもマチルダも追い詰められることはなかったわけで、そういう意味でも重要な役どころと言えるだろう。

映画のラストは、「やっぱりそうなるかー」という感じで終わってしまったのだけど、しかし、特に「おぉ、そうやって脱出するのか」みたいな展開が見事で、最後の最後までハラハラさせられた。

いやーしかし、ホント、ナタリー・ポートマンが何よりも凄まじく素晴らしかった。

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