さて、この映画を観ようと思った理由はただ1つ、青木柚が出ているからだ。『サクリファイス』でその存在を知り、『うみべの女の子』『MINAMATA』と、見る度に違う顔を見せる青木柚には、密かに注目している。というわけで、「実話を基にした話だ」という点は、映画を観終えた今知った。なるほど、だからエンドロール中に、あんなフレーズが表示されたのか。

映画全体としては、「もうちょっと何かあっても良かったかな」という感じはしたが、やはり青木柚は良かったなと思う。今作では、「だらしないクズ」を演じているのだけど、そういう雰囲気も絶妙に醸し出していると思う。やっぱり上手いな、青木柚。

物語は、「まなみちゃん」の結婚式当日の朝から始まる。主人公の「ボク」は、高校1年制でまなみちゃんと出会ってからずっと、彼女のことが好きだった。しかし「ボク」は、その時々でテキトーに彼女と付き合ったり、色んな女性に手を出したり、だらしなく生きている。まなみちゃんには事あるごとに「結婚しよう」と言ってみるものの、「どうせ本気じゃないでしょ」と毎回あしらわれてしまう。
高校時代の器械体操部、バカばっかりやっている仲間との日々、付き合っている相手を大事に出来ない「ボク」、まなみちゃんには他の女子のようにテキトーな扱いが出来ない「ボク」、高校卒業後別々の進路を取る2人、そして先輩に起こった出来事。
その時々で、「ボク」もまなみちゃんも状況が変わっていく。そしてそれは、静かに広がる距離として2人を引き離していき……。

主人公の「ボク」が、なかなか共感を寄せ付けないタイプに思うので、その辺りで受け取り方が大分分かれそうな気がする。「ボク」みたいな人が好きな女性もいるだろうし、逆の人もいるだろう。僕は「友人だったら？」と考えると、やっぱりちょっと嫌かもなぁ、と思う。生活全般のだらしなさと違って、何故か器械体操部での練習はメチャクチャ真面目にやってたのが謎だったけど、個人的には「あんまり関わりたくないタイプだなぁ」と思う。

さて一方で、そんな「ボク」と、付かず離れずの距離感で接するまなみちゃんは、なかなか魅力的だ。メールアドレスを最初に交換した時、「猿語で連絡して」と言うなど、まともっぽくて同時に変わっているという雰囲気を上手く滲ませる。「ボク」のことを絶妙に上手くあしらいつつ、まなみちゃんは「真っ当」へと向かって進んでいく。「だらしない」に留まる「ボク」とは、その差が大きく開いていく感じになる。

「ボク」はその時々で色んな女性と関わりを持つのだけど、その中でも、「くろけいちゃん」はなかなか良かった。略歴を見て、「『死刑にいたる病』に出てた人か」と思った。

冒頭でも書いた通り、「もうちょっと何かあってほしかった」と思うのだけど、監督の実話だとしたら、実話をなるべくそのまま描きたかったみたいなこともきっとあるのだろう。決してキラキラしているとは言い難い青春だけど、だからこそ「みんなの物語」として受け取れるようにも思う。