【映画】「ザ・スクエア 思いやりの聖域」感想・レビュー・解説

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いやはや、まったく理解できない映画だった。2017年のパルムドール(確かこれ、今年是枝監督の「万引き家族」が獲ったやつだよなぁ)受賞らしいんだけど、正直、マジで、なんのこっちゃさっぱり理解できない映画だった。びっくり。

一応内容を紹介しよう。
現代美術を扱う王立美術館のチーフ・キュレーターであるクリスティアンは、「ザ・スクエア」という展示を企画した。スウェーデン人の社会学者が作ったもので、物理的な展示物としては、地面を四角で囲っただけ。そこは【信頼と思いやりの聖域です。この中では誰でも平等の権利と義務を有します】という空間だ。
その宣伝の打ち合わせの会議の朝、クリスティアンは出勤途中でスマホと財布をスられてしまう。GPSでスマホの在り処まではわかったが、集合住宅の部屋番号まで分からない。そこで部下と共に、「君が盗んだことはわかってるんだ」という脅迫状を作成し、全戸に入れることにした。
やがて彼のスマホと財布は戻ってきたが…。
というような話です。

映画を見ながら思ったのは、僕にはこの映画を見るための前提知識が欠けているんじゃないか、ということ。恐らくこの映画はスウェーデンの映画なんだと思うんだけど、北欧は人権とか平等とかの感覚が日本よりも優れている感じがするから、たぶんその辺の感覚で、北欧では(あるいは欧米では)共有されているけど、日本人が遅れている(あるいは僕が遅れている)感覚、みたいなものがちょっと前提になっているんじゃないかと思いました。そう考えないと理解できないくらい、僕には何が描かれているのか分からない映画でした。

僕に理解できたのは、「自分のことしか考えていない現代人を風刺しているんだろう」ということです。クリスティアンがまさにその筆頭ですが、この映画に出てくる人たちは、割と皆、自分のことしか考えていません。それはある意味で、現代社会らしさみたいなもので、誰もが自己愛の強い世界で生きている。「自分さえよければいい」という、トランプ大統領が掲げるような感覚を、実は無意識の内に多くの人が持っていて、自分ではそうとは気づかずに周囲に撒き散らしている。「ザ・スクエア」という展示によって「思いやり」を主張したいクリスティアン自身が、まさにそういう利己的な行動をしている、という描き方をすることで、そういう社会を風刺したいんだろう、という感じはしました。

映画を見て、昔心理学の本で読んだある事件のことを思い出しました。確かアメリカだったと思います。ある夜、住宅が密集するような地域で女性が襲われました。女性は「助けて!」と何度も叫びましたが、結局誰も助けには来ず、女性は死亡しました。後日警察が調べると、その夜30人弱(だったと思う)の人が、彼女の「助けて!」という叫び声を聞いていたことが分かりました。彼らに、何故助けに行かなかったのか、と聞くと、「誰かが助けると思った」と返したと言います。こういう集団心理みたいなものには、忘れちゃったけどちゃんとした名前がついていて、それはこの事件をきっかけにして研究がなされた、というようなことが書かれていたと思います。


この映画にも、似たような場面が出てきます。その時のクリスティアンの行動原理は、そういう「誰かが助けると思った」的なものに近いのかもしれませんけど、それにしても、ちょっと意味不明だなと思いました。

猿が出てきたり、猿っぽい人が出てきたりしましたが、それらもなんのこっちゃさっぱり理解できなかったし、他にも、断片的に色んな描写があるんですけど、それらがどう繋がっていくのか、僕にはまったく理解できませんでした。ちゃんと理解力のある人が見れば素晴らしい映画なのかもしれないけど、ちょっと僕にはさっぱり理解できない映画だったなぁ。

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