【映画】「ヨーロッパ新世紀」感想・レビュー・解説

面白くなかったわけではないけど、なんとも言えないなぁ、という感じの作品だった。まあこれは、僕が日本人だからかもしれないけど。いや、それは関係ないか。

もちろん、何が描かれているのかは分かる。移民問題やコミュニティ、居場所など、現代的な問題が扱われている。この映画で描かれている「排斥的」な考え方には、僕はあまり共感できないが、そういう考えを持つ人がいることも理解しているし、感情的には仕方ないのも分かる。そして、僕のような人間には「あまりにも些細」と感じられてしまうような出来事を発端に、村を揺るがす大騒動に発展していく過程は、なかなか興味深いものがあった。

ただ、僕には上手く理解できなかったことは、「村で起こるそのような騒動」と「主人公、そしてその息子」の関係である。正直、「主人公はこの物語になんか関係してた?」と感じてしまった。この点が上手く捉えきれなかったので、作品全体についても「よく分からない感」が強くなってしまったのだと思う。

物語は、通学途中の少年が森を歩いている最中「何かを見た」という場面から始まる。それが何なのかは分からないのだが、少年ルディはその日から喋れなくなってしまう。このルディが、主人公マティアスの息子なのだ。

このマティアスとルディ親子が、物語全体から浮いているような感じがした。正直、僕が捉えきれた物語を描くのであれば、マティアスとルディ親子の存在は要らないようにさえ思えてしまう。主人公なのに、その存在が物語全体に食い込んでいない感じがするのだ。

まあきっと、僕の捉え方が浅いのだろう。浅いと言えば、映画のラストシーンも、全然意味が分からなかった。何が「許して」なのかも分からないし、森にいた「奴ら」はなんなん?正直、「えっ、そこで終わるの!?」という感じで、なんのこっちゃという感じだった。

映画の冒頭、注意事項が表示される。なんと、字幕の色が「白・黄色・ピンク」の3色に分かれているのだ。舞台となるルーマニアのトランシルヴァニア地方は、ルーマニア語、ハンガリー語、英語、ドイツ語などが飛び交っており、言語によって字幕の色が分かれているのだ。本当に、ついさっきまでルーマニア語で話していたのに、別の人にはハンガリー語で話すみたいに、字幕の色がポンポン変わるので、その「言語のちゃんぽん感」がよく伝わる演出だった。そして、それだけ多言語であり、外部からの出稼ぎの人たちが多く集まる地で、「排斥的」な発想が生まれるというのもまた、皮肉的だろうと思う。

個人的には、ちょっとイマイチだったかなという作品だった。

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