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劇場の大スクリーンで観ることが出来て本当に良かった ドル3部作『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』【映画レビュー】



映画館では、見られないと思っていた作品を3本も観ることが出来ました。

何で今公開? マカロニウェスタン公開60周年記念だそうです。
TVで放映時に観ていますが、大スクリーンで、一つ一つの画を贅沢にじっくり味わい、映画館の音響に酔いしれました。

最初から3部作を意図して作られた作品ではないのですが、60年経って見ると、これは過去最高の3部作です。



『荒野の用心棒』 1965年公開


★★★★☆
鑑賞日:3月23日
劇 場:ミッドランドランドスクエアシネマ
監 督:セルジオ・レオーネ
出 演:クリント・イーストウッド、ジャン・マリア・ヴォロンテ
音 楽:エンニオ・モリコーネ

黒澤監督の時代劇「用心棒」を西部劇にリメイク。目深に被ったハット、無精ひげにシガーをくわえた正体不明のガンマンのキャラクターは、映画史上のアイコンとなり、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」PART2、3にも引用された。イーストウッドのクールな魅力が炸裂する第1弾。
メキシコ国境の町に一人の流れ者がやって来た。ジョーと名乗るそのガンマンは、町を牛耳る二大勢力、悪徳保安官バクスター一家と情無用の悪党ロホ一家を争わせ、一挙に共倒れさせようと画策する。   

出典:映画.com


赤と黒だけで表現されるチープな動くイラスト画にエンニオ・モリコーネのメロディー 口笛に哀愁ただようトランペット、迫力ある銃声が被さる。

オープニングからして、カッコイイ! !

確かに黒澤明監督の「用心棒」の筋書きを踏まえていますが、決してリメイクではありません。うろ覚えですが、黒澤監督の「用心棒」を丁寧になぞるシーンと「そうくるか!」と意表を突くシーンが交錯します。

ドライなジョーは、これまでのヒーロー像を覆したと言われています。残酷でギラギラとしたラモンも良い味を出しています。ジョーとラモンのコントラストは非常に分かりやすく、それゆえに大ヒットしたのだと思います。

黒澤監督の「用心棒」を見返したくなりました。ジョー役の三船敏郎とラモン役の仲代達矢という視点で見てみたい。どちらの負けず劣らずカッコ良い。

ラスト、酒場のおやじが吊るし首にされようとする瞬間、ダイナマイトが爆発し煙が立ちこめ、その煙の中から現れるジョーの登場の仕方、流れるモリコーネのミュージック 最高です。通常のセンスの向こうがわに行ってます。

『夕陽のガンマン』 1966年公開

★★★☆☆
鑑賞日:3月23日
劇 場:ミッドランドランドスクエアシネマ
監 督:セルジオ・レオーネ
出 演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリフ、
    ジャン・マリア・ヴォロンテ
音 楽:エンニオ・モリコーネ

イーストウッドの魅力が一段と際立ち、眼光鋭い新キャラクターを演じたリー・ヴァン・クリフの風格、悪役のジャン・マリア・ヴォロンテの個性がドラマを膨らませた第2弾。フラッシュバックとパンフォーカス撮影を駆使したレオーネ監督のスタイリッシュな演出が光る。
大悪党エル・インディオが脱獄し、1万ドルの賞金が懸けられた。インディオ一家を追う二人の賞金稼ぎ、若きモンコとモーティマー大佐は商売敵だったが、一家全員の賞金山分けを条件に手を組むことに。しかし大佐には別の目的があった。

出典:映画.com


色彩が鮮やか作品なので、青い空に白い建物のコントラストの美しさが4Kのクリアな画面に映えます。

すごいロングショットとものすごいクローズが交互に繰り返されます。イタリーやスペイン系の濃い顔のクローズアップは、迫力があります。大画面の半分にブーツのアップの構図はビックリしました。

ジャン・マリア・ヴォロンテの汗まみれの顔のアップが暑苦しく、おかしな回想シーンが、大芝居じみて面白かった。

この作品は、クリント・イーストウッドよりリー・ヴァン・クリフの方が魅力的です。序盤で乗っている汽車を止めて、貨車から馬を引き出し、逃げるお尋ね者をゆっくりした足取りで追いかけてライフルで狙撃する、クリーフの貫禄ある演技に引き込まれます。黒づくめでシルバーがかったベスト、ガンベルトもダンディーで渋いです。

ラストシーンでクリント・イーストウッドが死体を数えながら「こいつで5000ドル、7000ドル、こいつも死んだか、10000ドル」と足し算してゆくラストシーンがとっても魅力的です。この場面はTV放映のときはカットされていたと思います。


『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』 1967年公開


★★★★★
鑑賞日:3月30日
劇 場:ミッドランドランドスクエアシネマ
監 督:セルジオ・レオーネ
出 演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリフ、
    イーライ・ウォラック
音 楽:エンニオ・モリコーネ

レオーネ版「戦場にかける橋」ともえる3時間に及ぶ超大作。コメディ色が強まり、エキサイティングな見せ場もふんだんに盛り込まれた第3弾。
南北戦争下、賞金稼ぎのブロンディとお尋ね者のトゥコは、いかさまを仕組んでは巻き上げた賞金を山分けにしていた。ある時、瀕死の南軍兵士から軍資金20万ドルの隠し場所を訊き出した二人は、その地に向かう途中、運悪く北軍の捕虜に。そして捕虜収容所長のエンジェル・アイズもまた20万ドルの行方を追っていた。 

出典:映画.com


前2作の大ヒットを飛ばしたレオーネ監督が、たどり着いた予算100万ドル以上の超大作。
レオーネ監督のやりたかった事が余す事なく盛り込まれています。

スペイン兵をエキストラに数千人が画面を埋め尽くシーン。戦場かけた橋が大爆発シーン。美術、衣装、男の顔のシワなどイタリアン芸術のティールを堪能出来るシーン。

ストーリーは、豪快に進むのに数々のエピソードが丁寧に描かれる為、3時間に及ぶ作品になっています。でもそのエピソードの一つ一つが素晴らしくあきることがありません。

私のお気に入りは、イーライ・ウォラックと神父の兄に冷たい対応をされた後のイーストウッドとウォラックのシーンです。

ケンカ別れした兄の事を「兄貴は俺のことが好きなんだ、俺みたいな風来坊でも暖かいスープで迎えてくれる」とウォラックが言うと、すべてを見ていたイーストウッドは「食後には葉巻が一番だ」とだけ言って葉巻を渡します。葉巻を受け取り、一瞬視線を交わす2人、笑うウォラックとモリコーネの音楽。これだからレオーネは素晴らしい。

賞金稼ぎ、埋蔵金、南北戦争・・・様々な物語をかけめぐった後に、最後にたどりつく決着のシーン。
物語を全て飲み込んでしまった3人だけの空間。3人の超クローズアップと数千の墓が円形劇場のように並ぶザットヒル墓地の超ロングショットがカットバックされるモンタージュは映画芸術の極みです。

 (text by NARDAM)


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