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本日の「読了」──なんじゃこれがない

若狭徹『埴輪 古代の証言者たち』(角川ソフィア文庫 2022)

カラー写真が豊富なので、古墳フアンならずとも眺めて楽しい1冊。
 昨年は、東北の土偶に会いにも行ったし、諏訪のあたりのビーナス系も見た。
 埴輪もそれに劣らず楽しいのだが、なんか違う。
 なんだろう。
 一言でいえば「なんじゃこれ観」の有無。


土偶や同時代の土器の前に立った時に感じる「なんじゃこれ」が、埴輪にはない(※個人の感想です)。
 たしかに、「こういう家があった」「馬も牛もいて」「鷹狩もしていて」「武具もあり」「琴もあり」「機織り」といった往時の生活を再現するフィギュアだ。海を越えた大陸との交流も示す「異国の人」もいる。異国の人は、縄文土器の「異形」とは異なり、自己像があったうえの「他者像」だ。

埴輪が「王」の墳丘に飾られるものだということもあり、支配者「臭」がぬぐえない。
 自由な発想、造形は許されず、王の権威、治世を示すものがおおい。民の姿はない。
 残される歴史には、支配者の手(支配者側の視点)によるものが多く、埴輪はそれを裏付ける資料なのだ。副題に「証言者たち」とあるが、自ら積極的に望んだわけではなく、半ば証言することを強いられた「モノ」たちである。

この二つの時代のクレイクラフトを通して、この二つの社会・クニの比較文化や比較民俗誌・民族誌を書いたものがあれば読みたい。そして、せっかく、古墳の多い地域(埼玉・群馬)の近くに住んでいるのだから、復元された古墳群を訪ねてみようと思う。

[2023.2.16. ぶんろく]

#埴輪 #古墳  

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