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点つなぎ

カメラを触った記憶は、幼少期に家にあったコンパクトフィルムカメラだった。ファインダーの蓋をスライドさせて起動、ズームボタンを押すと伸び縮みするレンズ、暗さを感知してポップアップするフラッシュ、フィルムを巻き上げるモーター音。そんなメカっぽいギミックが面白くて、撮影よりもいじることを楽しんでいた。

一眼レフカメラを持っていた祖母は、学校行事ではいつも写真を撮ってくれていた。どのメーカーのカメラを使っていたのか覚えていないのは、あの頃は撮られることの方に興味があったからだと思う。

遠足には、「写ルンです」を持って出掛けていた。悪知恵を覚え始める中学生の頃は、フラッシュを焚く遊びばかりをしていた。(フラッシュを「入」にしてフラッシュ下の底面に衝撃を与え、シャッターを切らずに発光させる遊び。)

修学旅行には、写真屋さんが同行してくれて、集合写真やスナップ写真をたくさん撮ってくれた。旅行の後、たくさんの写真が廊下に貼り出され、自分の写っている写真に振られた番号を紙に記入し購入するシステムだった。大学生になるとデジタルカメラを持ち始めたから、体育祭や文化祭でも写真を撮っていた高校生の頃がフィルム写真のピークだった。

シャッターを切ることで、過ごしている時間に点を打つ。フィルムでは、デジタルよりも離れた点が打てる。距離のある点が繋がり、思いもしなかった絵が浮かび上がる。

点の周りに広がる波紋。フィルムで撮られた写真を見返すと、その前後の記憶も合わせて鮮明に蘇る。

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