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宮下奈都「スコーレNo.4」


この本との出会いは偶然ではないかもしれないと思わせてくれた本。

宮下奈都さんの本を読んだ時、作者プロフィールに代表作として書かれていた「スコーレNo.4」と言う本。さっそく図書館で文庫本を借り、今読んでいる本を読み終えたらそれを読むことにした。

月曜日、会社のパソコンでファイル整理を行なっていた時。
なんとなーく昔のメールを読んで、急に思い出したことがある。
前の社長の思いつきで「私の好きな本」というテーマでメールを書いたことがあった。名前順に、毎日誰かしらが自分の好きな本について発信していた。
仕事の顔しか知らない同僚や上司の文章を読むのは、意外に面白かったことを不意に思い出した。


私は何の本について書いたっけ。
ここ数年はめっきり読書から離れていたから、本を読んだ記憶もなかった。
気になって自分の名前でメール検索をかけると、出てきたのは、なんと、「スコーレNo.4」の感想!!
びっくりした。この本について書いたことを忘れていたし、メールを見ても読んだことを思い出せなかった。この時は図書館で借りたっけ、買ったっけ。もしかしたら実家の本棚に置いてあるのかもしれない。4年前の自分が感想を書いた本が、今、手元にある。メールの送信した日時を確認すると2018年、ということは入社して半年経った頃…。
なんだかタイムカプセルを開けたような気分だった。

そして、先日ようやく「スコーレNo.4」を読んだ。
あ、これやっぱり知ってる。読んだことある!
主人公が幼少期の頃の、朧げな記憶を回想するシーンを、私も朧げに覚えていた。

4年前の自分は、この小説を「やりたいことの分からない自分に重なった」「誰かを羨んでしまう気持ちがわかる」と感想に残していた。
就職活動をしていた私は、友達が大手企業に就職したと聞けば羨んだり、自分はこの業界に進んで良いのか自問自答を繰り返したり、ものすごーく悩んでいた。
だからこそ主人公が妹を羨む描写や、就職先でやりたいことがわからないまま日々を過ごすシーンに自分を重ね、心底共感したのだと思う。

読み終えた今、この小説で印象にのこった箇所はむしろその後のストーリー、
就職先で結婚相手と思える相手を見つけたところだった。
恋愛映画のような素敵な出会いに思わず照れたり、久しぶりにキュンとしたりした。

奥さんになっても、おかあさんになっても、ただの私の人生の一部じゃないか。

作中のクライマックスに出てくるこの一文に頷いた。
私は社会人になって結婚して、生活の中で、良いことも悪いこともあった。
小説のクライマックスに近付くにつれ、社会人になってからの経験を思い重ね、
うっかりスタバで泣きそうになった。(恥ずかしい)
頑なだった主人公は、自分を認めることができて、物語は終わる。
なんだか思わぬ形で読み手である私の成長や日常も認めてあげられた気がした。
昔の私と小説の捉え方が変わっている。気付いたら成長していた。
幸せだと思った。

まだわからないけれど、もう少し歳を重ねたら、今度は主人公の母親に気持ちを重ねるかもしれない。
この本と再会できたことが何かのご縁だとしか思えないのでした。

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