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「リビングと、トイレの間の廊下が怖い」

これは、暗闇が怖くなくなったら、もっと怖いものができたという話。


今小2の息子がもう少し小さかった時、
「トイレについてきて〜」と毎日言われてました。
理由を聞けば、トイレが怖いのではないといいます。

リビングとトイレの間の、ほんの短い廊下が怖いらしいのです。

そう言われて思い起こせば、私も子供時代、家に怖い場所があったなあと。それは実家の二階、当時寝ていた和室。

階段や廊下の電気はあらかじめつけられるのですが、和室は昔ながらの紐を引っ張るタイプの電灯で。部屋に入って紐を引き、灯りが着くまでの間の暗闇が怖かったのです。

家族がいる一階とは違う、冷えた二階の空気。
なにかが潜んでいる、ような気配。
灯りがつくまで毎回、心臓がバクバクしたものでした。

そんな自分がいつ、暗闇が平気になったのか?
考えてみると、ある体験に思い当たりました。

それは27年前のちょうど今頃に起きた、阪神淡路大震災。
あの時、兵庫県伊丹市にある築年数の古い実家は、壁に深い亀裂が走り、屋根瓦がずれた半壊状態になりました。

いつ崩れるか不安でしたが、避難先もなく、電気が消えて夜は真っ暗な家(というか街全体が暗闇でした)の中に、家族とネコで身を寄せ合うように過ごした記憶があります。

電気が復旧したのは、たしか1〜2週間くらい後だったか。


それまでの長い暗闇と、ぐちゃぐちゃになった家、道路に走る無数の亀裂から漂うガスの臭い。そして、絶え間なくやってくる余震。


そんな極限状態が、生存本能を呼び覚ましたのか。
あの時は恐怖というよりも、「ここでどう生き残るのか」だけを、ひたすら考えていた気がします。


それから、気づけば暗闇も、二階の冷えた空気も、全く気にならなくなっていました。
理由はおそらく、「もっと怖いものがある」と気づいたから。


今、同じような目に息子が合ったら、、、と考えると、別の意味でめちゃくちゃ怖いけれど。

明日来るかも、明後日くるかも…。
という心づもりだけは、毎日しておかなければ、、と思って過ごしています。


そして、ことあるごとに「暗闇より怖いもの」と、その時に起きたことについて、息子に話しておきたい。

怖いものがやってくる時期は、きっと、選ぶことが出来ないから。

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