国語教育関係者こそ、海外の(言語)教育を参照しよう!

私の指導教員の先生もよくおっしゃるのですが、国語教育に進むと、よほど意識しなければ国語以外の領域への関心が希薄になり、視野狭窄に陥ってしまいやすいです。今回は学部生の皆さんから教員の先生方まで、国語教育に携わりたい/現在進行形で携わっていらっしゃる全ての方々に向けて、「海外の言語・母語教育を学ぶことは楽しいぞ!」ということを、いくつかの手立てをご紹介しつつ申し上げてみたいと思います。


①海外の言語教育に関する英語論文/学術書を読む

こちらのフェーズでご紹介するのがResearchRabbit(要登録。無料)とERIC(登録不要)です。順番に見ていきましょう。

まずはResearchRabbitでキーワード検索をかけてみます。すると、下の添付画像のように、論文情報を掲載してくれるだけでなく、研究者間の関係性をマッピングしてくれます


論文情報だけでなく…
関連する研究者間のマッピングも!!


Suggested Auhors(おすすめの研究者)も教えてくれたり、嬉しい機能が続々。


視覚的な機能性で言えば、このResearchRabbitがずば抜けています。日本の文系ではまだまだ認知度が低いので、今後の普及に期待します。

次に実際に記事をお読みになる段階で、おすすめしたいのがERICという教育学に特化した学術英語論文サイトです。こちらではPDFで全プレビューできる論文とそうでない論文が一緒くたに出てきます。前者の論文のみを表示させたい場合には、キーワード検索をかけた後、“Full text available in ERIC”にチェックマークを入れます。

さらにさらに、なんと海外の研究書がインターネット上で無料で読めるサイトが存在します。それがInternet Archive(要登録。無料←ここ重要)です。流石に最新のものまではアーカイブ化されていませんが、2000年代の著作物がポチッと借りれちゃいます(文系の領域であれば、20年ほど前であっても海外でホットなトピックとして議論されている場合が少なくありません。そこは理系の事情とは異なりますね)。このサービスを発見した時は、正直腰を抜かしました。
1時間という制限付きではありますが、またポチれば良いだけの話で手間はほぼ0です。「結構複数の論文で引用されているこの文献、どうにかして読まねば〜〜!!」というお悩みを即解決してくれます。今でこそ日本の文系のアーカイブ化は進んだ方ですが、ここまで太っ腹ではないですね。

文献整理法については、近々別記事にまとめてみたいと思います。

②海外の大学(院)のオンライン講座に参加する

論文は「学術成果」ですので、どうしても世に公表されるまでのタイムラグが生じてしまいます。リアルタイムで最新情報をキャッチアップするという意味では、海外の大学(院)のオンライン講座、もしくはオンライン勉強会に参加してみるのも手です。何より大学(院)生の方にとっては、論文の素材やメインテーマに設定できる可能性も大いにあり得ます。

オンデマンド型で、期間も1ヶ月内と比較的短期ですので、ご自身のペースで無理なく学習を進めることができますし、他受講生への質問・ディスカッションも24時間受け付けています。全講座修了後は修了証ももらえちゃいます(小さな業績になるのでメリットは大)。

私は修士1年の秋に、自大学院の支援制度を活用して、ハーバード教育大学院の教員向け講座に参加しました。最初はサポート金が用意されているのであれば活用できるぜラッキー⭐︎というやましい(?)感情で登録した側面も多分にありました(笑)
ですが、実際に参加してみるとやはり学びの質が格段に違いましたし、巡り巡って修士論文でさらに深く研究する契機にもなりました。

受講生(大部分は現役の先生方)のバックグラウンドも多様で、中には60の異なる言語を話す生徒を教えるLanguage  Arts(日本の国語科に相当)の先生もいらっしゃいました。私にとっては、現在の国語教室ではおよそ想定され得ないような(しかし未来には確実に到来する)環境で教えていらっしゃる先生と直接学び合える、絶好の機会となりました。

講座の種類にもよりますが、私が受講した際には日本円で3万3千円ほどでした。もし学習支援制度があるようでしたら、そちらを活用されると金銭面の負担も緩和されるかと思います。

※Professional Developmentをご参照ください。

ちなみに私が参加したCulturally Responsive Literature Instructionは、今年度も開講されるようですので、もしご興味があれば下記からどうぞ↓

Culturally Responsive Literature Instruction※期間:10/18-11/7

③国立国会図書館子ども図書館へ行ってみる(東京・関西限定)

こちらは東京・関西圏の方のみになってしまいますが、海外の児童書や児童文学研究書、多文化教育研究書を渉猟したい方にとってのサンクチュアリーです。何泊か泊まりがけで行ったとしても、相当の価値があります。

海外の研究書の購入費は、日本のそれと比較するとばかになりません(万超えが普通です)。研究費が支給されている場合を除いては、収集の工夫が必要になります。

国立国会図書館のブランチですが、専用のカードがなくとも、当日利用者として入館可能です。


もし遠方の方であっても、こちらの図書館から近隣の図書館へ取り寄せ可能ですので、一度ご覧になってみると面白いかと思います。

いかがでしたでしょうか。意外と探せば色々と芋蔓式に出てくるもので、研究はやはり奥が深いです。海外の言語教育は、Language Artsのみならず第二言語教育や多文化教育と結びついていることがもはや当たり前と見なされており、そこも日本の国語教育が取り入れる余地のあるポイントかなと感じます。今後もお役に立てそうなツールがあれば随時投稿していきたいなと思っております。


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