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アンジー。tríocha

にーちゃんは何考えてんのかなあ、
ショーンはそう言うとため息をついた。母さんはさ、事故の時に、目を覚ますまではにーちゃんから離れないって言ってからずーっとにーちゃんにべったりなんだけど、その気持ちはまあ、わかる。でも、にーちゃんはどうなのよ。俺たちといて幸せのなの?ここにきて喜んでるの、どうなのよ。
え、えーっと。そんなこと僕に聞かれてもさ。
アンジー、いやビーノは、家族のこと大好きなんだと僕には思えたけど。お父さんのこともいい人だって言ってたし、おみやげを何にしようか楽しそうに話してた。だから、ビーノはもっと早くからアイルランドに来てたんだと僕は、
はっ、父さんへのみやげってあのクソだっさいネクタイかよ、
ショーンは空を向いて口を大きくあけて笑った。
あとで見せる、すんごいネクタイだから。あ。議題が来た。
ビーノがこっちに来るのが見えた。議題は元気で機嫌がよさそうだ。
お昼もう食べたあ?デザート持って来たよー。
ありがとう。ビーノはごはん食べたの?
んー?んーとね、セジュと一緒に食べるって逃げてきた。
僕のサンドイッチ半分こする?
ケーキ食べるから大丈夫。昨日のローラのお手伝いのお礼だって。このチーズケーキおいしいんだよ?
切り分けたケーキが大きいの小さいのって二人の口喧嘩、答えがちゃんと出てるじゃないか。
このケーキ、アルコール入ってるね。
苦手?
と聞いたビーノの目が光った気がする。
早く食べないと取られちまうぞ。
慌てて食べたチーズケーキ、ほんわり広がったのはアルコールの香りだけじゃない。
秋の終わりの日差しとひんやりとした風。時折聞こえる羊の鳴き声。ケーキのかけらを頬にくっつけて笑ってるビーノ。
ショーン、ほら、大丈夫だよ。






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