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「中村俊輔選手の引退」について人材育成の立場から思ったこと

サッカーファンとしては悲しいニュースでした。

元日本代表、中村俊輔選手がついに引退。
いつかその時は来ると分かっていても、やっぱり寂しいものです。
(筆者は学生時代サッカー部でした)

ところで、たまたま見たyahooの記事にこのような言及がありました。

既にB級コーチライセンスを取得済み。将来はベンチで采配を振る姿が期待される。

現役を終えたスポーツ選手がその後は指導者の道を選ぶ。決して珍しくありません。プロ野球選手などもそのようにして第二の人生を充実させている人もたくさんいます。

現役を退いたら、その後はその経験を活かして指導者になる。

多くの皆さんはこのことを「自然」と思っているのではないでしょうか。しかし、これが「ビジネス」の世界になるとそうでもありません。

例えば(少し古い例であることを承知で)、かつてサラリーマンには定年退職があありました。もちろん今もその制度はありますが、正直に申し上げて「そういう時代は終わった」と申し上げてもいいでしょう。

定年退職とは、つまり現役を終えて引退することに他なりません。サッカー選手がグランドに立つことを終えるのと同じように、会社員が会社に行くという人生を終えることです。しかしそれを終えた会社員たちの中でどれほどの人がこれからは後進の指導をするといった発想を持てる人がいたでしょうか。おそらくほとんどいなかったのではないでしょうか。(いたらごめんなさい) その証拠にこのような言葉(概念)が日本には存在します。あなたも聞いたことがあるでしょう。

定年退職後は悠々自適に生活する(何もしない)

もちろん何もしないで悠々自適でも構いません。しかし私が少しだけ問題にしたいのは、ごく一般的なはたらく人たちにおいて「自分のセカンドキャリアとして育成という活動を選ぶ」という発想そのものがないに等しいという現実です。

ビジネスの世界で結果を出した人。優れた能力と経験を持っている人。素晴らしいと思います。心から素晴らしい。だからこそそんな人たちにはぜひ「引退後」の自分に思いを馳せるとき、その尊い能力や経験を使って「育成」という選択肢もあることを(せめて)認識はしていただけたら嬉しいなと思うのです。

ビジネス数学教育家として、ビジネス人の育成を10年以上やってきました。数字に強いビジネスパーソンを育成すること。データ思考や問題解決ができる組織に変わること。そんなテーマでビジネス人の教育をしています。

そんな中で感じたことは、「優れた実務家などがもっと育成というテーマでも活動してくれたら」という想いです。勉強している人。結果を出した人。たくさんいます。本当にたくさんいます。しかし私が想定しているよりはるかに「それを指導する(できる)人が少ない」と気付いてしまいました。

※だから私は自分の専門分野におけるインストラクター制度を設立しているわけですが。(宣伝のつもりはありません)


現役時代に優秀だった人はたくさんいる。
けれど、引退後に指導者の道を選ぶ人は少ない。

いったいなぜなのか、私なりに考えてみました。その答えを論じてみることにします。もう少しでこの記事も終わりです。ここまで読み進めていただいたのであれば、ぜひ最後まで。

説明のためのキーワードはこちらです。

「恩返し」

たとえばサッカー選手などは引退後もサッカーに関わったり、指導者として第二の人生を歩むケースが圧倒的に多いでしょう。その理由の一つに「サッカーが好きだから」「サッカーしかやってこなかったから」「他にやりたいことが思いつかないから」という現実的な理由があることは確かです。

しかしもっと本質的なところで、その選択をする理由があるように思います。それが、「ここまで自分を育ててくれたサッカーに対する恩返しがしたい」という感情です。実際、そのようなコメントをするアスリートのインタビューを何度かテレビなどで観た記憶もあります。

教育者として私のことを少しだけ述べると、かつて学生時代は(ほぼ)数学しか勉強しない学生でした。ですから大袈裟ではなく、私の「考える」「話す」といった基本動作(なんなら「生きる」ということすら)はすべて数学から学んでいます。そして50代が少しずつ近づいてきた年齢になって、それは悪くなかったと思っています。今の私があるのは数学に出会えたおかげ。だからほんの少しでもいいので数学に恩返しがしたい。それも今の活動をしている理由の一端です。

では翻って、ビジネスパーソンはどうでしょうか。

「ここまで自分を育ててくれた◯◯という仕事(業界)に対する恩返しがしたい」といった感情を持つ人がどれくらいいるのでしょう。このような感情が増えない限り、残念ながら引退後に指導者の道を選ぶ人は増えていかないだろうと思っています。

解決策は・・・・ 私には分かりません(笑)

ただひとつ確かなことは、「いい仕事」ができた人なら、きっと「恩返しがしたい」という感情が芽生えるのではないかなとは思います。人間ですからね。ならば結局のところ、すべてのビジネスパーソンが「いい仕事」をする。これしかないのかもしれません。そういう意味で私はこれからもビジネス人の育成、彼らが成果を出すためのお手伝いを続けなければならないとも思います。

ちなみに、あなたはどう思いますか。
ビジネスの世界において、いい指導者が増えていく世の中とは。
ぜひご教示くださいませ。

最後に。

中村俊輔選手はなぜB級コーチライセンスを取得したのか、ぜひ聞いてみたいなと思います。あれだけの功績を残した選手です。もう何もしなくてもいいのではないでしょうか。なぜライセンスを取得し指導者を目指すのか。なぜ今から新しいことにチャレンジしようとするのか。もちろん聞くことなんてできませんが。

人材育成の立場からの独り言でした。
最後まで読んでくださった方に感謝します。



深沢真太郎
ビジネス数学教育家。 数字に強いビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、述べ1万人以上を指導してきた社会人教育のプロフェッショナル。日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。大手企業・プロ野球球団・トップアスリートなどの教育研修を手がけ、一部企業とはアドバイザリー契約を締結し人材開発のサポートを行っている。2018年に国内唯一のビジネス数学エグゼクティブインストラクター(公益財団法人日本数学検定協会認定)に就任し指導者ライセンス「ビジネス数学インストラクター制度」を設立。さらに2022年には人材育成に従事する人のための「ビジネス教育大学」を設立し教授として指導者育成に従事している。テレビ番組の監修やラジオ番組のニュースコメンテーターなどメディア出演も多数。著作は国内累計25万部超。実用書のほか作家として小説も発表しており、多くのビジネスパーソンに読まれている。
ビジネス教育大学教授
BMコンサルティング株式会社 代表取締役
一般社団法人日本ビジネス数学協会 代表理事
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
国内唯一のビジネス数学エグゼクティブインストラクター

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