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断熱性能は測定できる?

住宅の場合、気密性能は気密測定器で、換気性能は換気測定器風量測定器で測定することができます。
しかし、断熱性能は省エネ基準の外皮平均熱貫流率(UA値)暖冷房負荷などのシミュレーション(計算)で判断するだけで測定は行われません。
つまり断熱性能はあくまでも机上のもので、実際に建てた住宅の性能とは言えません。

施工が完璧なのであればシミュレーションに近い性能になるはずですが、住宅は現場で人の手で施工するものなので、常に完璧な施工が行われるという保証はありません。
たとえば、断熱材の厚さにむらがある、断熱材と柱の間にわずかなすき間がある、構造上図面とは異なる断熱厚さになってしまうなどの可能性は否定できません。

住宅は一生のうちで一番高い買い物と言われていて、誰もが欠陥住宅には住みたくないはずです。
そうであればシミュレーションだけでなく、測定をして実際に建てた住宅の施工をチェックしたいところです。
では、どうして断熱性能は測定されないのでしょうか
それは、現在のところ簡単に断熱性能を測定する方法が確立されていないからです。

けっこう前になると思いますが、熱損失係数(Q値)を測定する方法が研究されていたことがありました。
(現在も研究されている方はいらっしゃるかもしれません)
原理としては、住宅を暖房で温めて、暖房に使用したエネルギーと室温から断熱性能を計算で求めるという方法です。
断熱性能が低ければ室温を上げるために多くのエネルギーが必要になります。
その原理を利用して測定します。

ただし、この測定方法にはいくつかの問題があります。
まず、内外温度差がある方が精度が高くなりますので、温かい時期の測定は難しくなります。

測定するためには設定室温まで上げてから安定させ、住宅全体を同じ室温にしなければなりません。
通常の暖房器では住宅全体を同じ設定温度にすることは難しいですし、暖房エネルギーの測定も簡単ではありません。
そのため、専用の暖房システムが必要です。

また、日射が入ってしまうと日射による熱が発生してしまい、正しい暖房エネルギーを測定できません。
そのため、夜間だけ測定するか、または日射を遮って測定しなければなりません。

測定にも時間がかかります。
住宅は風などの影響で換気量が変化しますし、外気温度も常に変化しますので、設定温度を一定に保つのは簡単ではありません。
そのため、できるだけ長期間測定して、データが安定している箇所の分析を行う必要があります。

このように断熱性能の測定は非常に大がかりになりますので、一般的に測定を行うのは難しいのです。
そのため、現状ではシミュレーションで性能を判断するしかありません。

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