見出し画像

熱貫流率(U値)の計算方法

省エネ基準外皮平均熱貫流率(UA値)平均日射熱取得率(ηA値)を計算する場合は、各部位の熱貫流率(U値)を計算します。

今回は熱貫流率の計算方法についてご説明します。
熱貫流率は以下の手順で計算します。

熱伝導率(λ値)を調べる

熱伝導率は材料によって決まります。

ここでは例として断熱材のグラスウール断熱材16Kを計算していきます。
グラスウール断熱材16Kの熱伝導率は 0.045(W/mK)です。
熱伝導率の一覧は省エネルギー基準の解説書などで調べることができます。

熱抵抗(R値)を計算する

熱抵抗を計算するためには材料の熱伝導率と厚さが必要です。
厚さの単位はm(メートル)です。
熱抵抗の計算式は以下の通りです。
熱抵抗 = 厚さ ÷ 熱伝導率

断熱材の厚さが100mm(0.1m)としますと、熱抵抗の計算は以下のようになります。
0.1 ÷ 0.045 = 2.222(m2K/W)

熱抵抗計を計算する

材料の熱抵抗を計算したら、熱抵抗計を計算します。
熱抵抗計とは何でしょうか。
簡単に言いますと熱抵抗(R値)の合計です。
断熱材だけで考えますと、熱抵抗計は以下のようになります。
熱抵抗計 = 外気側表面熱伝達抵抗 + 断熱材の熱抵抗 + 室内側表面熱伝達抵抗

外気側表面熱伝達抵抗・室内側表面熱伝達抵抗は、条件により決まる定数です。
たとえば、外壁の場合は、外気側表面熱伝達抵抗は0.040、室内側表面熱伝達抵抗は0.110になります。
断熱材のような一つの材料だけでも、外気側と室内側の表面熱伝達抵抗を考慮しなければなりません。
そうしますと断熱材の熱抵抗計は以下のようになります
0.040 + 2.222(断熱材) + 0.110 = 2.372(m2K/W)

合板や内装材を考慮する

もし断熱材の他に合板や内装材などの層構成も考慮する場合は、断熱材の熱抵抗に合板の熱抵抗、内装材の熱抵抗を加算します。
0.040 + 0.075(合板)+ 2.222(断熱材)+ 0.054(内装材)+ 0.110 = 2.501(m2K/W)

合板や内装材を考慮すると、断熱材だけよりも若干断熱性能は高くなります。
(熱抵抗計が大きくなります)
ただ、その分計算量は増えます。
合板や内装材は断熱材と比較すると断熱性能が低いのと厚さも薄いので、考慮してもそれほど影響は大きくありません。
楽に計算したい場合は、合板や内装材はないものとして断熱材だけで計算するのも一つの方法です。

熱貫流率(U値)を計算する

断熱材の熱抵抗計がわかりましたので、熱貫流率を計算します。
熱貫流率の計算式は以下の通りです
熱貫流率 = 1 ÷ 熱抵抗計

断熱材の熱貫流率は以下のようになります。
1 ÷ 2.372 = 0.422(W/m2K)

充填断熱時の熱貫流率を計算する

熱貫流率の計算はここまででも大変ですが、充填断熱の場合はさらに計算が必要です。
充填断熱で断熱材を貫通する柱や梁など(木材熱橋)がある場合は、断熱材の熱貫流率と木部の熱貫流率を求めて平均熱貫流率を計算しなければなりません。

木部の熱貫流率を先程の断熱材同様に計算します。
(ここでは合板や内装材はないものとします)
木の熱伝導率:0.120
熱抵抗:0.1 ÷ 0.120 = 0.833
熱抵抗計: 0.040 + 0.833 + 0.110 = 0.983
熱貫流率: 1 ÷ 0.983 = 1.017

これで木部の熱貫流率が求められました。
柱や梁を一本ずつ計算する方法を詳細計算法と言います。
ただ詳細計算法は、柱などを一本ずつ計算することになりますので、計算量が非常に多くなるので通常は行われていません。

面積比率法で平均熱貫流率を計算する

一般的には充填断熱の柱などは面積比率法という方法で計算します。
面積比率法とは、断熱部と木部のそれぞれの熱貫流率を計算して、面積比で平均する方法です。
面積比率法で計算することで、柱などを一本ずつ拾う必要がなくなり、外壁などを一つの面として計算できるため計算量を大幅に減らすことができます。

では、断熱材と木部の平均熱貫流率を計算してみましょう。
工法別の面積比率は以下を参照してください。

軸組構法の場合は、断熱部の面積比が83%、木部の面積比が17%です。
そうしますと、平均熱貫流率の計算は以下のようになります。
0.422(断熱部の熱貫流率)* 0.83 + 1.017(木部の熱貫流率)* 0.17 = 0.52(W/m2K)

これを外壁だけでなく、天井や床などの各部位の設計仕様ごとにすべて計算する必要があります。
そのため、熱貫流率(U値)の計算には時間がかかります。

詳細な計算方法についてご興味があれば以下をご参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?