応現寺(東鳴川観音講) 不空羂索観音

 案内板を見落として、柳生へ抜ける道からの曲がり角が分からず、2度程お寺の前を行ったり来たりしてしまいました。

 集会所のようなこじんまりした佇まいの小さなお寺です。月に一度、第一日曜にだけ公開されていて、観音講の当番の方が何人か交代で、拝観者のお世話をして下さっているようでした。

 重要文化財の大変貴重な仏様ですが、本当に、ごく近くから拝観させて頂きました。取り立てて飾り立てられることもなく、不空羂索観音様は、部屋の奥にいらっしゃいました。仏様は、三つの目でしっかりと拝観者を見据えておられました。不空羂索観音様なので、鹿革を両肩に掛けていらっしゃいますが、木で彫ったと思えぬほど、しなやかな布の軽やかな感じがして、素晴らしいと思いました。

 元は、興福寺南円堂の不空羂索観音様を真似て作られた仏様だそうですが、興福寺の不空羂索観音様がその後火災で焼失したので、今ではこちらがオリジナルなのかなと、観音講の方が話されていました。

 観音講の方が、本尊様がスイスにお出ましになられた時の話を、写真を見せて下さりながら、楽しそうに話してくださいました。
「日通さんが来て、こんなふうに、仏さんを包帯でぐるぐる巻きにして持っていったんだよ。」
「スイスだかフランスのなんとかいう名前の大臣だか館長さんが、うちの仏さんを指名してきたんだよ。こんな小さな寺のことよく知ってるねー。ワハハハハハー。」

 観音講の方々は月に一回の公開を、大変楽しんでおられるようでした。お茶やお菓子の接待をして下さりながら、初対面の私に、その他にもいろんなお話をして下さいました。
 
 話をしながら、時折、仏様の方へ行ってお線香に火をつけておられました。そんなお姿に、堅苦しさや、しかつめらしさは感じられず、仏様との関係がとても自然だなぁと思いました。

 しっかりとした信仰を持ち、それが自分の一部になっておられる方の清々しさが、その時の私には羨ましく思えました。

 余りの居心地の良さに、あっと言う間に時間が経っていました。まるで、龍宮城に行った浦島太郎になったような気分で、少しボーとなりながらお暇しました。

 乙姫様はいませんが、素晴らしい不空羂索観音様がいらっしゃいます。どうぞ、第一日曜日は応現寺へ是非お参りください。