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自意識とバンドTと私③2000年〜現在

バンドTを着る/着ない/着れないにまつわる自意識回顧録。

ガンズTシャツに始まる①はこちら

考えすぎてバンドT着れなかった90年代後半の話はこちら

②の最後にも書いたが、音楽フェス文化が活況を呈していくにしたがって、手に入るバンドTの種類も、着ていく場(フェス会場)も増えていく。

…と書き出してみたものの、2000~10年代末までバンドTを着ることもなく、フジロックやその他フェスに行ってもグッズ買ったことないんよな。いつ頃からそうなったのか、当初からそうだったのかはわからんが、フジのグッズ売り場の行列すごいなーとは思ってた。

②の追記でも少し触れたが、90年後半のエアジャムあった頃下北沢でPIZZA OF DEATHのTシャツ着てる人はよく見た。そしてロック・イン・ジャパン・フェスは2000年からとのことなので、邦楽ロックのバンドTが身近になり、ライブ・フェス参戦用のアイテムとしてだけではなく、普段着にもしていく流れはここから加速していったのだろうが、この辺りもあまり知らない界隈なので語れない。そしてライブ参加のことを参戦と呼ぶ奴恥ずかしい問題も散々Twitterで繰り返されたネタだ。音楽好きの自意識はいつの時代も面倒くさく、世代が変わるごとに同じことが繰り返されるのに、年寄りは何度もいっちょ噛みして蒸し返す。

さて話を戻すのと、このnoteは基本的に洋楽ロック系中心のバンドTの話をします。

2000年代からsupremeがバンドコラボTバンバンだしてたらしいが、どの層が買っていたのかもわからん。でもなんかその流れで、バンドTがファッションアイテムとしてイケてる!という風潮になったっぽい。合ってる?違ってたらごめんなさい。

確かにいつの頃からかジョイ・ディヴィジョンの「Unknown Pleasures」Tシャツ着るのがオシャレっぽいムードになってて、やたらよく見るようになって、まー映画もあったしなーでもそれにしても、と薄らぼんやり気にはなってた人もいたのではなかろうか。私はそうだった。

パロディTシャツも山ほどでるくらい定番デザインに

確か2000年代後半だったと思うが、職場の少し年下の男性がダニエル・ジョンストンのカエルTシャツを着ていたので、「今あれその辺で売ってるのかな?カート・コバーン流れから着てるのかな?ええい、ままよ!」と意を決して「ダニエル・ジョンストン好きなの?」と尋ねたら「い、いえ!すみません」と言われ気まずい空気が流れたので、それ以降よく知らない人のバンドTを見て声をかけることはやめた。これはコイツと喋るのめんどくせーと思われただけの可能性もかなり高いし、それを含めてもうやめようと思わされた。

そんで2010年代はユニクロのUTもバンバンバンドコラボT出し始めてsupremeとは比べものにならない安さだし、ますますバンドTは普段着として日常に浸透していった…とかの歴史も、詳しくないので今適当言った。

とはいえ、バンドTに興味が失せてた私も明確に覚えているユニクロコラボTがある。2010年のDomino Recordsコラボだ。

そのちょい前にもROUGH TRADEModular Recordsとコラボしててそういう流れはすでにあったのだが、このDomino Recordsコラボではザ・キルズのほかに、フォーテットマックス・ツンドラなどエレクトロニカ勢も入ってきていて、自分と同世代でバンドTから遠ざかっていたような人(俺もうロックとか聴かないから…とかいいがちだった)も、これが1000円以内で買えるなら…と手を出していたのを知っている。

for tetTシャツ。地色が微妙に白ではない。

私がこの時のDomino Recordsコラボが印象に残っているのは、パレス・ミュージックのTシャツが出たからだ。
ウィル・オールダム、ボニー”プリンス”ビリーなど多くの名義をもつミュージシャンの1996年発売のアルバム「Arise Therefore」のジャケがプリントされたTシャツがユニクロで売っている。1996年当時の自分には考えられなかった未来が来たな、と思った。
1996年なんてユニクロ自体もまだ方向転換する前の、レジの前で関西弁のおじちゃんおばちゃんが服を脱ぎだすCMやってた頃じゃないだろうか。

しかしなぜかVネック!そしてこの頃のTシャツは細身のつくりだったっぽい。

まぁアルバムが好きでもこのTシャツは別に欲しくないし買わなかったが。

このように、バンドT一般化の流れは加速していき、それに伴いバンドTが持つメッセージ性も薄くなっていく。
昔は、「帰省したらお母さんが俺のバンドT着ててウケる」というような田舎の無自覚おばさんがロックTシャツ着ているオモシロが通用したが、普通に80年代MTV世代がおばさんおじさんになっていき、90年代オルタナ世代もおじさんおばさんになっていき、子供にKISSやラモーンズTシャツ着せたりもし、日本全国にある大手チェーンで1000円程度で色んなジャンルのTシャツが売っている。
何歳がなんのバンドT着ててもさほど違和感がない時代になっていった。と私は感じている。

このようにバンドTをとりまく状況も変化し、駅ビルやデパートに買い物行ってもレディースのショップにどこかしらとのコラボらしいバンドTが、我バンドTなりという顔をせずに単なるデザインのひとつとして紛れ込んでいるのを目にすることも多くなってきた。そして自身も若者ではなくなったので、20歳前後の頃の理由でのバンドT着れない自意識は薄れていった。

が、20歳の頃とはまた別の意識、デザインはジャケットまんまなのにどこかしらとのコラボでやたら高いTシャツだけは絶対買わんぞ!という気持ちが芽生えていた。バンドTはそんな高いお金出して買うものではないという矜持。(という建前の貧乏性説もある)

バンドT着る期到来

えーと、なんやかやあったけど2017、8年の40歳過ぎた頃、新宿ルミネ内のレディースカジュアル系ショップで若者に見向きもされないまま余ってセールで半額になっていたソニックユースコラボのTシャツみて、その自分が好きだったものの雑な消費のされ方に悲しい気持ちになり「救うか…!」と立ち上がったのが私とバンドTとのリスタートとなったのであった。

それからアラフィフといえる年齢になった今も、似合う似合わないの問題はさておき、バンドT普段めっちゃ着るようなった。
さすがに知らんバンドのTシャツも平気で着れるほどの意識変化はなく好きなバンドの中からしか選ばないが、こだわり度の基準はかつての自分からみたらかなり緩い。

私がどういう変遷を経て何を思って今バンドTを着てるかなんて他人には知りようのないことだし、若い頃の自分が危惧したような、見る人の価値観でなにかを判断されるのは避けようのないことだと思う。

では一度、どういう風に思われる可能性があるか考えてみよう。

●40歳過ぎてバンドT痛い、ダサイ
→これは2018年に「40代女性はバンドTシャツ捨てろ」というのがバズったこともあるし散々こすられるネタだが、まぁ痛い・ダサイと思う人は思うだろう。私も基本的にはシワ・タルミが目立つ年寄り女が、UTとかの首の詰まった丸首プリントTシャツを着こなすのは難しいと思っている。ガチの古着やused加工されたものも、ヴィンテージな顔面に合わせると普通に貧乏臭くしょぼくれすぎる。これが痛い、ダサいと思う人がいるのは仕方ない。

●そのバンドが好きということをアピールしたいんだ、つまりそのバンドを好きな自分が好きってやつね、と思われる
→さすがに40過ぎた女がバンドT着てるのを見て、そのバンドを好きな自分が好きなのねって考える奴がいたらそっちの頭の方がヤバイだろう。

●バンドTが若者に流行ってるから、流行にのってどんなバンドかも知らずに着ちゃってる若ぶりたい人なのかな?
→こう思われる可能性は大いにある。実際大人女性向けファッション誌にもたいした説明もなくロックT(やたら高い)載ってるし。
また、もちろんバンドTが広く一般化した今の時代も知らないバンドTを着るのは絶対的に恥ずかしい教の過激派信者で、他人に対してもそれを求める者は根強く存在する。さらに視野が狭すぎると、こんな人間が自分が愛するこのバンドのファンなわけがない!何も知らずにデザインだけで着てるに違いない!と勝手に思い込む。そういう人に「おばさんが若者文化を真似て似合ってもないバンドTをよくわからないまま着ててダサいし恥ずかしいし見てられない」と憐れまれたらとしたら、すごく悲しいし怖いな。

●同じバンド好きな人にむけてアピールしたい構っておばさんかな?
→若い頃こう思われるのが本当に嫌だったけど、年取ってもやっぱり嫌だな。さらに、他人、とくに年下相手になにか言ってあげたほうがいいのだろうか?と気を遣わせてしまう可能性まである。これ考えるとバンドTに限らず趣味嗜好がでるTシャツなんかやっぱり着るのやめよう…と思えてくる。こういう根本的な気質は変わらないんな。でも日常的に若い時分に比べ人から構われることは圧倒的に少なくなり、構ってもらえることがありがたくなってきたのは事実。仕方ない。かまちょ〜。

●今はこだわりなくバンドT着る時代なのに昭和生まれは絶対好きなバンドしか着ないよな〜。その感覚古いんよな〜。
→知らないバンドT着る若者に直接説教でもしてるなら頭が古いと言われても仕方ないが、ただ自分が好きなバンドのTシャツ着てるだけでその感覚は今どきじゃないなんて小賢しげに言われても。

思いつくままあげてみたが、なんか書いてて思ったけど、②の時に書いた「自意識過剰だ、だれもお前の服なんか気にしてない」が響いてくる。
20歳前後の女の子と40代後半のおばば、世間の注目度が全然違う。まぁそう体感してきてるから、頓着なくバンドT着れるようになったんだけど。
とはいえ、人からこう思われるかもしれない可能性を妄想でこれだけ思いつけるのは、まだまだ私の自意識捨てたものじゃなかろう。全然頓着なくなってない。

そして今後また10年20年と経つ中で、自分とバンドTの関係性は変化していくだろう。と、〆っぽい雰囲気にして終わろうと思う。

次回、自意識とアイドルTと私
…というのは嘘で、これまた長くなりそうだしめんどくさいので現状書く予定はありませんがまた気が向いたら!


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