「女性の意識改革」を求めるのとともに「なんでそんな意識になっているの?」に思いを巡らせてほしいなぁ。

 「なぜ意思決定の場に女性が少ないか」の理由を「女性側の意識、意欲、能力の問題」で片づけてしまう企業の多さ、ひいてはその想像力のなさに驚く。そんな発想力でだいじょうぶ? イノベーションとか起こせる?

 なんで女性の意識、意欲、能力が求められるところに届かないかは、ざっと思いつくだけで以下。

・そもそも育休・産休・介護を女性に押し付けるのが当たり前の文化で、経営者や上司が離職リスクを減らすために女性の待遇を落としていることで、モチベーションを削っているのに無自覚なのに女性側に独力でのモチベーションを期待している

・そもそも育休・産休・介護を女性に(略)待遇を落としていることで、女性が主体で働き男性を補佐的な収入に位置付けることが困難

・そもそも育休・産休・介護を女性に(略)待遇を落とす一方で男性ばかりに仕事が行くせいで、家庭を大事にしたい男性の家庭参画が進まないので女性の無償労働の時間を減らせない

・そもそも育休・産休・介護を女性に押し付けるのが当たり前の文化で、リソースを仕事ばかりに割いていれば許される人と同じだけのリソースが割けない

・少しでも昇進するにつれ女性の比率が少なくなりマイノリティとなり、「これまで同質なものだけで居心地がよかったのに」という排他的な感情から、あるいは不慣れな存在として、異物として扱われ面倒がられる

・少しでも昇進するにつれ女性の比率が少なくなりマイノリティとなり、個人として見られない(集団の40%に達しないマイノリティは、個としてではなくその人の属するカテゴリで見られて、「バリキャリ女性だからこういうことを言う」というような偏見と闘うコストが発生する)

・ミソジニー、あるいは女性を下に見る文化が他より強い日本では部下がついてこないリスクが男性より高く評価に影響する

・医学部入試問題、賃金格差、無償労働比率などについて、下駄をはかせてもらっていることに無自覚あるいは頑として認めない存在

・男性が感情的になれば「情熱的」、女性が感情的になれば「これだから女性は」、などをはじめとした社会にはびこるアンコンシャスバイアス、ダブルスタンダードなどなど

・男性ばかりのコミュニティが女性のReproductive healthを決定しているせいで、またバイアスにより、ピルによるコントロールが他国と比べて極めて遅れていて、PMS・PMDD・月経困難症などの解決を助けず個人(女性)に押し付けることを是としていて、女性であるがゆえに毎月相当期間でパフォーマンスが阻害されている状況

・姓が変わって構築してきたキャリアや信頼関係が分断されるリスクの96%が女性側に負わされている現状


 ぱっと思いついただけでもこれだけあって、それでも、「女性の意欲の問題」なの? どちらかというと、経営陣側がトップダウンで切り込んだ方が話が早い。フラットな職場のために抜本的な意識改革をしたり、男性・女性ともに働きやすくしたり、過渡期においてはクォータ制などでマイノリティのバイアスから解放したり、いろいろ取れる手はある。

 だというのに、それを念頭にも登らせず「女性の意識」に原因を見ているのは、用意されている下駄を自分の力だけで勝ち得たと信じているかわいそうな勘違いが透けて見えて、残念に思えてしまった。

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