婚姻に伴う姓の変更への反発が、少し減った話。

 やはり、選択的夫婦別姓制度は一刻も早く採用されてほしい。選択肢があるだけで救われる人が数えきれないほどいると思う。

 ある結婚相談所の仲人さんは、「アンケートの結果男性側はあまりこだわりがなさそうだから女性側もさらっと『姓、どうする?』と言ってみては?」と言っていたが、私はこれを信用していない。アンケートは、「自分の姓がいい」「相手の姓でもいい」という聞き方ではなかった。「どちらかに合わせたい」「別姓でいたい」「特にないから相手や状況次第」で、最後のものが一番多いから、という理由で、「男性はあまりこだわりがない」と断じていた。

 本当にそうなら、一方の性に変更ダメージの96%が偏るはずがないし、家族がなにかを言ってきたときにそれでも貫くコストや当事者意識・危機感まで含めて「相手が望むなら全力を尽くして自分が姓の変更鵜を受け止める」ということでなければ、「こだわりがない」といえるはずもない。他方の姓に変更する際の感情的ダメージ、手続き的ダメージ、マイノリティ(今回の場合、男性が女性の姓に変える)の直面する偏見・外圧などをすべて描いたうえで、「自分の姓がいい」「相手の姓でもいい」のアンケートを、男女別で取って、そのうえで「相手の姓がいい」が多数だったら納得できる気がする。今はそもそも男女のスタートラインが違いすぎて比較ができない。


 私はおそらく普通の人より姓の変更への抵抗感が強い。おそらく、というのは、96%を超える女性が結婚に伴い男性側の姓に変更しているものの、実は大多数が強い抵抗感を持っていても表に出さないだけで、ものすごくポジティブに選択しているのは超少数派である可能性を踏まえての「おそらく」であって、間違いなく抵抗感は強い。

 別に生まれたときの姓が変わったものであって残したい、などというものではなく、単純に、「自分が納得していないのに変更させられる」という感覚に反発している跳ね返り状態だ。長いものに巻かれるというのが本当に苦手な気質をしている。

 マッチングアプリでも結婚相談サービスでも姓の変更・育休取得に当事者意識をもって考えられる人がいい、というのをプロフィールに書くまでの徹底ぶりで、「ぜったいに変えたくない」わけではないけれど、「腹落ちできなければ残念ながら現在の状況では事実婚もありうる」ということは今の彼にも伝えている(覚えているかは不明とはいえ)。


 そんな中、会社で一番の仲良しである後輩ちゃんに、彼の知人男性を紹介する、というイベントが発生した際、後輩ちゃんに私の彼の姓名が知れた。その際に後輩ちゃんから「結婚した場合の名前はどうなるんですか?」と聞かれて、前述のとおり闘う気満々の私は「まだ自分の姓を使い続けることをあきらめてないよ」というような(すでにあきらめがにじんだ)回答をしたのだけれど、ごくごく自然に、「でも(彼側の姓に私の名前という組み合わせ)って、カッコいいですね!」と言ってくれた。

 その言葉にそんなに深い意味はなかったのだろうけれど、私にとってはものすごく新鮮なコメントだった。ものすごく信頼している後輩ちゃんの言葉だったこともあり、ああ、そうなのか、と肩の力が抜けて、どちらでもいいのかもしれない、と思えた。

 たぶんそれは、後輩ちゃんの言葉のもとは「女性が姓を変更して男性側にそろえることが多いから」という現代の状況にあるとはいえ、男性側・女性側というわけではなく、対等な組み合わせの一例として、「その組み合わせ、いいですね!」と言ってくれたことが伝わってきたからだと思う。


 この言葉の有無にかかわらず「女性が男性側の姓に変えるのが普通でしょう?」と言われたら全力をもって反論する自信はあるけれど、今の彼はそういった人ではないことを信じているし、後輩ちゃんの言葉は、フラットに気持ちを前向きにさせてくれた。

 選択的夫婦別姓制度が一刻も早く施行されてほしい気持ちは変わらないけれど、それを待たないで結婚に向かってかじ取りをしていかれたらいいと思う。

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