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114 意地悪な顧問

部活の先生の困ったエピソードをよく聞きます。生徒は懇願するように「先生、おかしくないですか!?」という勢いです。一方で、顧問の先生の得意顔、「あいつ全然わかってないよな」という表情が想像できます。

この断絶に、果たしてどれくらいの先生が気づいているのでしょうか。

教室でそんな〈意地悪〉をしますか。正解がわからない、どう答えても間違いであるような質問。たぶん授業とか教室ではやらない、そういう〈意地悪〉です。

「おい、このコーンどういうつもりでここに置いたんや?」
「このライン、何か意味あるんか?」
「誰や、ここの机片付けたヤツ!」

教卓に大きなダンボールが置いてあるとしましょう。5時間目の授業で教室に入ったとき、そのダンボールを目にしたとき、どんな反応をするでしょうか。

「おいおい、なんやこれ。ここ置いたの、誰? これじゃ授業できひんやん」

たぶん、これくらいが想像の範囲です。

「誰じゃ! こんなとこにダンボール置いたのは! 邪魔やろが!」

グランドやコートではこんな言い方になります。何でしょう、この差は。

部活動の時間になると先生は権力者になります。そうして権威をかざし、それをカサにして暴君になるのです。それが激情型の場合もあるし、冷淡な暴君の場合も。要するに、自分の機嫌を子どもたちにとらせようとしているのです。「これくらいわからないのか」「気づかないのは意識が低い証拠」とか、勝手に価値づけて子どもたちの行動を断罪します。

「これも青春だ」と、半分冗談で生徒に話すことがあります。ちょっとこれは無茶だな、と思うようなこともあとから考えたらいい思い出になるよ。そういうときに僕はこんなことを口にします。

放課後、掃除のあとに生徒がふと愚痴をこぼすことがあります。教室で一人作業をしているときに、何気なく様子をうかがって話し込むこともあります。放課後の学校は本音の宝庫です。生徒がやっと生の声を出せる場です。僕はそんな風に思って、こういうときに漏れ出る声を大切にしてきました。指導したり、たしなめたりしません。なんなら一緒に盛り上がって、その子の言い分に聞き入ります。

「昨日、先生の機嫌が悪くてたいへんやったんです。」

機嫌? 教室でそんなことするの? 部活ならええのか?

いったい、いつになったら子どもたちは自分のやりたいことに集中できるのでしょうか。顧問の不機嫌に無理やり付き合わされて、引きつり笑いでやり過ごして。練習試合のときに突然どやされたり、必要以上に卑下されたりして。

ケチと意地悪は人間関係において障壁にしかなりません。それなのに、ね。

粛々と、僕はプロの仕事をしていきたいと思います。切実に。同時に、そういう大人を僕は絶対認めません。

たとえ、一定の結果を出しているとて。子どもたちは大人の道具ではないのです。

スギモト