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今、クール・ジャパンが熱い!(2013年8月『Quick Japan』109号)

普段ニュースを見ないあなたでも、「クール・ジャパン」って言葉くらいは知ってるだろう。そう、それ。経済産業省が打ち出したクリエイティブ産業の振興政策のこと。これまでの日本の基幹産業だった自動車とか家電が海外で弱くなってるから、その代わりになる日本文化に投資して産業育成します、ってヤツだ。佐藤可士和デザインのロゴが日本オリンピック委員会のエンブレムにそっくりだとか、一部で話題になったりもした。

このクール・ジャパンが予算五百億円を使って日本の文化を海外に売り込む戦略だと聞いて、ある誤解を持つ人たちが結構いる。誤解というのは、アニメやマンガなどのオタク文化を大々的に輸出する動きだと思ってしまうことだ。いや、もちろんそういう面もある。八〇年代には任天堂やセガなどのゲーム、九〇年代には『AKIRA』や『攻殻機動隊』などのアニメ、二〇〇〇年代には「JAPAN EXPO」などの総合イベントが海外で盛況で、それらを楽しむために日本語を勉強する向こうの若者も結構いる。海外でも脚光を浴びている日本文化の一つとして、オタク文化をもっと支援すべき、アニメーターの賃金を上げるべき、といった意見を否定するつもりはない。

でもクール・ジャパンはそれだけじゃないのだ。「じゃあなんだよ」ってことなんだけど、今年の経済産業委員会の国会議事録からクール・ジャパン関連の発言をちょっと抜粋してみよう。まずは生活の党のはたともこ議員の発言。

「日本が世界に誇る伝統医学である漢方も加えて、クール・ジャパンとして日本の国家戦略、成長戦略とすべきであると私は思います」(六月十一日)。

この人は日本薬剤師連盟の顧問である。次に民主党の近藤洋介議員。

「日本産のお酒を出す、海外に展開するということは、まさに日本そのものを売り込む大きな一つの柱になり得るのではないか」(五月二十四日)。

この人は日本酒の名産地である山形県の出身だ。

別の切り口としては日本維新の会の山之内毅委員。きゃりーぱみゅぱみゅが海外で人気だと紹介しつつ「例えば、彼女らのような方々に農産物を紹介してもらい、日本の伝統文化ともコラボレーションしてもらう」(五月三十一日)。

ちょっと抜粋しだけだけど、どうだろう。なんか、なんだか、少し想像と違うことになりそうな予感がしないだろうか。最近、日本がTPPに参加したら創作物の表現規制が強まるのではと懸念する声が強い。自分も「海外にアニメとかを売りたいはずなのに、なんで業界が萎縮するような政策を進めるんだろう」と、議事録を読む前は思っていた。でも別に彼らはマンガやアニメがダメそうなら他のものに予算を回すだけなのだ。うかうかしてたら、きゃりーぱみゅぱみゅが漢方や日本酒を海外でキャンペーンする日がくるかもしれない。それはそれで面白いか。

<!--以下2020年コメント-->

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