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キラキラの星を見つけたオオカミ

その時オオカミは星を見つけました。赤に金に、さまざまな色に輝く、大きな星です。

「なんてきれいな星だろう。」

オオカミはうっとりと星を見つめました。

自分もいつか、この星のようになりたい。

そうオオカミは心でつぶやきました。
それからオオカミは毎日星に会いにいくようになりました。


しばらくたち、オオカミは今日も星に会いにいきます。
しかし、今日の星はいつもとなんだかちがうように見えました。

毎日うっとり眺めていた金色の輝きは、いまはひどく高慢ちきに感じられ、いやなものに思われるのです。
オオカミは、星を見るたびに自分の心がチクチクしていることに気づくようになりました。

オオカミは星と自分を見比べて、悔しく、暗い気持ちになっていたのです。

「どうしたらあんなきれいになれるんだろう。あの星に比べて、僕はなんてちっぽけなんだろう。」

オオカミはついに星に会いにいくことをやめました。自分がみじめで仕方なかったのです。

「自分が恥ずかしくなるくらいなら、目を逸らそう。」

そう思ったオオカミは、星のもとから姿を消してしまいました。



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星と出会わなくなったオオカミは、まだ心の中をモヤモヤさせたままでした。

どうしたら星みたいになれるんだろう。
自分にはないものを星は持っているんだろうか。
だとしたら自分が努力したって無駄なんだ。
ああ恥ずかしい。消えてしまいたい。

そんな言葉を胸の内に繰り返すうちに、オオカミはふと自分の未来を見ました。

そこには星になれずに大人になった灰色の自分が、まだモンモンと同じ自問自答を繰り返している未来です。

「あの時わたしがもっと努力をしていたら、今ごろ星と同じように輝けていたかもしれない。でももう星にはなれない。
あいつのせいだ。星はわたしを挫くために、あの日姿を現したんだ。きっとそうだ。なんていやらしいやつ。ああいやだ。恥ずかしい。星を消したい。わたしを消したい。もうすべて消してしまいたい。」

オオカミは瞳の中に突然うつった未来の自分にゾッとしました。何十年後の自分も今と同じ思いに苦しみつづけ、挙げ句の果てには星に憎しみを抱くようになっていたのです。

「今、あの星に近づくことを諦めてしまったら、未来の自分の悲しさや苦しみは、もっともっと膨らんでいるに違いない。そしていつかきっと星を傷つけてしまうんだ。」

未来をのぞいたことで、オオカミは自分の心を探検することに決めました。あんな自分にはならないように、優しく、どんなに時間をかけても自分の心を見つめつづけたのです。

そうして、オオカミは大切な一つのことに気がつくことができました。

何もない自分だけれど、星の美しさに気がつくことができたのは、きっとすごいことなんじゃないか、と。

美しいものを美しいと思えること。憎しみではなく、純粋な心で相手を見つめることができるのは、実は大切なことなんじゃないか。
未来の自分は、そんな自分の長所を見失ったことで、憎悪に駆られてしまったのではないか、と。

それに気がついた時、オオカミはほんの少しだけ自分を好きになることができました。星とはちがう輝き方で、自分を生きることができると気づいたのです。

宇宙のような自分の心を泳いだ結果、ついにオオカミは自分の星を見つけることができました。

オオカミは久しぶりに星のもとをおとずれました。

星は、あいかわらず大きく美しく輝いています。
オオカミは星を見つめました。金色に輝く星に、自分が映っているのが見えます。顔があり、二つの目があり、真っ黒な瞳が見えます。

星に映ったオオカミの目の中には、一粒の砂のような星が、小さく煌めいて緑色にゆれていました。

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