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DFFT 白書発行! 国境を越えたデータ移転を推進するための制度的メカニズムが持つ可能性

グローバルに経済と社会を変容させてきたDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波。デジタル経済の恩恵を最大限発揮するためには、データが必要であると同時に、国境を越えてデータをシームレスに移動させる能力が必要です。

こうした認識のもとで、2019 年に「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の構想が打ち出され、提唱国の日本政府をはじめとしてグローバルかつ様々な業界のステークホルダーが DFFT の実現に向けて取り組んできました。

今回発行された白書「フラグメンテーションから 連携へ:国境を越えたデータ流通のための制度的メカニズムの創設に向けて」は、データに関する規制環境を焦点として課題を整理・評価した上で、DFFT の具体化を目指すための制度的メカニズムの確立を目指して官民の世界的リーダーに対して協調して行動することを呼びかけます。


白書のポイント

既存の規制環境の整理・評価

信頼に裏打ちされた越境データ流通は、経済や社会の基盤であり、新興国の個人や中所企業から、各国政府や企業に至るまで、すべての関係者に対して恩恵をもたらすはずです。

しかし、こうした利点にもかかわらず世界のデータをめぐる政策環境はますます複雑化・断片化しています。その結果、企業のコストが増加し、個人の力が奪われ、イノベーションが阻害されることで経済成長が妨げられてしまっています。

自由なデータ流通のために各国の規制の相互運用性を高めるためには、貿易協定と他国の法規制の承認という二つのメカニズムが利用されているものの、現状の活用は限定的なものにとどまっています。

世界経済フォーラムの白書「フラグメンテーションから連携へ: 国境を越えたデータ流通のための 制度的メカニズムの創設に向けて」参照


制度的メカニズムを通じた規制のフラグメンテーションの改善に向けて

規制のフラグメンテーション(断片化)を最小限に抑えるためには、各国の規制に関する裁量を維持しつつ、同時に相互運用をサポートできるようなグローバルなデータ政策環境を整えることが必要です。そのため、官民の多様なステークホルダーを巻き込んだ制度的メカニズムを確立することで、DFFT を具体化することへの関心が高まっています。

本白書では、G7 加盟国政府をはじめとする各国政府が、既存の国際的議論の場を補完する常設の制度的メカニズムを新たに構築することが提案されています。
メカニズムは政府高官に加え複数のステークホルダーのハイレベルな代表によって構築され、相互運用性を高めるための新しいアイデアや実用的な手段を検証する権限を持つことが想定されています。

参加者間の対話のチャンネルを生み出し、説明責任を果たすことで、国内規制に干渉することなく法域を越えたデータルールの相互運用をサポートすることに期待がかかります。

世界経済フォーラムの白書「フラグメンテーションから連携へ: 国境を越えたデータ流通のための 制度的メカニズムの創設に向けて」参照


終わりに

4 月 29 日、30 日には G7 群馬高崎デジタル・技術大臣会合が開催され、DFFT に関する議論も活発に行われました。その後発表された閣僚宣言においては、本白書内で提唱されている制度的メカニズム「相互運用のための制度的取り決め(Institutional Arrangement for Partnership:IAP)」の設立を承認する旨が発表されました。( 原文英語(PDF) / 仮訳(PDF) )

さらに、5月19日から21日に開催された、G7 広島サミットでもDFFT促進の重要性が改めて表明された上で、IAP設立が承認され、G7内外の協力に対する支持が強調されました。(原文英語(PDF / 仮訳(PDF) )

今後も DFFT の推進に向けた各国の動向に要注目です!

執筆:松下雄飛(世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター インターン)
企画・構成:中西友昭(世界経済フォーラム第四次産業革命センター フェロー)、工藤郁子(同日本センター プロジェクト戦略責任者)

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