お年賀と常連客と特殊部隊と

私は「あけましておめでとうございます」とは言わない。ひょっとしたら喪中の方もいるかもしれないから。「今年もよろしくおねがいします」は言う。
そして私は、行きつけのお店でお年賀は受け取らない。あえて、お年賀を配布し終えた頃に行く。お年賀を配ることで来た一見さんが、私の行きつけのお店のリピーターになればと思うから。お年賀のような販促物は、そういうお客様に渡るようにしたら良い。

さて、私の行きつけの銭湯と言えば、秀の湯。
年末に女将さんと話した時、女将さんは「駅からも遠いし、そんなに来ないわよ」と言っていたが、初湯は人が多い。その証拠に、今年(2022年)は19時にはお年賀がなくなっていた…と言っても、お年賀を配る数量はケチっていない。今年はタオルか石鹸を選べるようになっていて、お店に貼られたポスターには合計で確か400配ると書かれていた(証拠写真を取り忘れた…)。例年300だったと記憶しているので、「今年は多いな」と思っていた。なお、私はかれこれ最低でも20年は秀の湯の初湯に来ている(別に自慢するワケでも、常連ぶる気もないけど)。

特殊部隊?

その19時過ぎのこと。いつもよりも営業時間が長いせいか、超レアキャラな受付嬢が座っていた。

受付嬢という存在は、どことなくそそられるものがある。
確かにネットで検索すると、「受付嬢 ナンパ」とか「受付嬢 かわいい」みたいなのが候補に出てくる。結婚までの腰掛けとして受付嬢という仕事を選ぶ女性もいるらしい。

その受付嬢なのだが、この超レアキャラな受付嬢は、どうも勝手が違うようである。
まず、受話器を肩と耳の間に挟んでイレギュラーな営業時間を伝えている。そして電卓を見せながらコーヒー牛乳のお釣りを渡している。さらに、まさに今から帰る客にサウナのバンドを受付に返すようジェスチャーで示して受け取る。次の客には入浴券と引き換えで貸しロッカーの鍵を渡している。おまけに、膝の上には畳みかけのバスタオル。
これら全てが同時進行しているのである。想像できるだろうか。千手観音もびっくりではないだろうか。この受付嬢が美人かどうかはともかく、一般的な受付嬢のイメージとは大違いだと思う。

それが落ち着いたところで常連さんとおぼしきオジサマが、この受付嬢に「今日だけの特殊部隊?」と尋ねていた。受付嬢は照れ笑いしながら「だったりして」なんて冗談交じりに返している。
ひょっとして、このオジサマ、この受付嬢がお気に召したのかな…と思いつつ、なるほど「特殊部隊」とは言い得て妙である。「千手観音」というよりは、特殊部隊だな。その間も手はタオルを畳んでいる。

電話の向こうの人

ところで、先の電話なのだが…どうやら電話の向こう側の人は営業時間の他に「まだお年賀は配っていますか?」ということも尋ねていたらしい。おまけに「子供向けのお年賀を大人がもらうことはできるか」ということも尋ねているらしい。受付嬢が電話で「お子様向けのお年賀にも数に限りがございますし、まだお子様連れのお客様がお見えになっておりますので、大人の方には申し訳ありませんが、お年賀は品切れとさせて頂いております」と言っていた。
電話を掛ける人は、この受付嬢が特殊部隊としてのスキルを発揮しているとは思いもしないのだろう。この受付嬢だから受付の前にいるお客様は滞りなくさばけているけど、さすがにこの電話はないよなぁ。

確かに去年は、干支の石鹸がなくなった後、子供向けのお年賀を大人にも配っていた。
と、ここで私は、この電話の向こう側の人に色々な疑問を感じるのだった。

疑問と推測

この人は、何かをもらえないなら、来ないのだろうか。
去年のお年賀を知っているということは、去年もこんな電話を掛けていたのだろうか。
こんな具合にお年賀を配る日にしか来ない客は一見さんなのか、それでも常連さんとなるのか。
よその銭湯にも電話を掛けているのだろうか。
そもそも電話の向こうの人は、どんな人なのだろうか。戦時中の物のない時代に生きたご年配のおバアさんなら仕方ないという気もするが…。

こういう具合に疑問を挙げていくと、この電話の向こう側の人がどんな人かを想像してしまう。
まず、家の中はお年賀だったり商品のオマケだったりでゴチャゴチャしているのだろう。頭の中もとっ散らかっていると思う。そもそも他の人への迷惑なんてものに配慮ができない。これは勝手な推測だけど、こういう人は、風呂場でも周りの人への迷惑なんて、わからないんだろうな…。
こういう「変な客」が来るのは、嫌だな…。

効率的なお年賀の配り方

そんな疑問を感じた上で、改めてお年賀というものを考えると、「先着〇〇名にプレゼント」というのは、やめたほうがよろしいのかと。

では、先着順に配るのをやめるなら、どうやってお年賀を配るのが良いのか。
私が思いつくのは、いわば「予算方式」である。例えば受付嬢がそれぞれ一定数のお年賀(予算)を持っていて、それを自分がお気に入りの常連客に渡すというものである。
この方法だと「なんでさっきの人はもらっているんだ」「オレにもよこせ」という面倒な客が出てくることも想定できる。そこで、お年賀の引換券を年内に配ってしまう。常連は常連でも、迷惑な困った客には配らない。

ところで、この予算方式、かの特殊部隊の受付嬢は、どなたに渡すのだろう…。何だかお年賀がバレンタインのチョコみたいな感じになってしまうんですけど。いや、特殊部隊と命名した人とかにヤキモチは焼いていないです、はい。

お後がよろしいようで。

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