一期一会のホスピタリティ

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第13回松坂健さん

10月2日、『ホスピタリティの進化論』などを記しているサービスやホスピタリティの研究者で、元・跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授の松坂健さんから「ホスピタリティの本質とその効用」というテーマの話を伺った。

●ホスピタリティとは

 松坂さんの話のポイントは、デザインやイノベーションを考える時に重要なのは「ホスピタリティ」で、ホスピタリティは「一期一会」的に発揮されるという点だ。ホスピタリティにはマニュアルがなく、再現性もない、ということになる。松坂さんは、マニュアルの外にあるホスピタリティが、サービス産業にとって価値を発揮する鍵になるという。
 しかしホスピタリティが仕組み化できない場合、組織やチームにとって、ホスピタリティを持続的に発揮し続けることには、大きな問題がある。組織では1つのポジションで、人が入れ替わり立ち替わりになる。人が変われば、同じ状況に陥った時に、同じようなホスピタリティは発揮できない。そうなると、「前任者のホスピタリティに感銘を受けて、ロイヤリティが高まった」という顧客が、スタッフが変わってから再度サービスを受けた場合、以前より「サービスが悪くなったな」と感じ、逆に印象が悪くなることが予想できる。

●ホスピタリティの形式知化に挑戦するべき

 ホスピタリティとは、個人が持っている個性が、マニュアルを超え、ポジティブに発揮された状態である。組織にとっては、特定の人に固有のホスピタリティは武器・資産として計算しづらく、それを前提にサービス施策を考えることはできない。一方で、個人のホスピタリティを抑制し、マニュアルしか認めなければ、価値は向上せずイノベーションは起こらない。
 組織にとって望ましいのは、ある場面でホスピタリティが発揮され、それが組織やチームにとって有用と判断される場合、偶然に発揮されたホスピタリティを形式知にすることである。ホスピタリティを形式知にすればマニュアルをアップデートできる。これは個人の経験を知識に還元し、全体に共有、そして共有された知識の内省化を進める、というSECIモデルの流れと同じである。

#武蔵野美術大学 #クリエイティブリーダーシップコース #松坂健 #ホスピタリティ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?