伊藤緑

小説と散文詩と短歌と。 現在、別のサイトで発表していた作品をこちらへ移しているところです。 ツイッターはこちら→https://twitter.com/C__communis
固定されたノート

子どもを産んではいけない

一  出産というものに初めて違和感を覚えたのは、私が中学生の頃でした。あなたが産まれたときです。  風が吹けば田んぼに緑の波が立ち、昼間は蝉の声が、夜はクビキリ...

いけない人間

いけない人間になろう。そう決意してから、いったい何度、太陽が昇り、沈んだでしょうか。  うそをつきたかった。まじめな顔をして、そらっとぼけて、甘い蜜をちゅうちゅ...

手を挙げられない

ノートの上の左手に目玉を落としたら、指先が淡く震えていました。聞こえてくるのは、紙を踏むペンの足音と、白墨の跳ねる音。顔を上げれば、いくつもの丸まった背中と、た...

冷気

学校へいこうとドアを開ければ、冷たい空気が抱きついてきました。手が、ほっぺたが、太ももが、ひんやりしみて。だけど私は、手袋もマフラーもしていませんでした。ただ、...

おはじき

学校から帰ってきて、玄関の戸を開けようとしたら、庭のほうから硬い音がしました。敷居をまたぎ、ローファーを脱いで。ろうか伝いに音の残りをたどってみたら、縁側に妹が...

土偶

水を含んだ濃い茶の土へ、乾いた真白い砂をかけ、地面を掘っていたときです。  隣に誰かしゃがみ込み、この手に絡んだ深い色、冷たいねってつぶやいて。  敷衍という名...