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疑問『字幕の著作権はどうなっているのか』

【とあるコミュニティでの会話】
「Netflix(ネットフリックス)って字幕付与班みたいなのあるじゃないですか?アレはNetflix側で書き起こしてるという話をどこかの記事で読んだことあるんですが、地上波で字幕放送やってる作品の字幕データとは別に書き起こしてるんでしたっけ…」

A「字幕でも著作権発生するから保存できなくて破棄してるとかなんとかってどこかで聞いたことありますね」

「そういえば字幕の著作権ってどうなってるんだろう」

 私は、字幕が必要なユーザーゆえにあれこれと字幕について言ってきたものの、法的に字幕がどういう扱いになっているのかまではよく知りませんでした。

というわけで調べてみました。

●『著作権について』|社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
http://www.jyoubun-center.or.jp/video/copyright/

 よく”著作権”があるから使えないというけど、映画作品や放送番組も勝手に利用してはいけないの?

 はい。劇場用映画作品、放送番組などは『映画の著作物』といって、著作権法で保護されている著作物です。著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用すれば、著作権侵害という犯罪になります。無断で複製して販売したり、内容を勝手に変えてしまったりするのがこれにあたります。
ただし、例外的に無断利用できる場合もあります。「私的使用」や「教育」「福祉」「図書館」関係は、著作権者に許諾をもらわなくても利用できる場合があります。

 最近、著作権法がかわって、聴覚障害者のためならば、字幕作成や貸出用の字幕入り映像作成が自由にできるようになったと聞いたけど…

 「著作権法の一部を改正する法律」(2010年1月1日施行)で、①「聴覚障害者等のために音声を字幕や手話にすること(複製)など」や②「聴覚障害者等に貸出をするために字幕や手話を作成すること(複製)」について、著作権者の許諾なくできるようになりました。
ただし、いくつかの条件があり、行える者も政令で定められた者(主に)に限られています。①は聴覚障害者情報提供施設など、②は聴覚障害者情報提供施設と図書館などが認められています。また、②の場合は、著作権者に補償金を支払う義務があります。

 ここで【「著作権法の一部を改正する法律」(2010年1月1日施行)】にヒントがあることに気付きます。

▼著作権法について調べてみます。

 2010年1月1日に施行された著作権法の一部を改正する法律【障害者の情報利用の機会の確保】が含まれていたことがわかりました。

字幕について、

第三十七条の二
 (中略)
一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。

著作権法 第三十七条

 字幕もとい音声を文字にすること複製であると明記されています。

▼複製について調べてみます。

第二十一条
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

著作権法 第二十一条

●『複製権とは』|公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
https://jrrc.or.jp/educational/guide/outline/

複製権は、著作権に含まれる権利のひとつで、著作権法第21条で規定されています。
複製とは、作品を複写したり、録画・録音したり、印刷や写真にしたり、模写(書き写し)したりすること、そしてスキャナーなどにより電子的に読み取ること、また保管することなどを言います。
【第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。】
【第63条 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。】

 複製権は著作権に含まれる権利のひとつであることがわかります。

▼まとめ

 字幕を生成することは複製であり、著作権者の諸諾がなければ行うことができない(複製できない)

・Netflixなど第三者は複製権も含めてライセンス契約をしなければ字幕付与して配信をすることができない
・原則として字幕データそのものに著作権はないと考えられる(単なる字幕データは映画等のセリフを文字にしただけで、創作性が見られず著作権があるとは言えないため)

著作権法三十七条の対象事業者は『障害者等の福祉に関する事業を行う者』に限定されています。あくまでも福祉目的でないNetflixなど映像配信事業者は対象外です。


「そもそも字幕にすること自体が『複製』に当たるから無断で出来ないんですな」

B「結局ネトフリが字幕を作るには著作権の許諾が必要。著作権者が、第三者が複製品のデータを持ってるのを嫌って保管しない契約をしてるとかもありそう。」

A「字幕そのものが凄くめんどいものにみえてきたな」

B「ネトフリとかで字幕が付かないときは著作権者につついてみるのが一番早い説ある」

「アニメ制作会社よりも著作権者に問い合わせたほうが良さそうだ…」※

※アニメにおいては【製作委員会方式】と【単独出資方式】があり、製作委員会方式の場合はアニメ制作会社はあくまで受注した案件を納品する立場にあり、原則として作品の権利はアニメ制作会社でなく製作委員会にあるらしいぞ!









参考文献的なやつ

以下は、調べていた時に見つけたその他諸々です。参考までに。

・『著作権法 映画の字幕を独自に作成して公開した場合』|(弁理士のブログ) https://note.com/nkgk/n/neff18c9f7ed8

 著作物には、言語の著作物という区分があります。(中略)映画の著作権と、脚本等の著作権とは、別のものです。つまり、映画には、複数の著作権が含まれているということができます。
 したがって、映画からセリフや脚本を取り出して(切り離して)使う場合には、切り離した部分の著作権についても検討する必要があります。一方、映画作品全体として使う場合には、映画の著作権だけを考えれば良いと思われます。

著作権法 映画の字幕を独自に作成して公開した場合|弁理士NAKAGAKI_IP

・YouTubeの字幕は言語の著作物とみなされた判例

動画配信・閲覧サービスで動画の内容を紹介するテロップ(字幕)の文面をブログサイトに無断で転載する行為が、著作権の侵害に当たるかどうかが争われた発信者情報開示請求訴訟(以下、「本件」)で、大阪地裁は字幕を「言語の著作物」と認定し、著作権を侵害する判決を言い渡しました。
(中略)
裁判所は、つぎの1)〜3)を根拠に、本件テロップは、作成者である原告の思想及び感情を創作的に表現したものであるから「言語の著作物」に該当すると判示しました。

YouTubeの字幕は言語の著作物か?|たきざわ法律事務所


・手話や字幕を複製する場合、必要な翻案及び翻訳は認められる?

 第5号は,第 37 条の2(聴覚障害者等のための複製等)の利用について,併せて翻案及び翻訳による利用を認めるものである。想定されるケースとしては,手話により音声を複製する場合に翻案が生じることが考えられるほか,音声を字幕として複製する際に一部要約を行う場合等が考えられる。
 なお,平成 21 年の法改正以前は,同条ではリアルタイムでの字幕作成のみが認められていたため,翻訳による利用は事実上困難であったが,改正後はリアルタイム以外での字幕等の作成も可能となるため,第 37 条の視覚障害者等に係る権利制限規定による利用の場合と同様,翻訳利用についても認めることとしている。

「著作権法の一部を改正する法律」(2010年1月1日施行) 解説|文化庁

・著作権法第三十七条

…とは【障害者の情報利用の機会の確保】に関する法律であり、障害者に必要な形で著作物を利用できるようにする内容です。特に視覚・聴覚障害者情報提供施設や図書館などが著作権者の許諾なく複製できることについて触れています。解説がこちらの16~18ページにあります。

本条は,聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものが,聴覚障害者等向け に,①音声を字幕等により複製し,又は自動公衆送信すること,及び②貸出目的で映像に字幕等 を付して複製することを認めることとしたものである。

「著作権法の一部を改正する法律」(2010年1月1日施行) 解説|文化庁


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