見出し画像

【舞台裏】しまね探究フェスタ2021(MYPROJECT AWARD島根県Summit)

どんな1日だったのか、何が起きたのか疲れてすぐに言葉にできなかったのですが、ようやく書くことができました。 
しまね探究フェスタ2021、全体統括を今年させていただいた田中りえです。関係者の皆さん、本当にお世話になりました。

しまね探究フェスタ2021(開催レポートはこちら
2021年2月4日(金) #しまね探究の日(勝手に命名)

62プロジェクトの参加、高校生179人(34校)、教職員80人、そしてサポーター、ファシリテーター、サブファシリテーター、運営スタッフ70人。328人が一同に集まる場。さらに各校の教室や職員室や保護者のみなさんや関係者がYouTubeからの観覧。

noteに舞台裏を記録させていただくことで、今年のフェスタを振り返りたいと思います。
(文責 田中りえ/地域・教育魅力化プラットフォーム しまね事業 ディレクター)

しまね探究フェスタ2021

1.準備~設計編 

主催の県教育委員会と協議をスタートさせたのは6月頃。協議の結果、今年のテーマは「多様な学び&高校生同士の交流」としました。 

普通科も専門高校も、授業での取り組みも、学校外の取り組みも色々があるからこそ、島根の探究の面白さだよねと。 

また、フェスタは全国マイプロジェクトアワード島根県大会も兼ねています。昨年までは当日審査を行い、島根県代表を選出していたのですが、今年は「審査なし」としました。 

審査をして賞を決めると、分かりやすくロールモデルを参加者に共有することもできます。評価指標はあるとはいえ、選ばれたプロジェクトとそうじゃなきものがでてくる。審査をなくすことで、(競う、審査する、される緊張感もから解き放たれて)学び合いや交流がよりできるんじゃないか。県の担当者や全国事務局や社内のメンバーと相談しながら、決断をしました。 

2年ぶりの対面開催に向けて、初の県内2会場形式。より多くの高校からのエントリーを推奨していくために、全国アワードと県エントリーとフォームも2つに分けるなど、県教委や現場の先生やコーディネーターなどに意見を頂きながら実施要項を固めていきます。

2.探究の生態系 

高校生の発表をど真ん中に置きながらも、単なる発表会で終わらせたくない。私としても地域の伴走者や行政や企業やNPOや社会教育団体などともこの場を共有し、「探究の生態系」のうねりを作っていきたい想いがありました。 

探究の生態系とは、生徒らが学び続ける土壌が耕されていること。その為には生徒に関わる教員やコーディネーターも、高校生と関わる地域人材も含めて大人の土壌が豊かであることが大事。教育魅力化において、「学びの土壌」を耕すのは大きなテーマです。 

そのために、まず、事務局体制づくりに。コアメンバーとして、島根マイプロの場づくりに2018年から関わってくれている隠岐國学習センターの澤さんと。そして、島根大学の特任助教の原さん。 

県内の探究担当者向けの教職員研修や、コーディネーター研修も2人と一緒に取り組んでいたこともあり、フェスタもまず、3人をコアチームとしてスタートしました。 

3.バトンを渡すことと太陽エネルギー

以下は、8月の合宿のホワイトボードのメモです。 

・世代を繋ぐ若い世代を前にだす、出番をつくる
・中心核と放射層
爆発のエネルギーを期待する
(確実性だけではなく意外性や攻めの姿勢) 

太陽エネルギー

やや、抽象的ですが、過去の延長でコアメンバーがつくる場というより、裏方として場をささえ、次の世代にバトンを渡していく、そんなイメージを3人で持ちました。 

#非統一感 #流動性 #安心感 

もうひとつ、ホワイトボードの右端にメモされたキーワード。県単位で進めていくからこそ、統一性を持たせず、東部と西部の個性をだしていきたい。高校生のプロジェクト数や、教職員や大学生らや関わりは複雑になるし、流動的になる部分もありますが、だからこその「生態系」です。全体の調整は事務局が行い、攻めながらも安心感もつくっていきたいと話しました。 

4.広がり、関わりしろづくり 

コアメンバーとユタラボと

東部、西部開催に向けて、豊かな暮らしラボラトリーの代表檜垣さんや、若手社会人の豊富な人脈を持つ奈良井さん、各地域のコーディネーター、先生たち、卒業生達に声をかけながら、東部チーム、西部チーム、大学生チームの3つの形が出来上がってきました。 

卒業生チームの企画

マイプロ卒業生たちも、「ぜひ関わりたいです!」と言ってくれて定期的なミーティングや卒業生企画も考えてくれました。どんな関わりを大人がすることが大切なのか、など彼らの意見はとても貴重なアドバイスでした。

社会人も大学生にも言えることですが、役割を決めてから仲間を集めていくのか、仲間を集めてから役割を決めていくのか、そこは探り探りでした。相手によっては、役割は曖昧なまま「一緒にフェスタの場をつくりましょう、手伝って欲しい」と声をかけさせてもらいました。それが、結果として、コロナ感染拡大による開催形態の変更や、臨機応変な対応など関わる皆さんの経験を生かす場になったとも感じています。本当に感謝しています。 

5.エントリー〆切後の準備 

プロジェクトの提出締め切りは12月10日。速報値で過去最多の74のエントリー数。

県内全県立高校の参加へ

県から各校への働きかけもありますが、それでも全国エントリーの数も例年通りでした。 

1人でも多く発表の場をつくってあげたいという想いと、コロナ感染予防大作による会場定員と密を避ける参加人数の決定。発表数の調整を各学校にお願いしました。これは非常に心苦しい調整でした。 

私自身も久々の対面イベント設計、なおかつコロナ対応は、判断に迷うことだらけでした。そんなとき、澤さん、原さんの2人の意見は、何を大事にすれば良いか確認ができ、何度も助けられました。 

東部&西部チーム

西部チームも、ユタラボの代表の檜垣さんに加え、山崎さんもリーダー関わります。インターンの竹入さんも含め、会場設計やサポーターやファシリテーターの声かけや事前研修のミーティングも重ねます。 

生徒に届ける当日の配付資料、しおりやワークシート、メッセージカードなどの印刷準備に向けて年末年始を挟んで取りかかります。 

タスクが山積み、そんな年末年始です。
フェスタまであと、1ヶ月。 

準備物も着々と

6.オンライン開催へ変更 

年を明けて、島根県内でのオミクロン株による感染拡大が連日報道されるようになりました。

1月13日、対面実施からオンライン開催への変更を決定しました。 

対面での開催を残念がる声も多くありました。ただ、コロナ感染予防をしながら、対面会場での生徒同士の交流機会が作れるのか、生徒の声を会場内にも配信側にもクリアな声で拾えるかなど、解決できていない問題もありました。そのため、オンライン開催になったことで、高校生の交流もできるし、音声も声も確実に拾えると少し安心もしました。 

また、コアメンバー内の緊急会議では、開催1ヶ月を切る時期の大きな変更に関して「無理ない範囲でやろう」ではなく、「だからこそ、高校生のために、学びの質をあげよう、ギアをあげよう」と確認しあいました。

7.変えるものと変えないもの 

2会場で進めていたものをオンライン一会場にすることで、役割も変化させていく必要があります。特に、東部ー西部チームの役割の変更は、すぐに判断して動き出す必要がありました。難しい判断を一緒にしてくれたユタラボの檜垣さんには救われました。 

変更協議(1月13日~)
①第2部のプログラムをカット
東部と西部でそれぞれの地域性を出した「振り返りプログラム」は中止とし、プログラムは一つに統一。
②受付・司会や配信などは東部チームが担当。
③高校生の発表グループは、東西別にグループを分けていたがシャッフル
④サポーター&ファシリテーターの組み合わせは変えずに、東西別のグループを残す 

高校生をシャッフルするなら、サポーターやファシリテーターも東西シャッフルもあり得たかもしれません。ただ、場をつくる大人同士のチームは最大のポイントだと考えていたので、ユタラボの山崎さんらとも相談し、ここは変えないという判断をしました。
特に④に関しては、変えずに残したことが当日功を奏したといえます。

SNSグループの一部

ファシテーター、サポーター、サブファシリで構成する13のホームグループができつつありました。 

オンライン開催にするからこそ、プロジェクト一覧やしおりやワークシートも印刷して、確実に生徒に届けようと急ピッチで進めていたところでした。 

8.予期しなかった1月末までの休校 

1月19日の新聞報道「コロナ感染の急拡大を踏まえて、県は対象の5市町にある県立高校についても、1、2年生を対象に出校停止とするよう県教育委員会に求めた」 

このニュースは少し心が震えました。発表予定の高校の3分の1が1月末まで休校に。 

本番まであと2週間。 

休校が延長またはさらに広がった場合、果たして開催ができるかどうか。学校側のバタバタ感や緊張感も想像できます。もし、開催できたとしても、発表数は何プロジェクトになるだろうか。 

プロジェクト数が減ると「楽しみにしています!」「ファシリテーター、挑戦したいです!」「緊張していますが頑張ります」と、既に準備を頂いているサポーターやファシリテーターの何名かにもお断りをしないといけないかもしれない。

せっかくここまできたのに。。。 

9.いよいよ1週間前 

県教委内での協議の結果、予定どおり開催すると決定されたのは25日。

当日発表できるプロジェクト数が決まったのが26日。34校、64プロジェクト、179人の参加が決定しました。

発表グループは、複数のグループを減らす可能性もありましたが、1つ減らして12グループへ。

お断りをした方にはスーパー代打としての役割をお願いしました。「問題ないです!できることがあれば何でも言ってください!」の声に救われました。 

さぁ、本番まで1週間。
タイムライン及び当日のメンバーもようやく確定です。 

ただ、サポーターやファシリテーター、サブファシリをお願いする大学生に関しては、タイムライン変更後に十分な打ち合わせはできたとはいえません。

SNSで12のホームグループのスレッドをつくり、東部と西部にわかれて各ホームグループをフォローします。そして、最後は個別フォローをしながら当日を迎えます。

10.本番当日、朝 

既にグループごとのSNS内でのやりとりが生まれていきます。「事前に顔合わせしませんか?」「マニュアルの○○は○○であっていますか?」「問いをまとめてみました」そんな、グループ内での交流の様子をみて、コアチームから各グループにバトンがわたっていくのを感じました。 

ホームグループも、ファシリテーターに任せる場ではなく、サポーターも大学生も含めて一緒につくる場。関わる皆さんが高校生のためにどんな場がつくれるか、助け合うチームが出来上がったなと感じます。グループフォローは東部と西部で分担して進めているものの、あたたかさは、全グループが共通する空気でした。

9時から関係者の全体ミーティング。

私から皆さんに、高校生にとって、楽しい場にしましょう!と伝えさせていただきました。そして、約30分ホームグループでの顔合わせを行い、開会式に向かいます。 

受付チーム

メインルームでは、9時から受付を佐々木さんと大学生2人が担当。端末数は約150程度。事前に接続テストをしていたものの、当日に「画面共有ができない!」とバタバタする高校も。また、「○○高校さんが来ていない!」と慌てながら、電話がなるたび事務所にも緊張が走ります。 

また、今年初めての挑戦として、3つのグループをYouTubelive配信を行いました。配信業者と、サブファシリの大学生チームの指揮をとってくれた原さんも、直前までホワイトボードを見つめながら配信のシミュレーションをしていきます。 

事務所の様子

当初、同じ部屋からスタジオを組んで司会を行う予定だった司会チームも、コロナ感染対応のために急遽分散させて進行することに。

司会 卒業生 大野颯馬さん

「司会やります!」と言ってくれた卒業生の大野さんと、県教委で引っ張って頂いた馬庭さんの2人が進行。そして、2人を伴走する澤さん。
前日にリハをしているものの、オープニング動画が流れるかどうかは毎年緊張します。 (無事に流れてよかった)

事務所では、電話対応&受付の堀江さんや黒谷さん。変更が相次ぐなかでの配付資料準備をしてくれた佐々木さん。決め細やかに全体フォローをする奈良井さんやユタラボチーム。それぞれが職人。縁の下を支えています。 

実は、当日、開会式が終わった時間、私はパソコンの前で、頭が真っ白になった時間がありました。 

ようやく、ここまでたどり着いた。

これで、あとは全体統括としてじっくり見守るのみ。 

(と思えたのは一瞬で、各種トラブル、問い合わせ対応、個別フォロー、県教委とのやりとりで電話とメールの対応に終日追われて、頭の中はパンク寸前でした。汗) 

11.互いを称える高校生たちの姿 

開会式が終わり、グループの時間へ。もちろん、緊張している高校生もいましたが、意外にキャピキャピしている姿もありました。 

「高校生たちに救われた」そんなファシリテーターの声もありました。もしかすると審査がない場だったからこそ、高校生自身も伝えたいものを伝えたい!他校との交流をしたい!と場を楽しむ準備ができていたのかもしれません。 

12グループに分かれて、全63のプロジェクトのプレゼンテーションとサポーターとの対話時間。

ファシリテーターやサポーターらの機転で、高校生同士の質問のやりとりも促したり、またサブファシリの大学生たちの存在が場をよりあたたかくしてくれました。 

大学生たちは、マイプロの卒業生や島根大学や県立大学の学生など、経験がある人も初参加の人も様々でした。事前の説明も十分にできなかったのですが、グループの一員として、自分に何ができるかをひたすら考えて関わってくれました。 

高校生同士の質問も興味深いものでした。それぞれがプロジェクトにとり組んでいるからこそ出てくる質問かもしれません。 専門的な知識や技能を生かした緻密な探究をしているプロジェクトも、個人のマイ感から小さなアクションを積み重ねているプロジェクトも多様で多彩な発表がありました。

高校生からも以下のような声を聞きました。

・話をしやすい雰囲気を大人の方がつくってくれた
・他校から刺激をうけた!もっと知りたい
・専門高校の取り組みを初めて知って面白かった。設計図まで書いているのがすごい。
・地域に関わる取り組み、コラボしてやってみたい!・○○高校のテーマ面白い!やってみたい。
※その他のコメントはこちら

発表をし終わった高校生同士が互いのプロジェクトを称え合っている様子が、今回の象徴的なシーンだったかもしれません。

各校に寄せられたメッセージカード

12.まとめ

2月4日は、ほんの1日の出来事。 

でも、高校生は探究に1年または数年間取り組んでいるし、発表に向けて直前に何度も練習していたことも聞いています。彼らに伴走する先生やコーディネーターや地域の姿も。 

私たち教育に関わる関係者も、高校生の今の姿をみて、自分の仕事を再確認することができた1日でした。職場の同僚は、「仕組みづくりの仕事は、成果がみえず、心がおれそうになる。でも、高校生のこの姿をみるためにやっているんだ」と想いを伝えてくれました。 

マイプロ卒業生の一人は、高校生の発表をみて「今の私はあんなふうに自分の想いを伝えられるだろうか」と話をしてくれました。

将来教員を目指す大学生は、「高校生はもちろんだけど、関わる人が学び合える場に感動した」と。 
サポーター、ファシリテーターの声はこちら

13.個人的な想い 

しまね探究フェスタは、私にとって、300人の場づくりの仕事でした。 

発表する高校生だけでなく、場をつくる側の熱量がないと、創発は生まれない。

今回、場づくりに関わってくださった70名近いスタッフの皆様、本当にありがとうございました。 

直前まで変更&変更。役割が分からず戸惑いもあったかと思いますが、状況に合わせて柔軟に変わり続ける勇気を持つ皆さんに感謝です。だからこそ、予期していなかったコロナ感染拡大の危機を乗り越えられたかもしれません。 

島根県内の学びの土壌は豊かです。各地域に高校生や子どもたちの学びを支えようとする大人がたくさんいます。 

初対面でも、高校生の学びをつくれる島根のみなさん。そして、中心メンバーは流動的で分散的な役割と責任をもちながら、助け合うことで数々のトラブルに対応できたと思います。 

みんなでつくるしまね探究フェスタ。
来年のチームにバトンを渡したいと思います。

参加賞

◎しまね探究フェスタ2021開催レポート
関係者一覧(サポーター/ファシリテーターなど)
ルーツしまねのメンバーの当日レポートはこちら

◎当日の様子
飯南高等学校ホームページ
横田高校学校 Facebookページ
出雲高校ホームページ

◎昨年度の様子
舞台裏レポート2020はこちら
しまね探究フェスタ2020はこち

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?