Friendship.

久しぶりの投稿です。休日に友達と話しながら、思いついたフィクションです。

何気ない会話から想像した短編小説です。

良ければ一読ください。
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「ここにはあなたの居場所がありますよ」と、僕は言った。

彼女には、彼女のペースと、心休まる場所があるということが言いたかった。

僕が言いたかったのは、つまりそういうことで、彼女とは「僕たち」の距離感と、「友達」ということについて、話をしていた。

「私たちって、いいお友達よね。」と、彼女は言った。

彼女は僕よりいくらか年上で、背伸びをしても、ちょっと届かない、というような、そんな人だった。

「背伸び」と言っても、僕には彼女と「お友達」でいることが最重要なんだけど。

「僕は、きぃさんの友達です。それは間違いないですよ。それに、まだ会ってから半年も経っていないけど、きぃさんにはたくさん感謝してるんです。」

「そう?そんなこと言ってもらえて嬉しいけど、何も出ないよ。たぶんタロちゃんがそんなこと言うのは、まだ寂しさがなくなってないからだよ。彼女と別れてからさ」と、彼女は言った。

きぃさんは、いつも誰かの言葉を、少しだけ押し戻す。僕は、彼女の、そんな言葉のやり取りについて考えて、いったい何が起こっているのかと、思う。つまり、頭が追い付いていかないのだ。

ウィィィィン…。脳がフル回転する。なのに、まだまだきぃさんの言いたいことを理解するまで時間がかかる。頭が回転する音が聞こえるくらい、僕には彼女の言葉が「おもい」のかもしれない。

おもい、それは僕に言わせると、きぃさんの言葉の重量のことでも、きぃさんが言葉にのせている想いのことでもない。

「タロちゃん、また難しいこと考えてるでしょ。もうやめな。」と、きぃさんは言った。

「あぁ、すみません。また一人で自分の世界の中で、ぶつぶつと考えていました。なんだろう、言葉にはしにくいのですが、あなたの言葉がとても重要な気がして。」

「私、何か言ったかしら。特に何も言ってないと思うよ。難しいことは、一人の時に考えなさい。」きぃさんは、そういうと、ふっと笑みをこぼして、机をコツンと指ではじいた。

それから、その手で僕の手の甲をポンポンとたたいた。

「いい友達なんですね。きっと、もっと話せば似たところもたくさん出てくるんだろうし。」

「あんまり、深く考えないの。とにかく、タローにはタローの居場所があるの。それに、こんなに頼もしい友達もいるでしょ。」

きぃさんは笑った。それから、僕の、ではない彼女の居場所について、思い巡らせていた。

きっとそうだ。

僕を通り越して、広くて自由な世界から、たくさんの「お友達」が彼女を呼んでいる声が、きぃさんには聞こえているから。

僕には、その声はとても遠く、かすかに聞こえる。

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