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インコの翼

私は高山 久美、
28歳のフリーターだ。

3か月前まで、
東京都の豊島区にある
VR会社に勤務していた。

内定就職まではよかった。

後から「コロナウイルス」の騒動で、
出勤初日からテレワークの毎日。

当時の交際相手を含めて、
感染症対策で「社員以外の人」との
接触も禁止。

彼氏よりも前に、
一方的に私に対して
片思いを寄せていたニックがいた。

彼は「待ち合わせにうるさい」
アメリカ人気質と、
「体育会系男子」
の日本人気質を持ち合わせていた。

「私に彼氏がいる」とか、
「コロナが怖い」とか、
「セックスしたくない」と私が言う。

「渡したい似顔絵」があるらしく、
約束を長引かせるとすごく怒り出す。

フェイスブックの荒れた、
「彼への私のコメント」を
YouTubeに投稿するほど。

以降、
私は体育会系と
男性が怖くなった。

血縁関係者の男性としか、
肉声の電話やり取りができない状態だ。

私は「父」が怖かった。

私の名前は久美だが、
名前を呼ばれるのは
父親から暴力を受けるときだけ。

母親も名前を呼ぶときは、
怒鳴りつけるときだけだった。

私の誕生日は9月3日、
ドラえもんと同じ誕生日。

だから、
「久美」と語呂合わせにすれば、
「信代」とか「ドラミ」と命名するより
いじめの標的にされない。

だが親には虐待を受けた。

親の支配と暴力から逃げたい本心で、
心を癒してくれるのは外の世界。

特に人間以外の生命体に、
憧れと親近感がわいていた。

昆虫のチョウとガ、
鳥の鳩などがそうだった。

「虫」の多くは、
「植物食」である。

そこから植物に興味を持った。

25歳の時に川越の毛皮反対デモで、
日本人の母とユダヤ系メキシコ人の父を持つ、
大学の後輩でもあるニック・カブレラ君と出会った。

一緒に二人で打ち上げ感覚で、
「天丼屋」に行った。

そこから、
veganに移行した。

私がveganになったのは、
彼がモンティ・パイソンに似ていたから。

「貧乏だけど明るくて、
自然好きな部分とアメリカ時代の
ロン毛写真に惹かれた」だけだった。

その後の彼氏のヴァーノンも、
ロン毛に加えて「眼鏡」をかけた
細マッチョであった。

彼もveganなので鞍替えした。

しかし、
ヴァーノンは
ユダヤ人が大嫌いだった。

それ以外は、
私に食事を作ってくれる一面もあった。

しかし私が就職してから、
友人関係と恋愛もダメになった。

追い打ちをかけるように、
虫への興味も失せてきた。

私から別れを申し出たのに、
かまってくるニックをブロックした。

フェイスブックの
「コガネムシ」のカバー写真を、
無断でシェアしたからだ。

ニックはヴァーノンの悪口も書いていた。

それに激怒したのもある。

共通の友人曰く、
「ニック君が起こるのは、
久美ちゃんの元カレが投稿した
ナチスのハーケンクロイツと
イスラエル国旗のコラ画像だよ。

前から、
日本国旗と反捕鯨活動のことを、
久美ちゃんも書いてるでしょ?

それと一緒。」

彼は私にブロックされた後に、
会社まで特定して、
イスラエル大使館と
「在日ユダヤ人協会」にまで
チクったらしい。

私がテレワーク中の時だった、
携帯がうるさいので電源を切った。

テレワーク後に、
自宅アパートのインターホンが鳴った。

警察の人が出てきてびっくりした。

「あの突然ですみません、
埼玉県警和光署の生活安全課の
山田と申します。

高山 久美さんでよろしいですか?」

「はい、
何かご用件でも?」

「大変言いにくいのですが、
署まで同行できますか?

逮捕とかじゃないので、
ご安心ください。」

警察官の指示通り、
署まで同行すると父の遺体が。

「お父様で間違いないですね?

トラックの横転事故に巻き込まれて、
帰らぬ人となりました。

お悔やみ申し上げます。」
と山田巡査と近くにいた刑事さんと
検察官が深くお辞儀した。

父の不幸の裏で、
少々不謹慎だが楽しみが増えた。

抑制されていた、
インコ飼育が自宅でできる!

そう思い、
新座市のTSUBASAという
伴侶鳥の保護施設にいった。

新座市は口の悪い人から、
「ガラの悪さ」の表現なのか、
「おなにいざ」とも言われている。

その「おなにいざ」の施設で、
コザクラインコのうち、
一羽だけ目立つ個体がいた。

他と違うのは、
カラーをつけていて、
右の翼が剥げていた。

単純に「ツバサ」と命名した。

私はツバサの里親になった。

「ツバサ~、
今日から私がママになるよ?
よろしくね?」と声をかけると。

「ぴー、ぴー、ぴー」と甘えるツバサ。

猫用のキャリーバッグで、
自宅へと帰宅する私。

その道中で、
眠くなって居眠りをした。

怖い悪夢を見た、
火山灰が降り積もる中で、
ふれあい動物園の動物が行政の職員に、
全頭殺処分されていた。

ヤギ・ヒツジ・ウサギ・アルパカなどが、
駐車場に死体を並べる形で殺された。

目が覚めると、
「日吉駅」だった。

埼玉県の新座からUターンして、
横浜市に来てしまった。

また埼玉方面に、
帰路を戻すとまた睡魔に襲われる。

またもや奇妙な夢を見た、
私とブロックしたはずのニック君と、
病院でセックスをしては、
射精でイク度に世界各地にワープする。

目が覚めるころには、
高坂駅に着いていた。

午後9時だろうか?

すごい遠回りをした。

ツバサの状態を確認すると、
毛引き症どころか、
翼部の肉片まで食べている。

私は怖くなって、
高崎駅で下車した。

人に見えない空き地を探した。

手のひらサイズの岩で、
泣きながらこう言った。

「ツバサちゃん、
本当にごめんね!

動物病院に行くお金もないのに、
衝動だけで保護施設から里親ならばと思って。

ごめんね、ごめんね!」
と言いながら、
岩で叩き潰す久美。

ツバサは絶命した。

今でも私は、
彼女が甘える鳴き声と
おびえる最期は忘れられない。

つらい思い出だった。

私の父も交通事故で、
苦しんだかもしれない。

仕事優先で、
携帯通話の受信を拒否した。

私を好きになった男性も、
同じ気持ちだろうか?

ニック君は、
母親に虐待を受けた過去があった。

それで何度も精神科病院に入れられて、
江戸川区の行政全部を激しく憎んでいる節はあった。

それに加えて、
生後間もないころに、
両親の不仲で口論が絶えずに、
記憶と視力が安定する前に、
父方の親族にも会えない。

その状態で母親の都合だけで、
日本に来ていじめに耐えながら、
成長した苦労人だった。

私は自分の言動と愚かさを踏まえて、
ニック君のブロックを全部解除した。

しかし、
ほっとしたのは束の間だった。

ぐらぐらぐら!

大きな揺れが駅のホームで感じた。

駅員さんが叫んでいた。

「皆さんしゃがんでください。
頭を荷物で抑えて!」

私はウエストポーチで、
頭を守った。

その時だった。

でかい轟音が北方から響く。

音が大きすぎて、
私は倒れこんだ。

すると天は北方と南方に、
挟み撃ちするように、
暗黒の雲が埼玉県上空を囲い込んだ。

お月様も星も何も見えない。

照明もポンコツになり、
スマホも何も使えない。

私の無力さを味わった。

私は20を超えてから、
友達といえる存在と電話番号も
住所すらも個人情報保護で共有しなかった。

特にヴァーノンは、
個人情報保護の奴隷いや、
家畜ともいえる生命体だった。

私がツバサに行った仕打ちが、
直で跳ね返ってきた。

私は火山灰とされる、
塵が眼球を掠る中で1日かけて、
休み休み徒歩で帰宅した。

すると私のアパートが、
押しつぶされていた。

「お、おかあさん?」

私の母は、
右腕を瓦礫に挟まれていた。

裂傷がひどく、
骨も見えていた。

「誰か助けて!

お母さんが!

私の大切なお母さんが~!

お父さん、
ニック君
ヴァーノンからみんな、
本当にごめんね。

無力の私でバカのくせして、
きつく当たってきたせいで。

個人主義を盾に、
友達と彼氏を…」

すると、
カラスの大群が、
お母さんを囲んでいた。

「久美、
もう謝らなくてよい。

私も怒鳴ってばかりで悪かった。

私たちがインコの飼育を抑制するあまり、
TSUBASAでボランティアしてたでしょ?

そこで知り合った恋人から、
誰から誰まで干渉したのも悪かった。

もういいよ。

私の運命なんだから、
久美を傷つけた分、
お母さんの命よりも
先に逃げて!

早く埼玉から出ていくんだ!」

「お母さ~ん!」

私は前を向いて、
号泣しながら千葉方面に逃げた。

50円足らずの残金で、
千葉市の中央区のネカフェで宿泊し、
色々と理由を突き立てて、
谷間とへそを見せたら許してもらった。

私は火山活動が落ち着き次第、
ヒッチハイクで愛知県の日進市に逃げたのだった。

それは運命の翼だろうか?

(完)















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